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第7部
第127話
しおりを挟む考えてみれば、ふしぎな世界である。ハイロを先頭に、新しい生活拠点となる小屋への移動を開始した亮介一行は、枯葉や折れた枝が溜まって歩きにくい山道を一列になって進んでゆく。
ハイロにミュオン、キールのうしろにノネコとコリス、亮介は最後尾を歩いていたが、いつのまにかジェミャが背後を浮遊していた。
(そういえば、ジェミャさんは、最初から僕の正体を知っていたよね。……なんでわかったのかな……)
以前、コリスと閉鎖林へ足を運んだとき、ジェミャと遭遇した亮介は、『なぜ、人間の子が精霊の加護を受けているのだ。おまえの真なる姿を、あばいてやろう』と言われ、16歳の体型を再現されている(しかも全裸だった)。ジェミャの特殊能力というよりは、精霊のもつふしぎな霊力を浴びると、生物は本来のかたちにもどってしまう効果があるのかもしれない。進化の過程に関係なく、いにしえの姿を取りもどすことができるため、ひとたび身に受けたハイロは、異形な存在となりつつあった。
(僕の場合、ミュオンさんとジェミャさんの霊力を浴びてるから、もしかして、相殺されてる? でも、強く念じたら、ハイロさんみたいに元の姿にもどれたりして……)
歩きながら、ぎゅっと目を瞑った亮介は、首筋にフッと吐息を吹きかけられて「わ!」と驚いた。ふり向くとジェミャが『まぬけ』という。
『人間ごときが、われら精霊の力を自在に操れるわけなかろう』
「だ、だって、ハイロさんは自由に人型に変われるようになったよ? どうして僕にはできないの? 僕の体にも、ミュオンさんの霊力が流れているはずなのに……」
『それは単純に、灰色大熊の祖先が人間だったからだ。人間は人間として産まれてくるゆえ、赤子より弱いものに退化することはない。もっとも、半獣属の進化を辿れば、どこかで人間の血が混ざっている経緯は確実だ。彼らこそ、人為的に派生した種族だといっても過言ではない』
「人為的って……?」
『生き証人を見ろ。人型時とはいえ、精霊を妊ませた半獣は、ハイロだけとはかぎらぬ』
先を歩くハイロとミュオンを指で示したジェミャは『クククッ』と笑い、亮介のほうへ腰を突きだして見せた。地の精霊は全裸につき、雄性器官が丸だしである。至近距離で直視した亮介は、思わずカッと頬が赤くなった。精霊の多くは中性的な容姿であり、意外にもジェミャは受け身でもある。
(もう、この精霊は! いつも全裸で恥ずかしくないの? 寒そうには見えないけど、それがふつうの姿なら、こっちが意識したら負けだよなぁ。……はあ、ちょっと疲れてきた………。争いを避けてスローライフを目ざしたかったけど、クマさんとキツネさんって、新しい小屋まで追いかけてきそうだし、次こそは、なんとかしなきゃ……!)
引っ越しの荷物を背負う亮介は、急に肩が重たく感じた。同族嫌悪するクマの目的は、ミュオンを外的に傷つけ、人間の亮介を森から排除することに尽きる。かならずしも、ハイロ自身が狙いではない。妊娠したミュオンは霊力の消耗が激しいため、亮介より危うい状態だった。ハイロは、なるべくミュオンに寄り添って歩く。
(う~ん、あのふたり、夫婦っぽく見えないんだよなぁ。なんだろう、この違和感。そばにいても心の距離が遠いみたいな……。もしかして、子づくりのためだけにエッチした、とかじゃないよね?)
後方からハイロとミュオンのようすを観察する亮介を、ジェミャが『お子さまだな』と茶化してくる。地の精霊は、他者の思考を見透かす能力をもっているわけではない。亮介が、顔にでやすいだけである。
★つづく
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