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第5部
第74話
しおりを挟むミュオンの身体は、開口部(おしりの穴のことだよ)から子胤を授かるため、雌性器官が下腹部に形づくられていた。現在の発達段階でハイロと性交渉することにより、まちがいなく妊娠が実現する。また、ミュオンの細胞が二次特性を完成させるためには、長い時間が必要だった。数ヵ月ものあいだ眠りについてしまった理由は、生殖行為が可能となる肉体へと変化を遂げるための、準備期間である。
『こ、このわたしに、あなたを受け入れろと……?』
「そうだ。今なら、人間の姿で抱きあえる。おれも、ただの交尾とは思わない。……知っているか。かつて、あの丸太小屋で暮らしていた精霊と灰色大熊は、おれたちの先祖だ。ふたりの関係は別離で終わったが、おれたちはちがう結果になる」
『いきなり、なんの話ですか』
「おれは臆病風に吹かれない。生きているかぎり、おまえを支えていく」
『そんな告白、聞きたくありません』
「悪いが却下だ。ミュオン、おれの子を産んでくれ」
『しつこいですね』
「現実を見ろ。ことばで拒絶しても、からだは欲している」
『そんなわけ……』
あるはずない。ミュオンは、科白の途中で息が詰まり、軽いめまいがしてよろめいた。ハイロに見据えられた身体が熱い。衣服の下で、開口部が収縮をくり返す。無理やり気がつかないふりをしても、健康的で雄々しいハイロの細胞を求めていた。
「ミュオン」
『ち、近づかないで……』
「ミュオン・リヒテル・リノアース」
『わたしの名を、呼ばないでください……』
「いいかげん、素直になれ。おれを信じて身を委ねろ。大事にする」
『……い、いやです。……だめ、それ以上、なにも言わないで!』
ハイロの言動に困惑したミュオンは、逃れるように走りだしたが、灰色大熊の足は人型時でも意外に速い。すぐに追いつかれてしまった。ミュオンは根負けしてその場にへたりこむと、ふるえる口唇でハイロに答えた。
『半獣属と夫婦になるなんて……、わたしには無理です……』
「ならば、いちどだけがまんしてくれ。おれとの性交渉は、発達過程として受け流せばいい」
『それが、ほんとうに……、リョウスケくんのためになるのですか……?』
「おれの考えが正しければな」
ハイロの意見に耳をかたむけるミュオンは、いちどきりの関係こそ願い下げだと思った。精霊の体内領域へ触れることができる存在が禁欲主義では、役不足である。
★つづく
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