君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「あーあ、テオ君行っちゃった…。」
「ほーんと、あっけなかったわ…。」


 お別れ会からしばらくして、テオ君は学園を去り、ご両親のもとへと行ってしまった。僕たちのところには喪失感ばかりが残り、なにもやる気になれないでいた。



 今日だって、談話室の一角を陣取って勉強をしているが、みんな教科書を開いたまま上の空だった。

 一つだけ空席の椅子を見て自然とため息が出る。





 その時、ふと机の端に誰かが読み捨てた新聞紙が置いてあることに気づく。なにかこの沈鬱とした空気感を打破する話題はないかと手に取る。




『コシュート国、怪しい動きか…?』



 そんな見出しが表紙に大きく書かれているものだから、思わず凝視してしまう。なんだか、ものすごく不穏だな…。

 とはいえ、こんな話を持ち出したらさらにこの場の空気が悪くなりそうなので、僕はさりげなく新聞紙をもとの場所に戻そうとした。が、

「何それ?」と、ソーン君が横から取ろうとする。
「あ、ちょっと…。」制止をしようとするもむなしく、新聞紙はソーン君の手にわたる。



「…なにこれ、『コシュート国、怪しい動きか…?』って…。」案の定見てほしくなかったところを読まれる。
「なんだって…?」
「コシュート?」そして、それにつられるシンとリーン。

「んーと?『コシュート国へ大量の武器が流れていることが確認された。また、辺境周辺において、行方不明事件が多数報告されている。引き続きコシュート国の動向に注意したい。』…だって…。」
「それ、かなり怖くない…?」
「武器の流入に行方不明事件だろ?真っ黒じゃねーか…。」
「なにか、大きな事件が起きそうだよね…。」


 コシュート国…。あれ、そういえば…。


「…最近、シェフラーさん、見てない…?」




 不意に口から出た言葉に驚く。はっ、と3人のほうを見ると、3人とも目を少し見開いた顔で僕を見ていた。

「…おいおい、怖いこと言うなよ…。」
「そうよ…。まさか、そんな…ねぇ…。」
「…。」ソーン君は、何も言わず考えこんでいるようだった。

「ソーン君…?」
「…へ?あ、そ、そうだよ…。」

 でも、なんだろう…。この胸のざわめき…。











 夜、寝る準備を終え、ベッドに寝転がる。思い返すのは、昼間のことだった。


 …嫌だな…。なんか、あの新聞読んでからずっと胸がザワザワしてる…。それだけじゃなく、なんだか全身がピリピリしてる…。おかしいな…満月はもう少し後のはずだし…なんだか、おかしい…?



 …あーだめだ、だめだ!明日も朝早いんだから!もう寝よう!!


 無理やり目を瞑ろうとしたその時、『アルス!!』と、誰かが僕を呼ぶ声が頭の中に響く。





 誰かも分からないけれど、その声を聞いた瞬間、僕は部屋を飛び出していた。

 頭の中には助けなきゃ、という考えばかりが浮かぶ。目的地もわからないまま、ただ本能に従って走り続ける。



 そうして、着いた先は…。
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