90 / 104
幕開け
84
しおりを挟む
休み明けのテストも終わり、満月の日も乗り越えた今日、なんとなくリュークさんがあの像を眺めているような気がしてガゼボに向かっている。
……いや、あれだよ?全然単純に会いたいとかではないんだけど、誘拐事件の時に助けてもらったんだからやっぱり改めて『ありがとう。』を伝えたいじゃん?
それにしても今回の満月は少しきつかったな…。偶々学園が休みの日でよかったけれど、朝から風邪を引いたみたいに体がしんどくてベットからなかなか起き上がれなかったし、何もする気が起きなかったし…。久しぶりに満月の日にぐったりしている僕を見てお兄ちゃんはずっとつきっきりでそばにいてくれるしで、いろんな意味で久しぶりに疲れたよ…。
そんなこんなでガゼボに着いた。
そーっと、中を覗いてみる。
中では、リュークさんが座って女神像をじっと見つめていた。
…え、まさか本当にいるとは思わないじゃん…。いや、いるかな~とは思ってたけどイメージしてた通りにいるとは思わないじゃん…。え、これも既視感…?…とは、ちょっと違うよな…。
「…そんなとこで何してんだ…?」
「へっ!あ、そ、その…!えっと…。」
突然声をかけられてまごまごしている僕を見て、リュークさんは自分の隣をぽんぽんと叩き、
「座らないのか?」と聞いてきた。
僕は恐る恐る隣に座る。
「……あ、改めて助けてくれてありがとうございました…。」
「あぁ、気にするな。俺は何もできなかったし…。どうだ、その後変わりはないか?」
「えぇ、とても元気です。」
「それはよかった…。あ、そうだ手を出せ。これ以上悪い奴に近づかれないようにおまじないかけよう。」
手、を…!?ど、どうすれば…。というか、リュークさんもおまじないとか言っちゃうんだ…。
僕はどぎまぎしながらも左手を差し出す。リュークさんはそれに自分の右手を重ねる。本当に何かの魔術が流されているのか、全身がぽわぽわしてくる。
なんだか、目のやり場に困るな…。どうしよ…。
…それにしても、リュークさんの手、大きくないか…?僕の手がすっぽり隠れちゃってるんだけど…。いいな、手が大きいのかっこいい...。
…...あれ、手に指輪ついてる…?あの、指輪って、夏祭りの…。
その瞬間、頭の血の気が引いた感覚がし、思わず重ねられていた手を払いのけてしまう。
突然のことで、リュークさんもあっけにとられたような顔をしている。
「どうした…?もしかして、痛かったか…?」
どうしよ、どうしよ…。聞いてもいいのかな。指輪のこと聞いちゃってもいいのかな…?
……でも、聞いちゃって、もし…もし、僕の知らない人と指輪買いましたって言われたらどうするの?
「…だ、大丈夫か…?」
何も言わないままの僕を不審に思ったのか、リュークさんが顔を覗き込んでくる。うっかりとそっちのほうを見ちゃったもんだから、目が合って……
「指輪、どうしたんですか?」
気づけば無意識のうちに口が開いていた。……あ、なんでいっちゃったんだろ…。
「あぁ、これか…?」
聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちがせめぎあい、リュークさんの口をふさぎたくなる衝動に駆られる。
「ソーンからもらったんだ。」
「…え、そ、ソーン君から…?」思ってもみなかった答えが返ってきて、リュークさんの口を塞ごうとしていた僕の手は行き場を失った。
「あぁ、誘拐があった日にもらったんだ。なんか捨てれなくて付けたまんまなんだよな…。」
…あぁ、じゃあ、やっぱりソーン君、僕との指輪人にあげてたんだ…。あれはやっぱりカイルさんとおそろいの分なんだ…。それでそれで、指輪はリュークさんにあげてたんだ…。なぁんだ、そっかそっか…。
…。
……。
………じゃあ、今、僕とのお揃いは…?
…え、…あれ…。
「そういえば、同じのつけてたよな、確か左手に…。あ、大丈夫か?顔が赤いぞ…?」
「ぼ、僕用事思い出して!!だから、その、し、失礼します!!」
「あ、おい…。」
なんだかよく分からないけど、これ以上リュークさんの顔を見れず、僕はその場を後にしていた。
...顔、あっつ...。
……いや、あれだよ?全然単純に会いたいとかではないんだけど、誘拐事件の時に助けてもらったんだからやっぱり改めて『ありがとう。』を伝えたいじゃん?
