愛 玩 人 体

み馬

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愛 玩 人 体〔56〕

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[Date.10]エアル、♂、20歳、ストリートライフの青年、身長172㎝

[Date.11]オーエン▪ティア▪ラビロック、♂、27歳、保健局第二書記官、身長176㎝

[Date.12]オーバン▪T▪ラビロック、♂、27歳、保健局経理職(オーエンの双子の弟)、身長175㎝

     ※ ※ ※ ※ ※

 3年程前、三船は保健局で医療器具の指導に就いていた。もともと群惑コロニーXへ飛ばされた時点で外科医の資格を持っていたが、巨大な社会組織・医局オゼ医師ドクターとして地位を得るのではなく、気ままに暮らしてゆければいいと考えた。保健局の仕事も期間限定での採用につき、のちに、資材倉庫へ転職することになる。

「ミフネ先生」
 朝一番に、三船に声をかける人物は経理部の職員である。玄関ホールで関係者スリッパに履き替えた三船は、「はいよ」と気さくに返事をした。
「こちらの書類ですが、記入漏れがあります」
「すまなかったな。えっと、オーエンくんだったか?」
「オーバンです」
「ありゃ、悪い。オーバンくん」
 
 目の前の青年は身体的特徴がよく似た双子につき、初期のやりとりでどちらかを見分けることは、なかなか難しい。名前を間違われることにれているオーバンは、愛想笑いをして見せる。兄同様、頬にできるえくぼさえ一致いっちしていた。
「新しい用紙をお持ちしましたので、こちらを提出してください」
諒解りょうかい
 三船がオーバンの手から書類を受け取る様子を、吹き抜けの通路から双子の片割れオーエンが見ていた。それと気づかない三船は、会議室へ向かって歩き始める。午前中は医療現場で使われる器具の説明をし、午後は教材をもちいての実技指導がおもな仕事内容である。研修生の多くは10代の若者わかもので、医療事務関連に就職を希望している。中にはすでに保健局の職員として勤務する者もいた。オーエンも、そのひとりである(医師免許は持っていない)。

 会議室の長机に、いつものように器具を並べて準備していると、オーエンがやってきた。
「おはようございます。先生」 
「おはよう、ラビロック」
 三船は、兄のことは名前で呼ばない。指導者として、研修生に個人的な親しみを向けないためである。また、オーバンは会議室へ足を運ぶことはない。
「さっき、弟と何を話していたんです?」
 オーエンは、やや声を低めてく。双子の弟を気にかけるのは、兄のくせらしく、三船はたびたび、オーエンから弟について質問を受けた。
「事務手続きに必要な書類に記入ミスがあって、新しい紙を渡されたんだよ」
「それなら、処分するほうの用紙を、わたしにくださいませんか」
「うん? なんでまた、そんなものを」
 三船が怪訝な顔をすると、オーエンは笑顔でこたえた。
「お守りにするんです」
「お守り?」
不可いけませんか」
「そんなことはないが……」
 三船はあまり深く考えず、バッグから書類を取り出すとオーエンに手渡した。住所などの個人情報が記入してあったが、悪用するような相手ではないと判断した。
「ありがとうございます。大切にします」
 大切にされるようなものでもない気がしたが、三船は「ああ」と頷いた。この時、オーエンの瞳には、かすかな情念が宿っていた。

     ※ ※ ※ ※ ※

 バージルのマンションで、数年ぶりに見た顔に、三船の表情も明るくなった。
「ラビロックが、どうしてここに?」
「はい。AZ様エイジさまの健康診断のためです。先日、バージル博士からご依頼をいただきました」
「……あいつが? ……ふうん?」
 三船はあごに指を添え、視線を泳がせた。わざわざ外部の保健局などを利用せずとも、必要な検査くらい本人バージルの手で可能である。室内へ視線を向けると、裸のエイジが通話を切って玄関に戻ってきた。
「おい、ショウゴ。バージルなら、隣の377号室だ。鍵を開けておくから、はいって来いってさ」
「そうか、わかった。ラビロック、また今度な」
 三船は去り際に軽く手をあげ、エイジの下半身へ視線をそそいだ。
無料タダで、いいモノ、、、、を見せてもらったぜ」
 エイジは一瞬なんのことかわからず、ガチャンッと、音を立てて閉められたドアをながめた。同じく、かたわらのオーエンも名残惜しそうにドアを見つめたが、すぐにエイジを振り向いた。
「作業の途中で、失礼しました。次は身長と体重を測定しましょうか」
 云われて、自分が裸身であることを意識して、エイジは今更のように両手で生殖器アソコを隠した。
(ぐわーーーッ! ショウゴにばっちり見られた!)
 耳まで赤くなるエイジを見たオーエンは、「もしや」と口をきく。
「AZ様は、ショウゴさん、、のことが、お好きなのですか?」
「ち、ちげーよ! そんなわけあるかよ!」
 少年は憤慨したが、オーエンは苦笑した。
「嫌いではなさそうでしたので、つい。失礼しました」
 エイジは(やや不機嫌になりつつも)、検尿キットを手にトイレへ向かった。
(ったく、ショウゴのヤツ、いくらバージルと仲がいいからって、いきなりドアを開けやがって。しかも、なんでこのタイミングなんだよ! こっちが恥ずいだろ!!)


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