異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬

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第2部

第43話

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 名付けて〈精霊と手をつなごう作戦〉を宣言した亮介に、キールが「アホか」とツッコむ。

「どうして? ミュオンさんは、僕と手を取りあって生きてるじゃないか」

「あのな、あいつは例外なんだよ。精霊と半獣属が共生できるのは、お互い無関心をよそおっているからで、うかつに手をだしたら、これまでの良好な関係が一気に崩壊しちまうぜ。……精霊について本気で調べたけりゃ、せめて自己浄化してからだろーな」

「浄化? あっ、みそぎってこと?」

 海や川の水で自らを清め、罪や穢れといった不浄を洗い流す、神道における水浴行為がある。水をもってからだの垢や汚れをすすぎ落とすことで、心身を清らかにすることが目的である。

 亮介が「それ、やる!!」と前のめりに意気込むと、ハイロも参加すると言いだした。

「いいよ、いっしょにやろう!」

 人型の大熊に、精霊が心をひらくとは思えない。しかし、亮介や小動物だけで森を探索するには危険すぎるため、ハイロの護衛は必須だろう。人型とはいえ、たよりになる存在だ。

「では、わたしとキールくんも参加しよう。……コリスくんは、留守番が適任かな」

「そりゃそうだろ。あいつも連れていったら、こんどこそリョースケの珍子チンコが食われちまうぜ」

「なっ!? ちょっとキール! 変なこと言わないでよ!」

 ゲラゲラ笑うキールに、亮介は腹を立てたが、コリスに乳首を噛まれたのは事実につき、下半身の血の気が引いた。思いきり急所を噛まれたら、ものすごく痛そうだ。コリスの前歯は、なかなか鋭い。自己浄化の基本は全裸につき、コリスをその場に同行させるわけにはいかない。

「それで、僕たちはどこへ行けばいいの? いつもの池?」

 水浴びとは目的が異なるため、ハイロは首を横にふる。川の上流が水源に近く適切につき、あす、案内すると約束した。


(ミュオンさん、待ってて。なるべく早く帰ってくるから、コリスくんとお留守番よろしくね!)


 その晩、ミュオンの枕もとで眠りについた亮介は、夢のなかで森のみんなと楽しく過ごした。

 複雑な世界に生きる人々は、さまざまな意志とぶつかり合い、静かな至福の瞬間を分かちあう。地中に生きる黒蛇は、明るい光のなかに悲劇と混沌をまねくとされていたが、彼こそ、暗い地の底で過酷な運命を生き抜く勇気と智慧ちえをもつ、孤独な戦士なのかもしれない。


「みんな、いってらっしゃ~い」

 
 翌朝、コリスに見送られ、亮介たちは出発した。


★つづく
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