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第5部

第72話

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 亮介は、必然の帰結へと導かれている。その考えに一理いちりあるとうなずくノネコは、室内にもどってきたハイロを、ちらッと見た。

 ソファに腰かける亮介と、となりにすわるコリス、かたわらに立つミュオンとキール、食卓をはさんで佇むノネコから、一斉にふり向かれたハイロは、「おれの顔に、なにか付いてるか」と、めずらしくとぼけた。すかさずキールが、「痴話ちわ喧嘩げんかあとが、ほっぺに残ってるぞ」とツッコんだ。

『下品な例えは、およしなさい』

 亮介を幼子だと思いこむミュオンは、キールをたしなめたが、会話の流れで実年齢をあかされ、おおいに驚いた。


『リョウスケくんが、16歳ですって?』

「ご、ごめんなさい。べつに隠していたわけじゃないんだ」

 ハイロも初耳だと思われたが、とくに反応は示さなかった。なにが起きてもふしぎではない日常につき、外部からの刺激に対し、感覚器官が慣れているようだ。いつも無表情だが、たのもしいかぎりである。


『つまり、リョウスケくんは誰かに呼ばれて、この森へきたと言うことですか?』

「要約するとね、精霊と半獣属、そして人間の子どもが接点をもつ状況には、なにか意味があると思わないかい。そこで、われわれは自己浄化をしてみたのさ」
 
 進行役をつとめるノネコは、亮介とキールの顔を交互に見た。

『そういえば、みなさんの雰囲気が、少し変わりましたね』

 コリス以外は川の上流でみそぎを実行しているため、いつもより清らかな気配をまとっていた。ハイロに抱きとめられたとき、ふところの心地よさを感じたミュオンは、その理由に納得した。      


『色々と感謝します』


 ハイロを含め、全員の前で礼を述べるミュオンだが、背中の羽が再生しない点が気になった。体調は良好なのに、霊力の不足がいなめない。安静にしているだけでは、完全体にもどれないのか、やはり、他の精霊に意見を求めるべきなのかもしれない。さいわい、亮介たちは禊をすませているため、人間や半獣属が放つ特有のにおいは薄れている。

 精霊の成り立ちについて調べることで話しがまとまると、それぞれ寝床についた。亮介とキールは、ハイロがつくった小さめのベッドで横になり、元から寝室にあったほうはミュオン用にけておく。ソファの隅で丸くなるコリスと、床でごろんと寝そべるノネコは、朝方、丸太小屋を出ていくハイロの背中を見送った。


★つづく
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