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第14話
しおりを挟むこれは夢だ。ジェイクは瞬時にそう思ったが、できれば、このまましばらく醒めないでほしいと欲張った。なぜなら、ロンファと裸身で抱き合っているからだ。場所は、病室のベッドの上である。汗ばんだ白い肌の青年が、ジェイクの太腿にまたがって、腰をふるわせて悦がっている。ピンッと硬くなった乳首は薄桃色で、下腹部に擦れるロンファの男根は、すでに濡れている。ジェイクにとって最高に気持ちがよく、極上の眺めであった。ロンファは、ジェイクの浅ましい欲望に応えるかのように、必死に腰を動かしている。こちらからも突きあげてやると、ひゃあっ、と、背中を反らして身悶えた。
「ロンファ……、ロンファ……!」
主導権を取って代わり、青年の躰を反転させると、ベッドをギシギシと軋ませながら、腰を上下に振る。何度も口づけを交わし、乳首に吸いつき、陰茎の先端で体内を搔き乱す。ロンファは苦痛と刺激を従順に受け入れて、ハァハァと、肩で息をしていた。互いの限界値は異なるが、ジェイクは自身の体力が尽きるまでロンファを喘がせた。
チュンチュンと、病院の庭先で小鳥が啼いている。朝勃ち状態で目覚めたジェイクは無言で便所へ向かい、生理現象の後始末をした。夢でみた内容は、ずんぶん生々しいが、はっきり云って現実味を帯びている。ロンファを抱くことは、ジェイクが果たすべき約束のひとつである。ふしぎな色気をもつ青年は、恋人として大事に扱うべき存在へと昇格していた。
ファブロス島に漂流してから3日目の夜、ジェイクは〈水竜の化身〉として、改めて島民の前で自己紹介をする必要があった。そこで、クムザから事前に詳しい伝承の説明を求めておくことにした。食堂に用意された朝飯に手をつけていると、白衣のクムザが欠伸をしながら顔をだした。
「おはようございます」
「おう、ジェイクか。きょうは早いの~」
「先にいただいている」
「ああ、かまわん、かまわん。リェータが作り置いていったのじゃろう。わしの分は診察室の机に置いてあったわい。フォフォフォ」
「あの女の子は食べないのか」
「うんお? もちろん食べるさ。ラミルダのところでな」
ラミルダとは、島の長老で巨乳の女大将のことである。ジェイクは、彼女の豊満な乳房より、ロンファの薄い胸板に興奮をおぼえた。男色傾向にある己の性癖は、記憶を失う以前からそうであったのか、実際のところは不確かであり、ついでに、自分が既婚者である可能性は考えないことにした。
(……いかんな。俺は、あいつと交際を始めたんだ。女に関することで泣かせたくない……)
ロンファの脆弱性や言動から、一途な性格かと思われた。細くて白い腰は、ジェイクの一物に貫かれる時を、静かに待っている。昨日、ジェイクの告白を受けとめたロンファは、会話の中で性交を要求してきたが、即座に通じては、常識人としての倫理観が問われるだろう。
(……そういえば、俺が水竜の化身だと云っても、崇めたりしなかったな。……口裏合わせは不要か)
どの道、今夜は島民総出の祭儀が開かれるため、ロンファの待つ洞窟へ足を運ぶことはできない。また、わざわざ立入禁止の場所に身をおく青年が、会場に姿をあらわすとは考えにくかった。
✓つづく
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