愛 玩 人 体

み馬

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愛 玩 人 体〔55〕

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 初対面の男に生殖器アソコしごかれるエイジは、声をがまんして口唇くちびるふるわせた。愛玩人体あいがんボディつとめは休みだが、結局、男の前で股をひらく状況が情けなくも感じた。いくら健康診断に精液が必要とはいえ、隣室にバージルがいるかと思うと、筋肉が硬張こわばってしまい、身体作用が起こらない。オーエンは困った顔をして、エイジの奥まった入口に指を添えた。

「すみません、AZ様エイジさま。こちらを少々刺激しますが、ご容赦ください」
 
 いちいち礼儀正しいオーエンは、いちばん長い中指だけを挿入し、エイジの興奮をあおった。さすがに、がまんの限界である。エイジは「あッ! うッ」と、声をもらしてしまった。敏感な内壁をさぐり当てられて、腰が浮きそうになる。
「あッ、やだ、そこは……ッ」
「AZ様、リラックスしてください」
「そんなこと云われても……ッ」
「さあ、どうぞ。遠慮せずに出してください」
 オーエンは、慣れた手つきで云う。前とうしろを同時に煽られたエイジは両手で顔をおおい、
「も、無理……、出るッ!」
 と云って、勢いよく射精した。オーエンはタイミングを見逃さず、ガラス瓶を性器にめ込み、エイジの分泌液を採取する。
「はぁ、はぁ……ッ」
 と、肩で息をするエイジに、オーエンは「お疲れさまでした」と云ってほほ笑み、ゴム手袋を外して、すぐさまタオルで下腹部を拭き取ってくれた。
「……あんたって、……医者なのか」
 エイジは気恥ずかしさから沈黙をやぶり、相手の素性すじょうたずねた。
「わたしは医者ではありません。特定の医療機関で研修を受けた、保健局の書記官です。このように、個人の依頼で足を運び、検査結果を記録したものを保健局のデータベースに登録し、定期的に対象の発育過程や健康状態を細胞レベルで管理します」
 オーエンは笑顔で「他には?」とうながすため、エイジは「年齢としは?」と返した。
「来月で27になります」  
 オーエンはアルコールをガーゼに染みこませると、片方の手でエイジの左腕を持ち上げた。
「続いて、採血します」
「……うん」
 エイジは下半身を隠すものが欲しいと思ったが、オーエンの視線は、なるべく局所を見ないように意識した動きをするのがわかり、内心ホッとした。
 エイジの呼吸が落ちつくと、シャツを広げて肩からすべらせ、胸に聴診器をあてる。

「次は触診をしますので、あお向けに寝そべってください」
「わ、わかった……」
 まな板の鯉という表現がある。絨毯カーペットの上に寝そべったエイジは、肌を軽く圧迫してくるオーエンの指を意識して、再び下半身がうずいた。胸の突起の横に、吸盤が装着される。
「このまま心電図を記録しますね」
「しんでんず?」
「心臓の収縮に伴って生じる、微弱な活動電流を増幅して記録した図のことです」
「……ふ、ふうん」
「ゆっくり呼吸をして、肩の力を抜き、動かないでください」
 エイジは次第しだいに、オーエンの前で裸身はだかでいることに抵抗を感じなくなり、瞼をとじた。これは必要な検査につき、下手に意識するのをやめにした。実際、オーエンは手際てぎわよく進めてゆく。
AZ様エイジさま、こちらの容器に尿を入れてこれますか」
小便おしっこすればいいのか?」
「はい。尿検査は健康診断では一般的な項目です。早朝の第一尿が適切なんですけどね」 
「……わかった。してくる」
 検尿キットを渡されたエイジは、トイレに移動した。玄関の前を通りかかった時、鍵を閉め忘れたことに気づき、エイジは予定を変えた。室内の段差から腕を伸ばし、鍵に指が触れた瞬間、いきなり外側からドアがひらかれた。体勢を崩したエイジは、現れた人物の胸もと目がけてよろめいた。

「おっと、すまん」
「ショウゴ!?」 
 太い腕に躰を支えられ、顔をあげた先に三船の姿があった。しかも、無精髭を剃っており、いつもより男前に見える。
「なんでショウゴがまた来るんだよ」
 エイジはぱだかであることを忘れ、三船と会話に及んだ。
「いやな、セルジュに聞きたいことができてよ。仕事の前に寄ったんだが、もしかして取り込み中だったか?」
 三船は少年の下半身へ視線を落として云う。エイジが裸身であるため、バージルとの発展ハッテンを勘ぐったが、少年は平然と応じた。
「なにも取り込んでなンかねぇよ。バージルなら、隣のへやだよ。ちょっと待ってて。今、呼び出すから」
 エイジは三船を玄関の中で待たせておき、居間リビングへ引き返した。オーエンは薄型の端末をテーブルに置き、何かを入力している。エイジは通信ツールを手にすると、青いスイッチを押した。わずか数秒でバージルが応答する。
「もしもし? ショウゴが来てるけど、そっちへ案内していいのか?」
 エイジが要件だけ伸べると、かたわらのオーエンが「えっ」と声をあげて反応した。
AZ様エイジさま、たった今、ショウゴと申しましたか?」
「え? ああ、うん」
「それは、ミフネ▪スコール▪ショウゴ様のことでしょうか」
「うん、そうだよ。そのショウゴ、、、、だよ」
 エイジがうなずくと、オーエンは立ちあがり、玄関へ向かった。知り合いなのかと思ったエイジは、居間でバージルと通話を続けた。その頃、玄関で三船の姿を確認したオーエンは、感動の再会に喜んだ。

「ショウゴ先生、ご無沙汰ぶさたしております!!」
「なんだ、おまえ、ラビロックか。ひさしいな。3年ぶりくらいか?」

 かつてオーエンと三船は、保健局で研修生と指導医の立場だった。


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