それにしても今回の満月は少しきつかったな…。偶々学園が休みの日でよかったけれど、朝から風邪を引いたみたいに体がしんどくてベットからなかなか起き上がれなかったし、何もする気が起きなかったし…。久しぶりに満月の日にぐったりしている僕を見てお兄ちゃんはずっとつきっきりでそばにいてくれるしで、いろんな意味で久しぶりに疲れたよ…。
そんなこんなでガゼボに着いた。
そーっと、中を覗いてみる。
中では、リュークさんが座って女神像をじっと見つめていた。
…え、まさか本当にいるとは思わないじゃん…。いや、いるかな~とは思ってたけどイメージしてた通りにいるとは思わないじゃん…。え、これも既視感…?…とは、ちょっと違うよな…。
「…そんなとこで何してんだ…?」
「へっ!あ、そ、その…!えっと…。」
突然声をかけられてまごまごしている僕を見て、リュークさんは自分の隣をぽんぽんと叩き、
「座らないのか?」と聞いてきた。
僕は恐る恐る隣に座る。
「……あ、改めて助けてくれてありがとうございました…。」
「あぁ、気にするな。俺は何もできなかったし…。どうだ、その後変わりはないか?」
「えぇ、とても元気です。」
「それはよかった…。あ、そうだ手を出せ。これ以上悪い奴に近づかれないようにおまじないかけよう。」
手、を…!?ど、どうすれば…。というか、リュークさんもおまじないとか言っちゃうんだ…。
僕はどぎまぎしながらも左手を差し出す。リュークさんはそれに自分の右手を重ねる。本当に何かの魔術が流されているのか、全身がぽわぽわしてくる。
なんだか、目のやり場に困るな…。どうしよ…。
…それにしても、リュークさんの手、大きくないか…?僕の手がすっぽり隠れちゃってるんだけど…。いいな、手が大きいのかっこいい...。
…...あれ、手に指輪ついてる…?あの、指輪って、夏祭りの…。
その瞬間、頭の血の気が引いた感覚がし、思わず重ねられていた手を払いのけてしまう。
突然のことで、リュークさんもあっけにとられたような顔をしている。
「どうした…?もしかして、痛かったか…?」
どうしよ、どうしよ…。聞いてもいいのかな。指輪のこと聞いちゃってもいいのかな…?
……でも、聞いちゃって、もし…もし、僕の知らない人と指輪買いましたって言われたらどうするの?
「…だ、大丈夫か…?」
何も言わないままの僕を不審に思ったのか、リュークさんが顔を覗き込んでくる。うっかりとそっちのほうを見ちゃったもんだから、目が合って……
「指輪、どうしたんですか?」
気づけば無意識のうちに口が開いていた。……あ、なんでいっちゃったんだろ…。
「あぁ、これか…?」
聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちがせめぎあい、リュークさんの口をふさぎたくなる衝動に駆られる。
「ソーンからもらったんだ。」
「…え、そ、ソーン君から…?」思ってもみなかった答えが返ってきて、リュークさんの口を塞ごうとしていた僕の手は行き場を失った。
「あぁ、誘拐があった日にもらったんだ。なんか捨てれなくて付けたまんまなんだよな…。」
…あぁ、じゃあ、やっぱりソーン君、僕との指輪人にあげてたんだ…。あれはやっぱりカイルさんとおそろいの分なんだ…。それでそれで、指輪はリュークさんにあげてたんだ…。なぁんだ、そっかそっか…。
…。
……。
………じゃあ、今、僕とのお揃いは…?
…え、…あれ…。
「そういえば、同じのつけてたよな、確か左手に…。あ、大丈夫か?顔が赤いぞ…?」
「ぼ、僕用事思い出して!!だから、その、し、失礼します!!」
「あ、おい…。」
なんだかよく分からないけど、これ以上リュークさんの顔を見れず、僕はその場を後にしていた。
...顔、あっつ...。
5
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
王道学園と、平凡と見せかけた非凡
壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。
そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。
風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。
基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?!
◆pixivでも投稿してます。
◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる