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幕開け
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しおりを挟むようやく今日の授業が終わり、試験も課題もなく時間を持て余していた僕は近くにいたソーン君とテオ君を寮の部屋に誘っていた。
さっきまでどこか落ち着かない感じだった2人も、いまや思い思いにくつろいでくれている。
「…あ、この真ん中にいる子がアル?」
部屋の中を見て回っていたソーン君が、棚に飾ってあった僕の小さい頃の家族写真を見つけて言う。
「うん、そうだよ。...たしか、1歳の時の写真かな…?」
「どれ~?あ、この真ん中で抱っこされてる子?」少し離れたところで本を読んでいたテオ君が駆け寄ってくる。
「そうそう。」
「可愛い~!!なんていうか、ルーナ様みたいだね!!」写真を見たテオ君が少し興奮した様子で言う。かわいい。
僕も改めて写真を見てみる。
写真の中の小さい僕は白に近い金髪をもち、瞳は琥珀色に輝いていた。その特徴は史実で描かれるルーナ=シューベルトのものと相違なかった。
「ちゃんと琥珀色の瞳持ってたんだ…。でも、今はどっちかっていうと茶色っぽいよね…?」
「うん、呪いを受けてからかな?そこから一気に茶色くなっちゃったみたいなんだよね…。まぁ、魔術が使えないのに見た目だけ大おばあ様に似ててもって感じはするけどね…。」
そんなことを言いながらもしこの写真の容姿のまま成長していたらどうなっていたかを想像してみる。
…あれ、どこかで見たことあるような…?
「そういえば、呪いってどうやってかかったの?」写真に目を向けたままのテオ君が聞いてくる。
「うーん、かかったっていうよりはかけられたっていうほうが正しいかも…。僕が2歳だったかな、その時にお父さんのことを恨んでいた悪い人が僕に呪いをかけていったらしいんだよね。」
「そいつのせいで月の光を浴びれなくなっちゃったのか。…たしか前に、月を一回だけ見たことがあるって言ってたよね?その時のことって覚えてる?」今度はソーン君が聞いてくる。
「う~ん、たしか...月を見た瞬間、急に体全身がしびれだして…、体がどんどん熱くなる感じがして…なんか、こうあったかいような冷たいようなよく分かんないものが体中を走ってて…。…...小さいころすぎてあまり覚えてないんだよね…。」
「そっか…。」
「…その呪いをかけた犯人って今どこにいるか知ってるの?もしかしたら呪いを解く方法を知ってるかも…。」
「その犯人僕に呪いをかけたその場で自害しちゃったらしいんだよね…。」
「そんな…!」
「犯人が死んじゃったから、呪いを解く方法も根源を見つける方法も分からなくなってしまって、でもなにかできることはないかってお父さんとお母さんがいろんな国の魔術師にかけあったりしてくれたみたいなんだけど…」
そこまで言ってこの場の雰囲気がかなりしんみりしちゃっていることに気づく。
…まずいな、ソーン君とテオ君にそんな顔をさせるために遊びに来てもらったわけじゃないんだけどな…。どうにかして話題を変えないと…。
「…この話はここまでにしよう!ほら、なんだか雰囲気も変になっちゃったし。僕の話よりも2人の話を聞きたいな!」
「僕たちの話って…?」
「う~ん…。あ、ほらそれこそ2人のお父さんお母さんの話とか聞いてみたいな!」
「お父さんとお母さんの話…。」少し険しい顔をしているテオ君。
「そういえばソーン君のお母さん、めちゃくちゃソーン君に似てたね。親子だってすぐ分かったよ。」
「うん。よく言われるんだよね、顔はお母さん似だって。」
「ん?顔、は…?」少しニヤついた顔で聞くテオ君。どしたんだろう?
「……顔は、お母さん似で性格とか考え方はお父さん似だ、ってよく言われる…。」
「あ~じゃあ、もしかして…そのちょっと腹黒い性格はお父さん似なの…?」もっとニヤニヤした顔で聞くテオ君。それを少し恨みがましい顔で見るソーン君。
……なんか、この2人僕の知らないうちに仲良くなってる…?
「腹黒いといえば、夏祭りで会ったクラウス君もおんなじこと言ってたよ。ソーン君実は結構腹黒いって…。……ところで、腹黒いってどういう意味なの?」
「あー、僕のことはこれ以上!もういいから!今度はテオ君の両親のこと!知りたいな!」
「え、僕の…?……僕の両親はいたって平凡だよ…。」
「ほら、おじいさんとおばあさんが駆け落ちしたって言ってたよね?その話聞きたいな!」
…なんか、ソーン君強引に話を変えたな…。やっぱり『腹黒い』の意味を調べておくんだったな…。
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