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最終章
第161話
しおりを挟むノネコから報せを受けた亮介は、寄り添うハイロと水の精霊が小屋まで歩いてくると、感激のあまり、ポロポロと涙がこぼれた。
「ミ、ミュオンさん……? ほんとうに、ミュオンさんなの!? うわ~んっ!!」
ジェミャやリヒトの存在にかまわず、一番乗りで駆けつけ、ガバッと細いからだに抱きついた。ミュオンは、ハイロが脱いだ上着を身につけていたが、亮介の顔の位置に、むにゅっとした突起物が当たり、カアッと耳まで赤くなる。
(わーっ!? ミュオンさんのアソコが僕の顔にィ!!)
「ご、ごめんなさい!」
あわてて胴体から離れると、ミュオンは変な顔をして、『そなたがリヒトか』と訊く。黒蛇から救いだしたことを忘れているため、目の前の水の精霊にとって亮介は、初対面に等しい。いきなり抱きつかれて不快そうに眉をひそめるミュオンは、小屋を背にして立つジェミャを見据えた。
『ここが、わたしの家? ずいぶん小さいのですね。それになぜ、地の精霊がいるのですか』
『久しいな、水の精霊よ。われは、リヒトの再生に協力してやったぞ。いつか、この恩は返してもらうからな。しっかり覚えておけ』
『リヒトの……』
ジェミャの視線を追って木登りをして遊ぶ少年とコリスに目をとめたミュオンは、『あれが、わたしの子?』とつぶやいた。かたわらのハイロがうなずくと、『思っていたより、ふつうなんですね』と付け加えた。リヒトの見た目は、亮介よりも少しお兄さんといった感じで、容姿は人間と変わらない。ただし、今後の成長段階でどのような変化を見せるのか、それは本人さえわからない、唯一無二の存在だった。
「……どうだ?」と、ハイロが訊く。『べつに、どうもしませんが』と、ミュオンが即答した。両親が肩を並べて立つ姿を見つけたリヒトは、ハッとして木登りをやめ、亮介の背後まで走ってきた。人型の半獣と水の精霊を警戒して、亮介の脇から少しだけ顔をのぞかせる。
「リヒト、怖がらなくても、だいじょうぶだよ。この人たちは、きみを大事にしてくれるから……」
ミュオンもリヒトも、互いにかつての記憶がないため、無言で見つめあった。沈黙を破ったのは、地の精霊である。
『なんだ、つまらぬ。感動的な親子の対面だというのに、どちらも知らん顔とは、クククッ、これでは父親の面子丸つぶれであるな! あーっはっは!』
「ジェミャさんったら、失礼なこと言わないでよ!」
『ふん、おまえたちの茶番劇には、ほとほと飽きてきたわ。あとはもう、好きにするがよい。もとより、われには関係ないことぞ』
「え? 待って、ジェミャさん。行っちゃうの?」
『ああ、さよならだ人間。せいぜい、余生を楽しむのだな』
ひらひらと片手を振って飛翔するジェミャは、あわてる亮介を見おろし、『さらば』といって、遠くの空へ姿を消した。唖然となる亮介をよそに、ミュオンは4枚の羽をひろげて浮きあがり、ジェミャのあとを追いかけた。
『待ちなさい、地の精霊ジェミャ』
『ミュオンか。なぜついてくるのだ』
『あなたが言ったのではありませんか。恩を返せと……』
『ああ、確かに言った。だが、それは今すぐではない。……おまえはこれから、長い時間を生きるであろう。さすればわかる』
『わかるとは、なにがです?』
ミュオンが記憶を取り戻す可能性は、なにもゼロというわけではない。亮介やハイロと暮らすうち、その身に刻まれた思いは、忘却から回帰して、実際に経験した記憶として甦る。期待して待つ回復の期間は終わり、今後は新しい生活に向けて行動あるのみである。亮介とハイロの考えは一致していた。
★つづく
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