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愛 玩 人 体〔66〕
しおりを挟む休暇が終わり、白衣のバージルと共に研究室へ戻ったエイジは、唐突に「服を脱げ」と云われる。素直に従って裸身になると、医師から告げられた。
「今から、この場で客をもてなすこと。所要時間は120分だ。目的は性交渉につき、必ず受け入れなさい。わたしは医局の食堂で待機するとしよう」
帰宅したばかりで、もう愛玩人体の務めが発生したエイジは、反射的に不満げな顔をした。過去にも利用客が研究室へやって来たことがあるため、嫌な予感がした。
(まさか、また、あのエロおやじか?)
バージルは、事前に客の情報を明かさない。それにつき、上層部の人間が姿を現すのだと勝手に思い込んだ。医師が出てゆくと、入れ違い様に見慣れた人物が室内へ歩を進めた。
「ショウゴ? なんだよ、いつも急だな!」
エイジは裸身につき、咄嗟に下半身だけ両手で隠した。三船は無精髭がなく、似合わないスーツを着ている。
「バージルに用なら、食堂に行ったぞ」
三船が利用客だとは考えないエイジは、あきらかに油断していた。後ろ手に扉を閉めた三船は、外側からバージルが施錠をする音を聞く。ふたりだけの空間は、完全に密室となる。三船に研究室から抜け出す手段はなく、少年にも逃げ場はない。そうとは知らず、エイジは仮眠室からタオルケットを手に取ると、肩がけにして戻った。
三船は気密容器の蓋を持ちあげて、床面積を確認した。エイジを抱くには仮眠室の寝台では狭すぎるため、事に及ぶなら、ここしかないと判断する。スーツの上着を脱いで中央テーブルに置くと、なんの警戒もせずに近づく少年へ目を向けた。
「ショウゴ? どうかしたのか?」
なんとなく、三船の様子がおかしい。そう思ったエイジだが、いきなり抱きあげられ、軽々と気密容器の底へ運ばれた。三船は、少年の肩からタオルケットを取り払う。さすがに、エイジは抗議した。
「なにするンだよッ。ってか、今はショウゴと遊んでる場合じゃねーんだよ。オレは、これから仕事があるンだぞ! 見てわかるだろ!?」
エイジには、利用客へ躰を使って奉仕する務めがある。それを承知しているはずの三船だが、エイジの肩を掴んで、いくらか強引に押し倒してきた。
「ショウゴ? なんで黙ってるンだ!?」
三船は研究室に現れてから、ひとことも言葉を発しない。さらに、普段より表情も硬い。エイジは急に不安を感じたが、三船が乱暴な真似をするとは考えにくかった。だが、両膝をひらかれた瞬間、やっぱりそうなるのかと青ざめた。
「ショウゴ、冗談だろ!? やめろってば!」
「冗談のつもりはない。なるべく丁寧にするから、痛くても耐えてくれ」
ようやく三船の声が訊かれたが、エイジは一瞬、何を云われたのか理解できず、反応が遅れた。
「……ち、ちょっと待て! 今なんて? きちんと説明しろよッ!」
「セルジュから聞いていないのか?」
「そんなの聞くか! オレは、ただ、今から客を相手にするよう云われただけで……ッ」
「その客が、おれなんだよ」
「……な、なに!?」
「おれは、おまえを抱くために来たんだ」
「は? なんで? なんでショウゴが、そんなこと!?」
突然の出来事につき、エイジは頭が混乱した。世間での三船はごく一般人の扱いにつき、試作段階の愛玩人体は利用できないはずである。つまり、後にも先にも、エイジが三船とどうにかなる展開はあり得ないため、まったく状況が呑み込めない。だが、三船の立場はすでに格上げしており、その最初の条件がエイジを抱くことであった。
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