愛 玩 人 体

み馬

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愛 玩 人 体〔112〕

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 自分の気持ちを正確に伝えることは難しい。相手の立場を抜きにして、思いどおりにならない心が、エイジの胸を締めつける。
(……それでも告白したい。どうせ、オレはフられる、、、、に決まってる。……だって、そうだろ? バージルとオレなんかじゃ身分が釣り合わないし、面倒をみてくれるのは、仕事のうちなンだ……)

 ある程度、相手の反応を覚悟しておけば、拒絶された時のダメージは少なくてすむ。白衣の背中を見つめるエイジは、ごくんと唾を呑んだ。バージルは振り向かない。今夜の報告書を制作しているようで、医師の視線はデスクに落ちていた。いっそ、面と向かって打ち明けるよりマシだと思ったエイジは、ギュッと両手に力を入れ、気持ちを吐き出した。

「そ、そのままでいいから聞いてくれ……。オレ……、バージルが好きだ。……最初の頃は、なんだこの変態って思ってたけど、本当は優しくてかっこよくて、頭も良くて頼れる存在で……。たぶん、オレじゃなくても、あんたに管理を担当された奴は好きになっちまうと思う。……でも、この気持ちは勘違いとか、状況のせいとかじゃなくて、オレなりにバージルを見てきた結果だから、気の迷いなんかじゃない。……バージルを困らせたくないけど、そ、それだけでもわかって欲しい……なんて……思ってる……」

 バージルが今、どんな顔をしているのか、そう考えていくらか不安になったエイジは、徐々に声が小さくなる。もっと言葉を選び、気持ちの整理が必要だったかもしれないと後悔したが、すでに手遅れだった。同時に、この苦しくてせつない感情を、ようやく告白できたと思った。ずっと前からバージルのことで頭がいっぱいになっていたエイジは、「は、ははっ」とみがこぼれた。

(……なんかヤバい。すっげぇ笑えてきた。……考えてみれば、これも研究項目とかに含まれてるっぽくねーか? 今頃いまごろ、その報告書に、愛玩人体このオレが管理者に落ちた、、、日付とか記入してたりして……)

 云うだけ云って、サァーッと血の気が引いたエイジをよそに、バージルは黙々と、左手に持つペンで用紙に何かを書き込んでゆく。愛玩人体は社会環境や肉体の適応力だけでなく、感情の変化も調査対象である。エイジの思ったとおり、言動のすべてを事細ことこまかに記録された。
 

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