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愛 玩 人 体〔92〕
しおりを挟む夜になり、バージルが運転する車両で利用客の家に送り届けられたエイジは、思ったとおりの事態に直面する。狭い寝室へ押し込まれるなり、手荒く裸身にされ、天井から吊るしたロープに両手頚を縛りあげられた。ふたりの中年男から、下半身の前と後ろを同時に攻められ、すぐに膝が慄えだした。
「うぅッ! ……あぅッ!!」
と、エイジが苦痛と刺激に身悶える頃、第2研究室の増設が完了し、気密容器の搬入が決行された。
開発室長のミグネットと、女史の補佐を務めるレオンは、地上へ戻るエレベーター内で会話した。
「ふう……、なんだか忙しい1週間だったわね。受注から納品まで、ひどく短いんだもの。事務局の人間ってば、あたしたちをコキ使ってくれるわよね」
レオンは、なるべく女史との距離を保ち、無言で頷いた。狭い空間に男女がふたりきりの状況は、あまり好まれない。レオンは体裁を気にする性格ではなかったが、女史の場合は少し違った。うっかり性通した過去があるため、必要以上に近づく真似はしない。もとより、ミグネットとの性交渉は最大の汚点だった。
「ああ、そうそう。もう判っているでしょうけれど、愛玩人体の試作品2号が登録されたようね。こんどは、どんな子が選ばれたのかしら。女のあたしに利用権のない計画だけど、だいぶ、噂が広まってきたわね。それだけ、前の愛玩人体が、順調な成果を遂げているってことね」
レオンはマキシムフレックスのメガネを外すと、手巾で曇りを拭き取り、徹った鼻筋へ戻した。女史への返事を見送り、到着した階に降りる。開発室は長い渡り廊下の先にある。だが、ミグネットは事務局のほうへと歩いてゆく。今回の件で、新たな報酬を受け取るためだ。レオンは黙ってあとに続き、わざわざ会いたくもない要人Bの元を訪ねた。
レオンとミグネットが応接間の長椅子に腰をかけると、方卓にはあらかじめ紅茶が淹れてあった。高級な茶葉を使用した逸品で、ひと口呑んだミグネットは「あら、おいしい」と感想を述べた。正面に座る要人Bは、室にはいるなり、レオンの下半身ばかりに目を向けた。教養と知性があり、スリーピースのシングルスーツをスタイリッシュに着こなす青年は、要人Bの嗜好に適っている。だが、レオンの属性は受け身ではない。どれほど願っても、男に降伏することは、まずあり得なかった。
「ふたりとも、ご苦労だったね。気密容器の性能は素晴らしい。今後も、増産の際はよろしく頼むよ」
「はい、ありがとうございます」
ミグネットはそう云って頭を下げると、差し出された茶封筒(報酬)を受け取った。ちなみに、レオンは事前に何も要求していない。ふしぎに思ったミグネットは、「あなたはいいの?」と小声で訊ねた。要人Bも「望みはないのか?」と、あらためて確認した。レオンは少し考えてから、こう述べた。
「愚弟の挙式に、出席させたい愛玩具がいる。事務局長の力で、可能にしてもらいたい」
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