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島国編/第1話
しおりを挟むまず、躰じゅうが痛む。手足をはじめ、すべての筋肉が硬直しており、瞼が痙攣し、うまく目を開けることができなかった。
「〈クムザ〉のおっちゃん。こいつ、そろそろ起きないかな?」
「ちょっと〈プルプァ〉ったら。その人は病人なのよ? 枕もとに立ってないで、お水を汲んできてちょうだい」
「へいへい、りょ~かい。〈リェータ〉こそ、そいつは男なんだぜ。いつまでもそんな恰好のままでいいのかよ。お股のアソコが丸見えだぜ?」
「そんなの気にしないわ。それに、プルプァだって一緒じゃないのバカ!」
なにやら子どもの声が聞こえる。それも、ふたりいる。声の調子から、男と女だろうとわかった。うっすらと意識が回復したジェイクは、やわらかいベッドの上で目を覚ました。天井に照明器具は見あたらないが、視界は良好につき、時刻は昼間だと思われた。
「……おっ、おぉ。気がつかれたか。よかったのう!」
にゅっと、顔を覗き込んできた人影は、小太りで口髭のある老人だった。白い衿つきの服を着ているため、医者だろうと思われた。
「……ここは」
ジェイクが低い声を発すると、老人の背後から、小さな女の子がぴょこっと顔をだした。
「きゃっ、気がついたわ! あなたはいったいだぁれ? わたしはリェータよ。こっちのクムザおじいちゃんが、あなたを病院まで運んだの。あなたって、とってもステキな青い髪をしてるのね。わたし、びっくりしちゃった。あっ、今、プルプァがお水を持ってくるから待っててね!」
耳もとで、ひと息にしゃべられたジェイクは、ズキズキと頭痛がした。額へ指を添えようにも、まだ腕は動かせなかった。
「おまちどうさま~。湧き水を持ってきてやったぞ。あっ、なんだなんだ、そいつ起きたのか!?」
今度はプルプァ少年が戻ってきて、バタバタと足音を響かせながら近づいてくる。室内は、とにかく賑やかだ。
「おわっ、むらさき色の目玉じゃん。本当に存在するんだな。こんな青い髪の人間なんて初めて見た!」
「これこれ、ふたりとも静かにせんか。彼の容体は、まだはっきりしとらん。疫病に感染しているようには見えんが、外傷がないとはいえ、道端で気絶しておったのだ。安静第一じゃ。……本人の意識が戻ったことだし、ちょいと問診でもしてみるかのぅ」
クムザという医者は、思いがけないセリフを口にした。躰じゅうに痛みを感じるジェイクだが、どうやら怪我はないようだ。ならばなぜ、これほど全身が痺れて痛むのか、原因不明である。
「さて、おまえさんの名は?」
「……知らん」
「ここがどこか、わかるかのぅ」
「……病室だろう」
「ふむ、呂律は回るようだの。見たところ、島の人間ではなさそうじゃが、わしらはおまえさんを歓待するぞい。具合が悪ければ、遠慮なく枕もとの呼鈴を鳴らしとくれよ。……プルプァ、リェータ、もうしばらく彼を休ませてやろう。食事の準備を手伝っとくれ」
「は~い」
「りょうかい~」
クムザはそう云うと、ふたりの子どもを連れて退出した。
✓つづく
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