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幕開け
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「君は魔術が使えるんでしょ?」
「まぁな…。」
「いいなぁ…。うらやましいよ、僕は使えないから。」
「うらやましい、か…。おれは”これ”のせいで人生がめちゃくちゃだよ…。」
見慣れたあの白い空間。僕たちは何もないところで横並びに座っている。
「どんな魔術が使えるの?属性とかは?」
「光だ。それも攻撃系のな。武器に属性魔術付与したり、生成したり…。僕は近接戦が苦手だったから、距離が取れるように弓が好きだった。」
「あ、やっぱり弓なんだ。僕もおんなじ理由で戦うときは弓使ってる。」
「…だろうな。」
「それにしても光属性使えるのか…。いいなあ、僕も使えたらな…。」
その場の雰囲気が変わったように感じた。横を向くとあの子は無表情でこちらを見つめ返していた。
「お前、自分では使えないと思っているのか…?」
急な声色の変化に僕は思わずびっくりする。
「え、それってどういう…。」
不意に肌寒さを感じ、眠りから意識が引き戻される。
…夢を見ていた気がするんだけど、いつもみたいに何も思い出せないな…。
て、あれ…。ここ、どこだ…?
気怠い体を無理やり起こし周りを見渡す。
いつもと違う光景に一瞬頭が混乱するもすぐに談話室にいることに気づき安心する。
…いや、待て待て…。僕なんで談話室にいるの?自分の部屋で寝ていたはずだよね?寝ながらここに来たってことなのかな?そんなことある?夢遊病みたいな?
...ていうか、なんか部屋が明るい…?まだ夜だよね、若干暗いし。こんな冷たい暗い雰囲気の照明、談話室にあったかな…?
…。
……違う、これ、もしかして…。
恐る恐る談話室の窓を見る。
一番大きな窓のカーテンが開かれていた。
「これ…月の光だ…。」
…月の光によって死に至る。そんな呪いを持つ僕だけど、部屋を仄暗く照らす光に不思議と怖いという感情はなかった。むしろ、もっと近くで見たい。そんな好奇心のほうが強かった。
こんなに明るい夜は初めてだった。
月の光に当たらないように気を付けながら窓のほうに近づき、しゃがみこむ。
部屋に差しこむ光をしばらく見つめ、床にできた光と影の境目をなぞってみる。指先からぞわぞわした感覚が体に広がる。でも嫌なぞわぞわ感じゃない、心地よさすら感じる。
絨毯にできたなぞった跡を眺めているうちに、『月の光で死ぬなんて嘘なんじゃないか』なんていう考えが頭をよぎる。
綺麗だなぁ...。
無意識に手が光の方へとのびる。
あと少しで月の光に手が届くというところで、背後で何か物音が聞こえた。
ソーンside
何とかアルを談話室に運び、確認をする体制を整える。
一息をつき、あとはカーテンを開けるだけというところでアルが起きるような気配がした。
慌ててカーテンを開け、僕は物陰に隠れる。
様子を伺うと、アルが窓に近づいているところだった。
「まさか、光に当たるつもり…?」
そんな僕の心配をよそにアルは光に当たる手前で止まり、その場に座った。ぼーっと何かを眺めていると思えば、絨毯に何かを書き始めた。何を書いているのかまでは見ることができないが、光との距離から言ってとりあえず安心してもよさそうだった。
そのままアルの様子を見続けていると、目の前で信じられない現象が起こり始めた。アルの絨毯に触れている指先から小さな光の粒子が流れ込み、それが全身に広がる。白い肌が輝き、髪の毛がキラキラし始める。アル自身は見えていないのか絨毯をいじり続けている。
…これではっきりした。これぞまさしく僕の見たかった反応だ…。残る疑問は…。
その時アル体にまた別の異変が起こる。
「…あ、あれって…。」
もう少し詳しく見ようと思って身を乗り出したところで、アルが月の光に手を伸ばそうとしていることに気づく。
「何やってんの…!!」
止めようとして走り出したところで、目の前を何かがよぎった…。
「君は魔術が使えるんでしょ?」
「まぁな…。」
「いいなぁ…。うらやましいよ、僕は使えないから。」
「うらやましい、か…。おれは”これ”のせいで人生がめちゃくちゃだよ…。」
見慣れたあの白い空間。僕たちは何もないところで横並びに座っている。
「どんな魔術が使えるの?属性とかは?」
「光だ。それも攻撃系のな。武器に属性魔術付与したり、生成したり…。僕は近接戦が苦手だったから、距離が取れるように弓が好きだった。」
「あ、やっぱり弓なんだ。僕もおんなじ理由で戦うときは弓使ってる。」
「…だろうな。」
「それにしても光属性使えるのか…。いいなあ、僕も使えたらな…。」
その場の雰囲気が変わったように感じた。横を向くとあの子は無表情でこちらを見つめ返していた。
「お前、自分では使えないと思っているのか…?」
急な声色の変化に僕は思わずびっくりする。
「え、それってどういう…。」
不意に肌寒さを感じ、眠りから意識が引き戻される。
…夢を見ていた気がするんだけど、いつもみたいに何も思い出せないな…。
て、あれ…。ここ、どこだ…?
