君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 季節は秋を迎え、過ごしやすい日々が続いている。

 う~ん!やっぱり秋が一番好きだな~!!



「最近涼しくなって、かなりすごしやすくなったよね。」
「そうね、暑すぎず寒すぎず…これがずっと続けばいいのに…。」
「でもさ、朝ちょっと寒すぎね?俺、若干風邪ひいてんだけど…。」
「それは、シン君が窓を開けたまま寝ているからでしょ?」
「まだ窓開けて寝てるの!?それは風邪ひくよ…。」


 学校のない今日、僕たちはいつものように談話室にいた。テオ君も最近は僕たちの空気管に慣れたのか、いつも一緒にいる。


「あ、そうだ…。僕、一応みんなに言っておかないといけないことがあるんだけど…。」そのテオ君がどこか気まずそうに口を開く。
「どうかしたの?」
「これはあくまでも、もしかしたらの話なんだけど…。僕、別の国に引っ越すかもしれなくて…。」
「ん!?」
「ちょ、ちょっと待って!?」
「引っ越し…?」
「どういうこと??」
「いや、そんな大層な話じゃなくて…。ただ、お父さんとお母さんが事業拡大をするみたいで、拠点を別の国に移そうって考えてるみたいなんだよね。それが、結構遠いところにするらしくて…。僕も、そろそろ2人を手伝いたいって思ってたから、それでついていくかもしれないんだ…。」

 …もしかしてこの間急に部屋を出て行ったのと関係があるのかな…?家族の話してたし…。


「そっか、お手伝いで…。」
「テオ偉いな…。」
「まぁ、まだそうと決まったわけではないし、もしかしたら、の話だからね!」
「それにしてもよ。…もし、引っ越すってなったらお手紙は出してもいいのかしら?」
「それはもちろん!僕もお返事出すよ!」
「引っ越すんだったら僕たちも送別会しなきゃじゃない?」
「送別会、してくれるの…?」
「当たり前だよ!たくさん思い出作ろ!!」
「ほんとに!ありがとう!!もし、引っ越すってなったら、日程とか早く教えるね!」

 もしかしたら、ね…。遠くに行っちゃうのは、寂しいな…。






「そうだ、アル今日は体調大丈夫?」
「体調?あぁ、今日満月か。」
「なによ、『あぁ、今日満月か。』って…。まぁ、その様子じゃ大丈夫そうね。」
「うん、すこぶる健康って感じだね。」
「ほんとに?手足のしびれとか、ちょっと体重いな…とかそういうのもなかったの?熱とかも大丈夫?」そう言いながら僕の額に手をあててくるソーン君。
「大丈夫だよ~!」僕はそう答えるもソーン君は脈拍を図ったり下瞼をめくったりして、なんだかお医者さんみたいだった。
「そ、ソーン君どうしたの…。そんな、入念に…。」
「アル、油断大敵だよ…。こういう時こそ注意しないと何が起こるか分からないんだから…。あ、そうだ。これあげるよ。」そう言ってソーン君は円柱状の入れ物を渡してきた。

「なにこれ?」
「茶葉だよ。実家から送られてきたものなんだけど、これを飲めばぐっすり眠れるんだ。ほかにも疲労回復とか血流をよくする効果があるんだって。味もすっきりしてて飲みやすいからアルも飲んでみてよ!」
「え、いいの?ありがとう!!」

 入れ物の蓋を開け中の茶葉のにおいをかいでみる。ほんのりと花のような香りがした。










 ソーンside


 今日は満月…。


 体調は良好。魔力の流れもだいぶ安定している。おまけに明日もアルは授業が振替になってお休み。だから何かあったとしても授業への影響はない…。


 よし、確かめるなら今日しかない…!大丈夫…。入念に計画を立てたし、考えうるアクシデントもつぶしたし、そのうえでリハーサルもした…。うん、大丈夫だ…。


 両親とアランさんの防災装置みたいなのがあるからアルの部屋ではカーテンが開けれず、確かめるためには部屋を移動させないといけないのが大変だったけど、確認するための部屋も、そこに行くまでの月の光に当たらないような動線も確保した。
 しかも、アルには睡眠効果のあるお茶を渡したし、飲んでいるところも見た…。これでよっぽどのことがない限り起きないはず…。



 完璧なはずだ…。大丈夫…。ただ、確認するだけだ…何も起きないはず…。
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