異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬

文字の大きさ
上 下
108 / 171
第6部

第108話

しおりを挟む

『血迷うたな、半獣め。われに襲いかかるとは、浅はかなり』

「ジェミャさん、腕から血が!」

『よるな。これしきの傷、たいしたことはない』

 手首に流れる血を舌先で舐めるジェミャは、裸足でクマの頭部を踏みつけると、『フゥッ』と息を吹きかけた。それは透明な膜に変わり、クマの全身を包みこんだかと思えば、パァンッと弾け、サラサラと砂のように散った。その直後、衝撃的な展開となる。突然、クマは「グアーッ!」とうめき声をあげ、亮介たちの目の前で仔熊コグマへと姿を変えた。

「あ、兄者!?」

 驚いて駆け寄るキツネは、可愛らしい見た目へと変貌を遂げたクマを心配するあまり、「このヤロウ!」といってジェミャに向かって飛びついた。いつのまにか、キツネにも精霊が見えるようになっている。

『フッ、愚かな』

 ジェミャが放った砂塵によって押し返されたキツネは、バッシャーンッと、川底へ沈んだ。すぐさま「プハッ」と顔をだし、仔熊のもとまでバシャバシャと水飛沫をあげて走ってくる。

「この、全裸ヤロウめ! 兄者に何しやがった!」

 川辺にちょこんとおすわりする仔熊は、状況判断ができないようすで、キョロキョロ周囲を見まわすと、生まれつきひらかない左目が気になり、ごしごしと搔いている。

「どういうこと? あのクマさんが小さくなっちゃった……」

 視覚情報の限界に達した亮介は、両腕をひろげ、クマとキツネに飛びついた。

「ふたりとも、かわいすぎるよー!」

 思ったとおり、仔熊はもふもふしていた。キツネは全身がぬれていたが、見た目の愛らしさにがまんできず、ぎゅっと、抱きかかえた。キツネは「やめろ!」といって、抵抗する。

「こら、人間、オレサマに気安く触るな! 兄者を離せ!」

「だって、こんなにかわいいんだもん! 少しくらい、もふらせてよ~」

「も、もふる? ふざけるなゴラァ!」

 シャーッと牙を剥くキツネに向かって、幼獣化したクマがバシッと手のひらで頬をビンタした。

「ひ、ひでぇ、兄者! なにするンでい」
「クゥ? グゥゥ……」
「兄者? ま、まさか……」 
「ブォッ、ブォッ」
「ことばを忘れちまったんで!?」

「え、そうなの?」「ほえ~っ」と、亮介とコリスも驚いて、仔熊を見つめた。背後で高笑いするジェミャは、『ざまぁない』という。

『われは、偉大なる精霊なり。この身に断りなく手をかけたものは、無力化されて当然だ』

「ジェミャさんが、クマさんを小さくしたの?」

『否、自業自得である』


★つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

三度目の人生は冷酷な獣人王子と結婚することになりましたが、なぜか溺愛されています

倉本縞
BL
エルガー王国の王子アンスフェルムは、これまで二回、獣人族の王子ラーディンに殺されかかっていた。そのたびに時をさかのぼって生き延びたが、三回目を最後に、その魔術も使えなくなってしまう。 今度こそ、ラーディンに殺されない平穏な人生を歩みたい。 そう思ったアンスフェルムは、いっそラーディンの伴侶になろうと、ラーディンの婚約者候補に名乗りを上げる。 ラーディンは野蛮で冷酷な獣人の王子と噂されていたが、婚約者候補となったアンスフェルムを大事にし、不器用な優しさを示してくれる。その姿に、アンスフェルムも徐々に警戒心を解いてゆく。 エルガー王国がラーディンたち獣人族を裏切る未来を知っているアンスフェルムは、なんとかそれを防ごうと努力するが……。

処理中です...