君の瞳は月夜に輝く

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 授業が先生の都合で振替となり一日休みを得た今日、部屋にいてもすることがなく学園内を探索しようと散歩をしていた。そこでちょうど授業のないソーン君と出会い、今は一緒に散歩をしている。


「そういえば僕、昨日変な夢見たんだよね。」
「へぇ~どんな夢?」
「うーんなんかね、談話室にいて…それで月を見たんだよね。」
「え、月見たの?ほんとに?」
「あぁ、厳密に言うとね月を直接見たわけじゃなくて、月の光を見たんだよ。こう…部屋の中に光が差し込んでるところを見て…それで、『あぁ、月の光って、すっごく明るいんだなぁ…。』て思ったんだよね。」
「ふ、ふ~ん…、そ、それは確かに変な夢だね…。そんなことよりさ!今日は体調大丈夫なの?ほら昨日満月だったし…。」
 ん?ソーン君、なんか焦ってる…?変なの…。
「調子はね、すこぶるいいよ。健康そのものって感じ。」
「そう、それはよかった…。」


 そんなことを話していると、突然目の前に黒い壁が立ちはだかった。


 僕はびっくりして後ろにのけぞり、そのまま尻餅をついてしまう。


「すまない…。大丈夫か…?」そう言って目の前の壁は手を指し伸ばしてくる。
「リュ、リュークさん…。あ、はい僕はなんとも…。」僕はさし伸ばされた手の持ち主を見上げる。


 び、びっくりしたぁ…!心臓止まったかと思った…。

 …ん、あれ…。…気のせいかな…。なんだかいつもより覇気がある気がする…。


 立ち上がるためにリュークさんの手を掴もうとした瞬間、別の手が横から飛び出してきた。

 その手は紛れもなくソーン組んで、隣を見ると信じられないといった表情でリュークさんを見つめていた。

「ちょっと、リュークさんお話をしましょう!」そう言ってリュークさんの手を掴んだままどこかに行ってしまった。ソーン君の異様な雰囲気に僕は茫然とするしかなかった。





 ソーンside


 周囲に人気がないことを確認して、リュークさんのほうへ向き直る。

「どうした…?」リュークさんが少し怪訝そうな顔をして聞く。…まったくこの人は…!!
「どうした、って…。リュークさんあなた”覚醒”してますよ!?」
「覚醒…?」…なに、その反応…。

 たしかに普通の人が見れば元々の魔術が強すぎて覚醒したなんて分からないかもしれない。けどしっかりと変化が出てるのに、何で当の本人はそんなキョトンとした顔をしてるんだ!?なんで僕が気付いて、本人が気付いていないんだ!?

「…そういえば、朝からいつも以上に調子がいいように感じていたが…。そうか、これが覚醒なのか…。」

 なんで覚醒してるのにそんなに淡々としてるの!?え、だって、あの覚醒だよ!?『そうか、これが覚醒なのかぁ…。』で済むものなの!?

 ていうかきっかけは?覚醒する要素あった?昨日会ったときは覚醒はしてなかったよね…。じゃあ、そのあとってこ、と…?

「…リュークさん、昨日アルを部屋に連れて帰った後何してました…?」
「な、な、…なにも、してないぞ…。」僕の問いに分かりやすく動揺するリュークさん。全然目が合わない。

「本当ですか…?僕の目を見て答えてください。」
「ほ、本当だ…!邪なことは何一つしてない…!…ただ、よく眠れるようにと、その、額に…。」顔は相変わらず無表情だが、耳がほんのりと赤くなっていることに気づく。


 最後のほうはしりすぼみになって何を言っていたのかはよく聞き取れなかったが、とりあえずリュークさんの反応を見る限り、本当にそれ以上のことはしていないのだろう。

 おいてきちゃったアルのことが気にかかっていたのもあり、僕はそこで追及をやめた。

 
 …順を追わない恋愛は許しませんからね!!
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