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幕開け
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夏休みも無事(?)終わり、学園での授業が始まった。始まったとはいえ、この学園のシステムの都合で休み明けの数日は午前で終わるため、僕たちは昼ご飯を食べ終え、中庭のベンチで駄弁っていた。今回はおうちのお手伝いもひと段落ついたテオ君も一緒にいる。
「………あのさ、改めて思うけど…護衛の人達、ちょっと邪魔ね……。」
唐突にリーンが聞こえるか微妙な声量でつぶやく。
誘拐事件後僕につくという警護は、僕のそばに2人、少し離れたところに3人の計5人という結果になった。最初こそ、15人雇うという話で決まりそうだったが、そこは僕がどうにかこうにか抵抗して何とか5人でおさめさせた。15人って多すぎない…!?この国の国王でさえ15人もSPさんをつけないっていうのに…。
5人に落ち着いたのはよかったのだが問題はその距離感で、特に近くにいる2人は数十年来の友達だったっけ?位の距離に常にいるから、なんというか…めちゃくちゃ気まずい…。
それでも一緒にお話とかできればちょっとは空気も楽になるかもしれないけど、常に無表情で僕が話しかけても最低限の返事しかせず(人によっては返事もない)ずっとこの調子だから、僕も近頃は歩み寄ることを諦め始めている。
あと、これは僕の偏見なのだけれども、全員足が速そう…。
「そういえば、アランさんは今どこにいるの?」しばらくぶりのテオ君が聞いてくる。この夏休みの間に声変りが始まったのか少し声が低く感じる。
「今は、生徒会長の仕事中だよ。なんだか色々と忙しいみたい…。」
「そうなんだ…。」
「アランさんさ、なんだか最近ちょっと過保護に拍車かかっちゃったよね…。」
「やっぱりそうだよね!さっきだってここに来る前……」
そう言って僕はここに来るまでの出来事を思い返す。
「…いいか、アル。絶対に知らない人についていっちゃダメだぞ。」
「うん、分かった。」
「何かあったら大きな声で叫ぶ。もしくは防犯用のブザーを鳴らす。」
「分かった。」
「絶対に皆のそば離れてどこかに行かない。」
「分かった。……分かったから、一旦抱きしめるのやめない?めっちゃ見られてるんだけど…。あと、ちょっと苦しい…。」
「あ、そうか…。」そこでようやく護衛の存在に気付いたのかハグをやめた。
「でもな…」その代わり僕のほっぺを両手で包み込み始めた。…大丈夫?これ、僕すごくぶさいくになってない?
「でもな、本当に心配してるんだ…。いくらセキュリティに優れた学園だからといってまたあんなことが起こらないとも限らない。気を付けるんだよ。」
「ふん、わはっは。(うん、わかった。)」
「変なところに行かないこと。あと、変な虫にも注意すること。付きまとわれてもだめだし、ついて行ったら絶対にダメだからな!」
「むひっへ…?(むしって…?)」
「とにかく、気をつけること!!わかった?」
「わはっはっへ。(わかったって。)」
「よし、じゃあ行ってらっしゃい。…こいつのことよろしくお願いします。」
お兄ちゃんは最後護衛の人にあいさつをしてようやく僕のほっぺを解放した。
「…みたいなことがあって、これが今日だけならまだしも学校始まってから毎日なんだよ…。」
「それは、なかなか大変だな…。」
「でしょ~?お兄ちゃんだけじゃなくてお父さんとお母さんもそんな感じなんだよ…。毎日のように手紙が来るし…。まぁ、誘拐事件があったから仕方ないっていうのは分かるんだけどね…。」
「あのさ、聞いてもいいものか分からなくてもやもやしてたんだけど、思い切って聞いちゃうね。やっぱり誘拐された公爵の子息ってアルのことなの?」
「そうだよ。」
「あぁ、そうなんだ…。え、主犯がまだ判明していないっていうのは本当なの?」
「うん、本当だけど…、よく知ってるね…。」
