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愛 玩 人 体〔61〕
しおりを挟むエイジは、背後からバージルに生殖器を扱かれて、躰じゅうの細胞が興奮状態となった。巧みな指づかいと、これまでにないやさしい手つきに、呼吸が乱れて息苦しい。
「はぁ、はぁッ、……や、バージル、もう出るッ」
云うなり、エイジはバージルの手の中へ熱い飛沫を放流した。すぐさま腕を伸ばしてシャワーの蛇口を捻る少年の腰を、バージルが引き寄せる。
「……バ、バージル?」
湯気が立ちのぼる中、バージルは尚も少年の下腹部に指を這わせ、もう片方の手で胸の突起へ触れてくる。
「バージル、なんで!?」
動揺したエイジは肩越しに振り向くと、至近距離でバージルと目が合った。
「キミが望んだのだろう。わたしと、性的なことがしたいと云ったではないか」
バージルはエイジの躰を反転させ、左側の乳首へ吸いついた。
「……わッ、うわ! 待って、ちょっと待って!!」
バージルがあまりにも積極的につき、エイジのほうが当惑した。
「どうした」
「……こ、ここじゃなくて、す、するなら、寝台の上がいい」
そう云って、エイジはバージルの腕から逃れ、あたふたと浴室から飛び出した。
(ああ! もう! オレは何をやってンだ……ッ!?)
心臓が速い脈を打つため、エイジは布団にくるまって、深呼吸をした。浴室ではシャワーを使う音が聞こえる。バージルが、湯を浴びているのだ。これから、エイジと交わるために。
あれほど切望していたくせに、たじろいでしまう自分が情けなくなった。エイジは布団から顔を出すと、室内へ視線を泳がせた。備え付けのサイドテーブルに、ふたりが着ていたスーツが置いてある。女性用のパンティーに、バージルの下着も重ねてあった。
(好きな男に抱かれるのって、こんなにも勇気がいるンだな……)
にわかに顔が火照るのを感じた瞬間、鼻血が噴き出した。
「うっわッ!?」
驚くほど大量の鮮血が首筋をつたい、胸もとへ流れてゆく。交感神経が過敏になり、気管が拡張していた。
「うわわッ、布団が汚れちまう!」
ボタボタッと血が落ちる。サイドテーブルにBOXティッシュを見つけ、慌てて鼻を圧えたが、すでに寝台や床を汚してしまった。
(まさか、弁償しろって云われないよな……)
エイジは、ひとまずシャツだけ羽織り、出血が止まるまで動かずにいた。シャワーを浴びたバージルは、絹のバスローブを身につけて戻った。室内の血痕に気づき、室の隅で棒立ちする少年へ近づいた。
「診せてご覧」
「き、急だったから、ティッシュとか間に合わなくて……」
「気にするな」
バージルは医師の顔つきになり、エイジの首筋へ指を添え、脈拍数と散大した瞳孔を確認した。
「……ホテルの人に、怒られないかな?」
「そんな心配をせずとも大丈夫だ。それより、体調が悪かったのか」
「え? ううん。べつにそんなことはないけれど……」
強いて云えば、バージルの(いつもとは違う)態度が原因のような気がしたが、こうなってしまった以上、先へは進めない。案の定、バージルはフロントに連絡をして、新しい部屋を用意した。エイジは残念な気持ちになるが、身体の興奮は少しずつ鎮静していった。まもなくして、フロントから折り返しの内線があり、バージルと服を着て室を出た。エレベーターから数人の清掃員が降りてくる。すれ違う際に会釈をされたが、バージルは何も反応を返さなかった。
新しく移った個室は、2台の寝台が設置されていた。ふたりは別々に腰をかけ、エイジは鼻血が止まったのを確認すると、鼻の穴から詰め物を取り、足許の屑入れに捨てた。
(なんか、すげぇ疲れた……)
刺激的な状況が長く続き、エイジは疲労を感じて横になった。隣の寝台から「おやすみ」と、バージルの声がかかる。エイジはスーツの胸ポケットから腕時計を取り出して、ぼんやり眺めた。時刻は22時を過ぎている。
(このまま眠るのはもったいないけど、仕方ないよな……)
エイジは目を瞑り、きょうの日の出来事を幸福に感じながら眠りについた。バージルに好戦的な扱いを受けたことで、エイジの心は充分なほど満たされていた。
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