気怠い体を無理やり起こし周りを見渡す。
いつもと違う光景に一瞬頭が混乱するもすぐに談話室にいることに気づき安心する。
…いや、待て待て…。僕なんで談話室にいるの?自分の部屋で寝ていたはずだよね?寝ながらここに来たってことなのかな?そんなことある?夢遊病みたいな?
...ていうか、なんか部屋が明るい…?まだ夜だよね、若干暗いし。こんな冷たい暗い雰囲気の照明、談話室にあったかな…?
…。
……違う、これ、もしかして…。
恐る恐る談話室の窓を見る。
一番大きな窓のカーテンが開かれていた。
「これ…月の光だ…。」
…月の光によって死に至る。そんな呪いを持つ僕だけど、部屋を仄暗く照らす光に不思議と怖いという感情はなかった。むしろ、もっと近くで見たい。そんな好奇心のほうが強かった。
こんなに明るい夜は初めてだった。
月の光に当たらないように気を付けながら窓のほうに近づき、しゃがみこむ。
部屋に差しこむ光をしばらく見つめ、床にできた光と影の境目をなぞってみる。指先からぞわぞわした感覚が体に広がる。でも嫌なぞわぞわ感じゃない、心地よさすら感じる。
絨毯にできたなぞった跡を眺めているうちに、『月の光で死ぬなんて嘘なんじゃないか』なんていう考えが頭をよぎる。
綺麗だなぁ...。
無意識に手が光の方へとのびる。
あと少しで月の光に手が届くというところで、背後で何か物音が聞こえた。
ソーンside
何とかアルを談話室に運び、確認をする体制を整える。
一息をつき、あとはカーテンを開けるだけというところでアルが起きるような気配がした。
慌ててカーテンを開け、僕は物陰に隠れる。
様子を伺うと、アルが窓に近づいているところだった。
「まさか、光に当たるつもり…?」
そんな僕の心配をよそにアルは光に当たる手前で止まり、その場に座った。ぼーっと何かを眺めていると思えば、絨毯に何かを書き始めた。何を書いているのかまでは見ることができないが、光との距離から言ってとりあえず安心してもよさそうだった。
そのままアルの様子を見続けていると、目の前で信じられない現象が起こり始めた。アルの絨毯に触れている指先から小さな光の粒子が流れ込み、それが全身に広がる。白い肌が輝き、髪の毛がキラキラし始める。アル自身は見えていないのか絨毯をいじり続けている。
…これではっきりした。これぞまさしく僕の見たかった反応だ…。残る疑問は…。
その時アル体にまた別の異変が起こる。
「…あ、あれって…。」
もう少し詳しく見ようと思って身を乗り出したところで、アルが月の光に手を伸ばそうとしていることに気づく。
「何やってんの…!!」
止めようとして走り出したところで、目の前を何かがよぎった…。
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