異世界で８歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ？

第５部

第71話

　現在、丸太小屋の住人は、亮介、ミュオン、ハイロ、キール、ノネコ、コリスの５名である。

　黒蛇クロヘビの襲撃を回避して大神オオカミと対峙したハイロは、同族の大熊クマによって連れ去られたミュオンの奪還に成功し、無事、丸太小屋へ帰ってきた。亮介やキールに抱きつかれたミュオンは、ノネコとコリスの存在に目を留め、軽く微笑ほほえんだ。


「やい、ミュオン！　ほんとうに平気なんだな？　おいらたちに隠しごとはないな？」

『隠すとは、わたしがなにを……』

　ミュオンの顔色が明るいため、ひとまず安堵したキールは、うす暗い庭先で辺りを警戒するハイロの姿を窓越しに見つめたのち、亮介に聞こえないていどの声で質問した。

「たとえば、大熊野郎クマヤロウに、あんなことや、そンなこと（交尾とか）されちまったり……」

『なんです、その不愉快な妄想は。野蛮な大熊など、相手にしませんよ』

「じゃあ、ハイロのおっさんならいいのか？」

『愚問ですね』

「だとしたら、なんで、おっさんの頰が腫れてるンだ？　あれ、どう見てもミュオンの手形だろ」

　目覚めるなり、全裸のハイロを見て誤解したミュオンは、容赦なく鉄槌てっついを下くだした。そもそも、寝室のベッドのうえでハイロの世話になった時点で、ミュオンは恥を掻き捨てるしかない。つまり、平手打ちは、これまでのように、好き勝手に触れさせないという意思表示でもあった。


『あれは自業自得です』


　ムスッと拗すねるミュオンに、キールは素直じゃねーなと、内心思った。誰が見てもミュオンとハイロの間柄あいだがらは親密さを増していたが、深い関係に発展するまで、もう少し時間を要することは明白だ。好物に手をだせない状況（おあずけ状態）のハイロに同情したキールだが、ミュオンの気持ちも大事につき、言及をやめた。久しぶりに元気なミュオンの声を聞いた亮介は、へなへなと力が抜けてしまい、ソファに寄りかかった。

「よ、よかったぁ。ミュオンさんが目を覚まして……。ミュオンさんとハイロさんが無事で……、ものすごく心配したよ」

　うれしそうな顔をして泣きそうになる亮介へ、ノネコとコリスが寄り添った。

「さあ、役者はそろったね。これより先は謎解きの始まりだ」

「わ、ノネコさん、探偵みたいだね～」と、楽しそうなコリス。

「われわれの出逢いは、偶然ではなく、必然のようだからね」と、ノネコは神妙な顔でいう。


★つづく