「まぁね、商人やってるといろんな話が入ってくるからね…。それに、あれだけ大きな事件だもん。結構詳しいことまで情報入ってきてるよ。嘘か本当かはおいといてね。」……恐るべし商人のネットワーク…。
「それにしても主犯がまだ分かってないっていうのは結構怖いね…。」
「今のところ、アルが夏祭りに行くことを知ってた人物が怪しいんじゃないかって話だけど、僕たち以外でそれらしい人物はいないんだよね…。」
「そうなんだ…。え、それでソーン君が覚醒をしたのはやっぱり本当なの?」
「それも本当だよ。おかげで今いろんな研究機関をはしごしてるよ…。拘束時間長いくせにめちゃくちゃ退屈だからもう行きたくないんだよね…。」と、ソーン君が答える。心なしか少しげっそりして見える…。
「それで、アルのお兄ちゃんも大けが負ったけど、その時にソーン君が覚醒をして何とか回復したんだよね?逆にリュークさんは特に何もなかったの?」テオ君めちゃくちゃ詳しくないか…?情報網がすごすぎる…。ちょっと詳しすぎる気もするけど…。
「うん、そうだよ。アランさん僕の回復魔術が成功した瞬間から戦闘復帰してたよ。『あれ?虫に刺されたかな…。』みたいな顔して。リュークさんそれ見てちょっとドン引きしてた。」
「なんか、アランさんってそういうところあるよな…。」
「そうだ、リュークさんで思い出したんだけど、結局リュークさんってアルが目を覚ました日帰ったの?僕がいろんな人から話聞かれている間にいつのまにかいなくなってたけど。」
「うん…。う~ん、帰ったっていうよりも帰らされたっていうのが正しいかも…。リュークさん僕の体調が全回復するまでいる、って言ってたけど、なんでかお父さんもお母さんもお兄ちゃんも『お願いですから、かえってください。』って強めに言ってたし…。なんでだろう…?別にリュークさんみんなに悪いことしてなかったと思うのにな…。」
「なんでだろうね~。」……ソーン君その顔絶対になんでかを知ってるな…!
「………あのさ、改めて思うけど…護衛の人達、ちょっと邪魔ね……。」
唐突にリーンが聞こえるか微妙な声量でつぶやく。
誘拐事件後僕につくという警護は、僕のそばに2人、少し離れたところに3人の計5人という結果になった。最初こそ、15人雇うという話で決まりそうだったが、そこは僕がどうにかこうにか抵抗して何とか5人でおさめさせた。15人って多すぎない…!?この国の国王でさえ15人もSPさんをつけないっていうのに…。
5人に落ち着いたのはよかったのだが問題はその距離感で、特に近くにいる2人は数十年来の友達だったっけ?位の距離に常にいるから、なんというか…めちゃくちゃ気まずい…。
それでも一緒にお話とかできればちょっとは空気も楽になるかもしれないけど、常に無表情で僕が話しかけても最低限の返事しかせず(人によっては返事もない)ずっとこの調子だから、僕も近頃は歩み寄ることを諦め始めている。
あと、これは僕の偏見なのだけれども、全員足が速そう…。
「そういえば、アランさんは今どこにいるの?」しばらくぶりのテオ君が聞いてくる。この夏休みの間に声変りが始まったのか少し声が低く感じる。
「今は、生徒会長の仕事中だよ。なんだか色々と忙しいみたい…。」
「そうなんだ…。」
「アランさんさ、なんだか最近ちょっと過保護に拍車かかっちゃったよね…。」
「やっぱりそうだよね!さっきだってここに来る前……」
そう言って僕はここに来るまでの出来事を思い返す。
「…いいか、アル。絶対に知らない人についていっちゃダメだぞ。」
「うん、分かった。」
「何かあったら大きな声で叫ぶ。もしくは防犯用のブザーを鳴らす。」
「分かった。」
「絶対に皆のそば離れてどこかに行かない。」
「分かった。……分かったから、一旦抱きしめるのやめない?めっちゃ見られてるんだけど…。あと、ちょっと苦しい…。」
「あ、そうか…。」そこでようやく護衛の存在に気付いたのかハグをやめた。
「でもな…」その代わり僕のほっぺを両手で包み込み始めた。…大丈夫?これ、僕すごくぶさいくになってない?
