青竜のたてがみ

み馬

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第39話

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 ジェイクが薬の瓶を持ち帰ると、ロンファはふたを開け、ひと口飲んだ。なんの成分かたずねると、ロンファはふしぎそうな顔をした。

「なにか、おかしなことを聞いたか?」

「う、ううん……。でも、これは昔からあって……、ぼくにもよくわからない……」

 効能がわからない薬を、簡単に口にしてだいじょうぶなのかと疑問に思えたが、ロンファの顔色は、いつもどおり白く、人間離れしているため、ジェイクは言及げんきゅうをやめにした。

(色々と謎の部分が多い青年だが、俺の恋人である以上、守ってやらねばならん。……さっき、家族は海の底にいると云っていたが、どういう意味だ? まさか、本当に海中にんでいるのか?)

 海面へ視線を落とし、泡立つ波を見つめていると、ロンファが寄り添ってきた。浅い呼吸と体温を感じ取れるため、まちがいなく青年は生きている、、、、、。ある日突然、フッと消えてしまいそうな脆弱性がいなめないジェイクは、ロンファの肩を抱き寄せた。

「ロンファ」

「……はい」

「俺と、海に入るか」

 ジェイクの言葉に驚きの表情を向けるロンファは、「どうして」と、小声で聞き返した。

「遅くなったが、俺を紹介してほしい。おまえの家族に会わせてくれ」

「……ぼくの家族に……」

「そうだ。嫌なら、無理にとは云わない」

「い、イヤじゃないよ。……ジェイクさんを、みんなに紹介する。……いいよ」

 断られるのを承知で発言したが、予想に反して合意を得たジェイクは、ロンファと手をつなぎ、海へと入ってゆく。水位が胸の高さまで浸ると、ドポンッと潜り、ロンファは人魚のように軽やかに泳いでジェイクを海底へいざった。水の中で目を開けても痛くはないが、視界がぼやけた状態で見えるジェイクは、ロンファの姿を見失わないよう、つないだ片手に力を込めて泳いだ。肺がもつギリギリの深さまでくると、ロンファのまわりに魚がむらがってきた。銀色のウロコや黒い縞模様の魚は、漁師の網にもよく引っかかる食用の回遊魚かいゆうぎょである。

(待てよ……。家族とは、そういうことか? 海の魚は、ロンファの仲間なのか……)

 集まってくる魚たちは、ロンファと楽しく泳いでいるように見えた。先に浮上して息を吸いこんだジェイクは、ロンファの長い潜水時間に不安を覚えたが、やがて、近くの海面からザパッと顔をだした。しかも、ロンファの呼吸は少しも乱れておらず、ジェイクは無意識に「ははっ」と、笑みがこぼれた。同時に、ロンファの生態に、ますます興味が湧いた。青年は、あきらかに特異な存在だった。


✓つづく
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