青竜のたてがみ

み馬

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幕開け/出会い

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 青い髪の男が、海岸かいがんに倒れている。水色の髪と眼をしたロンファは、細くて白い腕をのばし、男の肩を抱き寄せた。弱いながら呼吸をくりかえしていたが、頭部と背中に傷を負って、鮮血を流している。

「……い、いけない。このひと……死んでしまう。……どうしよう、ぼくは、どうしたら……」

 男は気を失っており、ぴくりとも動かない。帝国海軍の人間である紺色こんいろの制服を身につけていたが、そうとは知らないロンファは、助ける決意をする。体格差はあるものの、なんとか男をかつぎ、近くの洞窟まで運ぶと、手当てをするため、じゃまな服を脱がせて裸身はだかにした。すると、きたえた肉体に必要悪な脂肪しぼうはなく、たくましい下半身に目がまる。

「す、すごい……。ぼくとは全然ちがう……。このひとは、どこから来たのだろう……」

 ロンファの性別は男だが、自分と異なるからだつきを、つい、じっくり見つめた。だが、男が傷口の痛みに顔の筋肉をゆがめると、ハッと我に返る。

「あ……ダメ……、た、助けなきゃ……。ぼくが助けるから……、しっかりして……」

 ロンファは、薬草をめたびんふたけ、背中の傷口にりつけた。包帯ほうたいの代わりに自分の麻布シャツやぶり、巻きつける。

「……だ、だいじょうぶかな。……どうか死なないで……。た、助かるから……、これできっと、助かるはずだから……」

 ロンファは男に顔を近づけると、そっと、口唇くちびるかさねた。冷えきった体温をじかとらえ、男の上半身をギュッと抱きしめる。

 ガレオス帝国の海軍大佐、諜報ちょうほう工作こうさく部隊・第2旅団長、ジェイクリッド=フリークス=ガレオン(28歳)は、この日、ファブロス島へ瀕死ひんしの状態で流れつき、ロンファという名の若い男(18歳くらいの青年)によって生命いのちを救われた。だが、ジェイクが目をましたとき、ロンファの姿はなく、島の病院で手厚てあつ介抱かいほうされていた。


✓つづく
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