君の瞳は月夜に輝く

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 休み明けのテストも終わり、満月の日も乗り越えた今日、なんとなくリュークさんがあの像を眺めているような気がしてガゼボに向かっている。

 ……いや、あれだよ?全然単純に会いたいとかではないんだけど、誘拐事件の時に助けてもらったんだからやっぱり改めて『ありがとう。』を伝えたいじゃん?



 それにしても今回の満月は少しきつかったな…。偶々学園が休みの日でよかったけれど、朝から風邪を引いたみたいに体がしんどくてベットからなかなか起き上がれなかったし、何もする気が起きなかったし…。久しぶりに満月の日にぐったりしている僕を見てお兄ちゃんはずっとつきっきりでそばにいてくれるしで、いろんな意味で久しぶりに疲れたよ…。









 そんなこんなでガゼボに着いた。

 そーっと、中を覗いてみる。



 中では、リュークさんが座って女神像をじっと見つめていた。





 …え、まさか本当にいるとは思わないじゃん…。いや、いるかな~とは思ってたけどイメージしてた通りにいるとは思わないじゃん…。え、これも既視感…?…とは、ちょっと違うよな…。



「…そんなとこで何してんだ…?」
「へっ!あ、そ、その…!えっと…。」

 突然声をかけられてまごまごしている僕を見て、リュークさんは自分の隣をぽんぽんと叩き、
「座らないのか?」と聞いてきた。
 僕は恐る恐る隣に座る。







「……あ、改めて助けてくれてありがとうございました…。」
「あぁ、気にするな。俺は何もできなかったし…。どうだ、その後変わりはないか?」
「えぇ、とても元気です。」
「それはよかった…。あ、そうだ手を出せ。これ以上悪い奴に近づかれないようにおまじないかけよう。」

 手、を…!?ど、どうすれば…。というか、リュークさんもおまじないとか言っちゃうんだ…。


 僕はどぎまぎしながらも左手を差し出す。リュークさんはそれに自分の右手を重ねる。本当に何かの魔術が流されているのか、全身がぽわぽわしてくる。



 なんだか、目のやり場に困るな…。どうしよ…。




 …それにしても、リュークさんの手、大きくないか…?僕の手がすっぽり隠れちゃってるんだけど…。いいな、手が大きいのかっこいい...。




 …...あれ、手に指輪ついてる…?あの、指輪って、夏祭りの…。





 その瞬間、頭の血の気が引いた感覚がし、思わず重ねられていた手を払いのけてしまう。

 突然のことで、リュークさんもあっけにとられたような顔をしている。


「どうした…?もしかして、痛かったか…?」



 どうしよ、どうしよ…。聞いてもいいのかな。指輪のこと聞いちゃってもいいのかな…?


 ……でも、聞いちゃって、もし…もし、僕の知らない人と指輪買いましたって言われたらどうするの?




「…だ、大丈夫か…?」
 何も言わないままの僕を不審に思ったのか、リュークさんが顔を覗き込んでくる。うっかりとそっちのほうを見ちゃったもんだから、目が合って……



「指輪、どうしたんですか?」

 気づけば無意識のうちに口が開いていた。……あ、なんでいっちゃったんだろ…。


「あぁ、これか…?」

 聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちがせめぎあい、リュークさんの口をふさぎたくなる衝動に駆られる。


「ソーンからもらったんだ。」
「…え、そ、ソーン君から…?」思ってもみなかった答えが返ってきて、リュークさんの口を塞ごうとしていた僕の手は行き場を失った。
「あぁ、誘拐があった日にもらったんだ。なんか捨てれなくて付けたまんまなんだよな…。」


 
 …あぁ、じゃあ、やっぱりソーン君、僕との指輪人にあげてたんだ…。あれはやっぱりカイルさんとおそろいの分なんだ…。それでそれで、指輪はリュークさんにあげてたんだ…。なぁんだ、そっかそっか…。


 …。



 ……。


 ………じゃあ、今、僕とのお揃いは…?


 …え、…あれ…。



「そういえば、同じのつけてたよな、確か左手に…。あ、大丈夫か?顔が赤いぞ…?」
「ぼ、僕用事思い出して!!だから、その、し、失礼します!!」
「あ、おい…。」




 なんだかよく分からないけど、これ以上リュークさんの顔を見れず、僕はその場を後にしていた。


 ...顔、あっつ...。
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