異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬

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第6部

第107話

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 ジェミャは、あえてクマの感情を刺激して、反応を愉しんでいた。ハイロの名前を口にだし、わざと敵意をあらわにさせる。

『あのハイロという大熊オオクマは、確かに張り合いがあるというもの。この森で、あれほど堅物かたぶつで誠実な半獣は見たことがない。だが、そんなやつこそ、余計な物事にとらわれやすい。……贖罪しょくざいのつもりで添い遂げられても、相手は不本意だろう。結局、因果応報ってわけだ。運命なんてことばより、ずっとごうが深い。人型になった大熊あいつは、王獣としての立場より、渇望してやまぬ精霊とのちぎりを優先した。さぞ、達成感に満たされているだろう。……かつて、精霊をはらませた半獣は存在しない。人間を愛して子を産みだした水の精霊ミューオンは、とうに帰化きかしている。ハイロと抱きあっている精霊は、分化をくり返す個体のひとつに過ぎぬが、むべき記憶を共有しているかどうかは問題ではない。考えるべきは、新たな生命と迎える未来についてだと思わないか』

「……オレは、精霊を孕ませるつもりはない。むしろ、骨まで喰い尽くしてやる」

『フッ、肉体を思いどおりにできるという点で、同じことよ。精霊のからだは、人間とも半獣とも異なる。それぞれが必要な役割を果たせるよう作られている。……どうだ? われの肉体も、なかなかうまそう、、、、であろう』

 ジェミャが腰を軽く突きだすと、クマは下腹部へ目を留めた。恥じるようすもなく雄性器官を露出させる精霊は、ジェミャだけではない。多くの精霊は生まれたままの姿で成長し、極端に姿を変えることはなかった。ミュオンに至っても、派生したときと同じ見た目を保っている。ニッシュの浴衣のような服を身につけるようになったのは、比較的最近のことだった。

 挑戦的な態度で会話を進行するジェミャに、いくぶん苛立いらだちを覚えたクマは、「グオォーッ」と牙を剥き、ジェミャの腕に噛みついた。肉を喰いちぎるためではなく、精霊の血を味わったクマは、咽喉のどの奥が焼けるように熱くなり、ドシャッと倒れこんだ。全身の筋肉が激しく痙攣し、呼吸困難に苦しむ。

 異変に気づいたキツネが、「兄者!!」と叫ぶ。「ジェミャさん!?」と、亮介も叫んだ。右腕から血を流すジェミャは、足もとで引きつけを起こすクマを、冷ややかな表情で見おろしていた。


★つづく
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