「でもな、本当に心配してるんだ…。いくらセキュリティに優れた学園だからといってまたあんなことが起こらないとも限らない。気を付けるんだよ。」
「ふん、わはっは。(うん、わかった。)」
「変なところに行かないこと。あと、変な虫にも注意すること。付きまとわれてもだめだし、ついて行ったら絶対にダメだからな!」
「むひっへ…?(むしって…?)」
「とにかく、気をつけること!!わかった?」
「わはっはっへ。(わかったって。)」
「よし、じゃあ行ってらっしゃい。…こいつのことよろしくお願いします。」
お兄ちゃんは最後護衛の人にあいさつをしてようやく僕のほっぺを解放した。
「…みたいなことがあって、これが今日だけならまだしも学校始まってから毎日なんだよ…。」
「それは、なかなか大変だな…。」
「でしょ~?お兄ちゃんだけじゃなくてお父さんとお母さんもそんな感じなんだよ…。毎日のように手紙が来るし…。まぁ、誘拐事件があったから仕方ないっていうのは分かるんだけどね…。」
「あのさ、聞いてもいいものか分からなくてもやもやしてたんだけど、思い切って聞いちゃうね。やっぱり誘拐された公爵の子息ってアルのことなの?」
「そうだよ。」
「あぁ、そうなんだ…。え、主犯がまだ判明していないっていうのは本当なの?」
「うん、本当だけど…、よく知ってるね…。」
「まぁね、商人やってるといろんな話が入ってくるからね…。それに、あれだけ大きな事件だもん。結構詳しいことまで情報入ってきてるよ。嘘か本当かはおいといてね。」……恐るべし商人のネットワーク…。
「それにしても主犯がまだ分かってないっていうのは結構怖いね…。」
「今のところ、アルが夏祭りに行くことを知ってた人物が怪しいんじゃないかって話だけど、僕たち以外でそれらしい人物はいないんだよね…。」
「そうなんだ…。え、それでソーン君が覚醒をしたのはやっぱり本当なの?」
「それも本当だよ。おかげで今いろんな研究機関をはしごしてるよ…。拘束時間長いくせにめちゃくちゃ退屈だからもう行きたくないんだよね…。」と、ソーン君が答える。心なしか少しげっそりして見える…。
「それで、アルのお兄ちゃんも大けが負ったけど、その時にソーン君が覚醒をして何とか回復したんだよね?逆にリュークさんは特に何もなかったの?」テオ君めちゃくちゃ詳しくないか…?情報網がすごすぎる…。ちょっと詳しすぎる気もするけど…。
「うん、そうだよ。アランさん僕の回復魔術が成功した瞬間から戦闘復帰してたよ。『あれ?虫に刺されたかな…。』みたいな顔して。リュークさんそれ見てちょっとドン引きしてた。」
「なんか、アランさんってそういうところあるよな…。」
「そうだ、リュークさんで思い出したんだけど、結局リュークさんってアルが目を覚ました日帰ったの?僕がいろんな人から話聞かれている間にいつのまにかいなくなってたけど。」
「うん…。う~ん、帰ったっていうよりも帰らされたっていうのが正しいかも…。リュークさん僕の体調が全回復するまでいる、って言ってたけど、なんでかお父さんもお母さんもお兄ちゃんも『お願いですから、かえってください。』って強めに言ってたし…。なんでだろう…?別にリュークさんみんなに悪いことしてなかったと思うのにな…。」
「なんでだろうね~。」……ソーン君その顔絶対になんでかを知ってるな…!
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