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第6部
第110話
しおりを挟む『さて、そろそろ行くか。そいつらはどうする。捨て置くか』
「ジェミャさんったら、そんなのだめにきまってるでしょ。いっしょにつれて行く!」
「ほえっ、リョースケくん、本気なの~?」
「もちろん。こんなかわいいのに、放っておけないよ」
亮介は、丸太小屋にキツネと仔熊をつれて帰ることにした。2匹とも無害と判断したわけではなく、ハイロやキール、ノネコも含め、みんなで仲よく暮らせるよう、説得するつもりだった。
(家族はたくさんいたほうが楽しいし、喧嘩するほど仲が良いって言うもんね……!)
これまで、なにかと後手にまわってばかりいる亮介は、こんどは自分の力で物事を解決したかった。
(クマさんは、ミュオンさんを拐った犯人だけど、きちんと話しあえば仲直りできるはず。きっと、僕が、そうさせてみせる!)
「さあ、みんなで帰ろう」
亮介の掛け声にジェミャは一瞬、眉をひそめ、『よかろう、好きにせよ』といって歩きだす。キツネは不服そうに顔をしかめたが、仔熊は「スー、スー」と鼻息をたてながら亮介の腕のなかで眠っていた。
「リョースケくんって、すごいね~」
ふと、首のうしろからコリスがつぶやいた。亮介は「なにが?」と聞き返したが、コリスは「ううん、なんでもないよ~」といって、真意をはぐらかした。
丸太小屋へ帰宅したとき、庭にいたキールは「なんでい、そいつらは」と警戒したが、亮介のうしろにジェミャの姿を発見すると、「おおっ」と叫んで、目を丸くした。木陰にすわっていたノネコも、「これはこれは」と言いながら寄ってきた。
「せ、精霊か?」とキールが問う。
「うん、当たり。このひとはジェミャさん。前に、ハイロさんとノネコさんが話してくれた地の精霊だよ」
「その腕に抱えてる2匹はなんだい」と、ノネコが訊ねる。
「この子たちは、キツネさんとクマさん。こっちの仔熊は、ハイロさんと同じ灰色大熊だけど、お昼寝中だから説明はあとでするね。今は、ジェミャさんにミュオンさんの体調を確認してもらうのが先かな」
「よくわからねーけど、おかしな真似をしたら、おいらは敵と見做すからな」
キールは、にらみつけてくるキツネに向かって注意勧告をしておくと、ハイロはついさっき外出したと言う。
『……ふうん、におうな』
ミュオンの気配を感じ取ったジェミャは、寝室のあるほうへ視線を向けると、めずらしく神妙な顔をした。
★つづく
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