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幕開け
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「それでは!送別会ということで、テオ君がいなくなっちゃうのは寂しいけれど、今日はいっぱい楽しい思い出を作りましょう!!乾杯!!」
「「「「かんぱ~い!!」」」」
テオ君の他の国に行くかもしれないという話は、想像していたよりも進んでいたらしく早ければ今月中、遅くとも今年中にはここを去ってしまうらしい。そんなことをテオ君はまた急に言うものだから、僕たちは慌てて予定を合わせて今日送別会を開催することにした。
急遽開いたものだから参加者はテオ君を入れていつもの5人だけだけど、そんなことも気にならないくらいに部屋は賑やかに装飾され、中央のテーブルの上にはみんなが買ってきたお菓子がたくさん置かれていた。もちろん、僕の大好きなフェリシテのスコーンも置いてある。
「さみしくなるな~。せっかく仲良くなったと思ったらすぐにどっか行っちゃうんだもんな~…。」
「僕もだよ。みんなと離れ離れになっちゃうのは正直嫌だけど、でも一生会えないってわけじゃないし、両親を手伝うことはずっと僕がしたかったことだから…。」
「…テオってば、お前は本当にいい子だな…。」
「ご両親が愛情をいっぱいかけて育てたんだわ、きっと。」そんな、シンとリーンの言葉に照れている様子を見せるテオ君。
「そういえば、もうどこの国に行くとかも決まっているの?」
「うん、もちろん。大海を超えた先の大陸にある国なんだけど、気候がここよりも温暖で、漁業がすごく盛んなんだって。」
「へぇ~漁業、魚か~。」
「大海の向こう側って…かなり遠いじゃない!!」
「うん、そうなんだよね…。」
「…テオ、絶対に手紙出せよ。」なんだか泣きそうな顔をしているシン。
「もちろん!すぐに、とはいかないかもだけど、落ち着いたら必ず出すよ!」
「それで大きくなったらまた、絶対に会いましょ。」
「うん、大きくなったらね。楽しみにしてるね。」
送別会も終盤に差し掛かり始めたころ、突然テオ君についてきてほしいと言われ僕は別の部屋に移動した。
「どうしたの?」
「アルに話したいことがあってね…。この前駆け落ちの話をしたの覚えてる?」
「うん、もちろん。すごく素敵な話だったよね。」
「実はさ、僕…ずっとおじいちゃんのこと好きになれなくてさ…。」
「…。」
「小さいころ面倒を見てくれたのはすごく感謝してるんだけど、それよりもおばあちゃんを家族から引き離して、挙句に死なせちゃったことが引っかかってて…。それで、自分は家族に囲まれて幸せに暮らしてるっていうのがなんていうか、その…許せなかったていうか…。それで、なんだか家族っていうのが気持ち悪く感じちゃって、おじいちゃんの家にも居づらくなって、もういっそのこと遠くに行こうと思ってこの学園に来たんだ。」
「そうだったんだ…。」
「でね、アルあの時『幸せの象徴』とか『宝』とか言ってたでしょ?」
「うん。」
「それで、思い出したんだけど…お母さんもそれ、言ってたんだよね…」
「え…?」
「あっ!えっと、厳密にはおばあちゃんがそれを言っていたらしいっていうのをお母さんとお父さんが言ってたんだけど、とにかく、それを聞いたとき、おばあちゃんは幸せだったのかもなって初めて思えて…。」
「うん…、うん、幸せだったよきっと…。」
「だからその、何が言いたかったかっていうと…大切なことを思い出させてくれてありがとう。改めて、家族っていうのと向き直そうと思えたんだ。」
「その第一歩が、きっとご両親のお手伝いなんだね。」
「うん…まだまだ道のりは長いけどね…。……アル、僕頑張るよ。」
「うん!応援してる!」
そう言って僕たちは送別会の会場に戻った。
「「「「かんぱ~い!!」」」」
テオ君の他の国に行くかもしれないという話は、想像していたよりも進んでいたらしく早ければ今月中、遅くとも今年中にはここを去ってしまうらしい。そんなことをテオ君はまた急に言うものだから、僕たちは慌てて予定を合わせて今日送別会を開催することにした。
急遽開いたものだから参加者はテオ君を入れていつもの5人だけだけど、そんなことも気にならないくらいに部屋は賑やかに装飾され、中央のテーブルの上にはみんなが買ってきたお菓子がたくさん置かれていた。もちろん、僕の大好きなフェリシテのスコーンも置いてある。
「さみしくなるな~。せっかく仲良くなったと思ったらすぐにどっか行っちゃうんだもんな~…。」
「僕もだよ。みんなと離れ離れになっちゃうのは正直嫌だけど、でも一生会えないってわけじゃないし、両親を手伝うことはずっと僕がしたかったことだから…。」
「…テオってば、お前は本当にいい子だな…。」
「ご両親が愛情をいっぱいかけて育てたんだわ、きっと。」そんな、シンとリーンの言葉に照れている様子を見せるテオ君。
「そういえば、もうどこの国に行くとかも決まっているの?」
「うん、もちろん。大海を超えた先の大陸にある国なんだけど、気候がここよりも温暖で、漁業がすごく盛んなんだって。」
「へぇ~漁業、魚か~。」
「大海の向こう側って…かなり遠いじゃない!!」
「うん、そうなんだよね…。」
「…テオ、絶対に手紙出せよ。」なんだか泣きそうな顔をしているシン。
「もちろん!すぐに、とはいかないかもだけど、落ち着いたら必ず出すよ!」
「それで大きくなったらまた、絶対に会いましょ。」
「うん、大きくなったらね。楽しみにしてるね。」
送別会も終盤に差し掛かり始めたころ、突然テオ君についてきてほしいと言われ僕は別の部屋に移動した。
「どうしたの?」
「アルに話したいことがあってね…。この前駆け落ちの話をしたの覚えてる?」
「うん、もちろん。すごく素敵な話だったよね。」
「実はさ、僕…ずっとおじいちゃんのこと好きになれなくてさ…。」
「…。」
「小さいころ面倒を見てくれたのはすごく感謝してるんだけど、それよりもおばあちゃんを家族から引き離して、挙句に死なせちゃったことが引っかかってて…。それで、自分は家族に囲まれて幸せに暮らしてるっていうのがなんていうか、その…許せなかったていうか…。それで、なんだか家族っていうのが気持ち悪く感じちゃって、おじいちゃんの家にも居づらくなって、もういっそのこと遠くに行こうと思ってこの学園に来たんだ。」
「そうだったんだ…。」
「でね、アルあの時『幸せの象徴』とか『宝』とか言ってたでしょ?」
「うん。」
「それで、思い出したんだけど…お母さんもそれ、言ってたんだよね…」
「え…?」
「あっ!えっと、厳密にはおばあちゃんがそれを言っていたらしいっていうのをお母さんとお父さんが言ってたんだけど、とにかく、それを聞いたとき、おばあちゃんは幸せだったのかもなって初めて思えて…。」
「うん…、うん、幸せだったよきっと…。」
「だからその、何が言いたかったかっていうと…大切なことを思い出させてくれてありがとう。改めて、家族っていうのと向き直そうと思えたんだ。」
「その第一歩が、きっとご両親のお手伝いなんだね。」
「うん…まだまだ道のりは長いけどね…。……アル、僕頑張るよ。」
「うん!応援してる!」
そう言って僕たちは送別会の会場に戻った。
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