異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬

文字の大きさ
上 下
153 / 171
第9部

第153話

しおりを挟む
※性描写あり


 溜池ためいけの水底に沈んで消えたミュオンは、森じゅうにあふれる水源より、精霊の姿をかたどる霊力を少しずつ集め、枯渇こかつした泉水いずみを水気で満たした。

『ハァ、ハァッ、……っ!?』

 なにか、、、が、股のあいだから体内へ侵入し、ミュオンをあえがせる。『アァッ、ンンッ!』まぶたを開けてはいけないような気がして、ミュオンは腰をふるわせながら、得体の知れない相手による刺激を従順に受けれた。それは、かつて身に受けた苦痛と快楽の記憶であり、ミュオンにとって知らない感覚ではなかった。

 ハイロと子づくりしたさい、半獣属の野蛮な雄性器官を開口部に挿入されたミュオンは、ひどく不快な気分に陥ったが、からだの細胞は快楽にも反応し、不本意ながらがってしまう声がれた。

『アッ、……ァンッ』

 激しく腰を突きあげられたミュオンは、思わず両眼を見ひらいた。すると、ハイロではない人間の男と目があい、一瞬、血の気が引いた。

『ひっ!? あなたは誰ですか!』

 遠い昔、恋人であり夫婦となった人間の存在を、ミュオンは覚えていない。ハイロだと思って身をゆだねていたが、とたんに恐怖に駆られ、咽喉のどや膝が痙攣した。人間の男はなにも言わず、ただ、夢中でミュオンとの性交をつづけ、熱い子胤を放流した。

『い、いやーーーっ!!』

 ハイロ以外の男に抱かれて妊娠するなど、あり得ない。ミュオンは、交接をかれた瞬間、バシャッと、すぐさま泉水にかり、開口部から流れる精液を指でふりはらった。

『なぜ、こんなことに……、わたしは、……、いったいなにをして……』

 すべては過去の産物であり、意識が同化している間に起こる一時的な感覚の共有であったが、生々しい感触につき、ミュオンの頭は混乱した。見知らぬ男と性交し、ハイロに対する罪悪感にとらわれる。

『ち、ちがいます……! これは、夢です。わたしは、あなた、、、以外の者と、こんな真似をするはずが……っ、……ンァッ!?』

 性交したばかりだというのに、ミュオンの下腹部は大きく膨らみ、陣痛が始まった。岸辺にいた男に無理やり引きあげられ、草原のうえで出産に備える。股のあいだを男の指がうと、ミュオンの背筋はゾッとした。

『くっ、うぅっ!』

 子宮口がひらき、膜を突き破ってリヒト、、、が産道をおりてくる。激痛に腰が砕けると思ったが、人間の男が「だいじょうぶだ」と声をかけた。それは、やさしくおちついた調子で、どこかなつかしい響きにつき、ミュオンは無意識に肩の力を抜いた。出産にいどむミュオンは必死にいきみ、人間の男に励まされながら、ひと晩かけてリヒト、、、を誕生させた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


『……フッ、水の精霊リヒテルよ。そなたが生みだした最初の泥沼が、どのような末路をたどるのか、じきにすべてが露見するであろう。くり返される負の連鎖をどう断ち切るか、見物みものだな』

 地の精霊ジェミャは、人間と水の精霊の情事を感じとっていた。分化をくり返す性質をもたないジェミャの肉体は光かがやき、恍惚の表情を浮かべる。

『たぐいもないせいが、産声うぶごえをあげる。解放の尖端となるか、大地をにくむか、人間らしさをあざむく象徴よ、あらゆる季節を生きのびて、大地に春を告げる果実となれ』

 愛しあうふたりが息絶えても、彼らの血潮が流れる者へ、かがやく花束(生命の欠片)を届ける役目は、ジェミャに託された。

『ミュオン、その身が無実無心と思うなかれ。そなたは、われが見つめる双瞳ひとみの先で、淫らに花を散らせたのだ』

 ジェミャの表情は険しくなり、この世ならぬ享楽を経験した水の精霊を羨ましく思った。ふたりの愛するわが子が、その希少な身をくすまでは──。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


★つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

処理中です...