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第6部
第98話
しおりを挟むジェミャは、訊かれるのを待ちかねていたかのように微笑んだ。
『ならば、ためしてみるか。われが、人間の子を産めるかどうか』
「ご、ご遠慮願います……」
いくら16歳の姿にもどったとはいえ、出逢ったばかりのジェミャと夫婦になるつもりはない亮介は、丁重にお断りした。
(ここは異世界だけど、18歳になるまで結婚できない法律があるからね)
現実離れな展開であっても、亮介は苦心しつつ対処した。とはいえ、ジェミャの機嫌を損ねるわけにはいかず、緊張感が漂った。できるだけ情報を引きだしたいと考え、あれこれ頭をめぐらせていると、なにかやわらかいものが口唇に触れた。キスされたとわかったとき、ジェミャのからだは離れていった。ようやく密着状態から解放された亮介は、あたふたと立ちあがり、地面に落ちているシャツをたぐり寄せた。もたつきながら袖をとおしていると、またもや違和感にハッとなる。
「あれ? 小さくなってる……」
気づかないうちに8歳児の体型へもどっていた。いったいなにが起きているのか、考えてもわからない亮介は、ジェミャに確認するしかなかった。
「全部、あなたの仕業なの?」
『半分はな』
「半分?」
『われは、肉体という固形物を愛でる時間が長ければ長いほど、心が満たされる。おまえの幼児体型に興味はないが、成長した姿は気に入ったぞ。これからはもっと全身を鍛えろ。軟弱な男は好かん』
(なんじゃくって……。よくわからないけど、きらわれるより結果オーライ?)
ジェミャの趣向にかなった亮介は、8歳児の姿にもどったことで、逆に安心できた。子どもを誘惑の対象にするほど、ジェミャは快楽主義ではない。見た目こそ大胆だが、相手の話を聞く耳をもっている。ノネコによる事前情報と、精霊本人と対峙した亮介は、ほんの少し、ジェミャに親しみを覚えた。
(この精霊、悪気はないンだ……。周囲の状況を愉しんでるだけみたい……。だったら僕も、気楽な感じで話せば、仲よくなれるかも……)
「あ、あの、ジェミャさん。これからいっしょに、丸太小屋まで来てください。ミュオンさんのようすを、確かめてほしいンだ。……さっき、僕の口唇を奪ったでしょう? だから、ひとつくらい言うことをきいてもらいたいな」
精霊同士ならば、からだの不調理由を見ぬけるはずだ。亮介は、ジェミャに協力を求めた。
★つづく
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