君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「泊めてくれてありがとうね…。」
「全然!全然!お母さんも夏休み終わるまで居ていいって言ってたし、どうせならってことでシンとリーンも泊まりに来るし、賑やかになって僕はむしろ嬉しいよ!!」


 誘拐事件が無事に終わっても、公爵の子息が誘拐されたことと、光属性を扱う人が覚醒を果たしたということで、色々な人が入れ替わり立ち代わり事情を聴きに来たりと、落ち着かない日々が続いていた。
 その影響でソーン君はここ数日僕の家に泊まっている。



「あれ、今日ってシャーマール先生とエドガー先生が来る日なんだっけ?」
「うん、そう。そのはず。てか、何回も言ってるけどフォルスト先生だからね。」
「あ、そうだった…。もう癖になってるんだよね…。」


 そんなことを話していると、部屋のドアがノックされた。

「入るぞー。」
「失礼します。」

 部屋の主の許可なくずかずかと入ってきたのは、まさにシャーマール先生とエドガー先生だった。
 先生自身がこんな感じなのだから、シャーマール先生はしばらく許してほしい…。

「お、ちょうど2人いるのか手間が省ける!」
「うんうん、2人とも元気そうだけど一応体調見るね~。うん…うん、……よし!問題なし!魔力の流れも……おかしいところはないけれど、ソーン君すごいね覚醒したらそんなに変わるもんなんだ…。」
「なんというか、滾ってるな…。」

 僕は先生達と違って人の魔力の流れとか視ることはできないけど、それでも以前のソーン君とは何かが違っていると感じる程だ。

「あ、でもソーン君もだけど、アルス君も流れがちょっと変わった…?」
「え、本当ですか?僕自身は全然分からないんでけど…。」
「あんなことがあったばかりなんだから魔力も多少乱れるだろ…。」
「それも、そっか。…ところでさ、ソーン君覚醒してから何ができるようになった聞いてもいい?」
「えぇーっと…まだ全部は分かってないんですけど、今のところどんな傷や病気でも治すことができる、防御についても街一つくらいなら軽くバリアを張ることができる、あとはー…、制御できなくなった魔術を中和して落ち着かせることができる、回復の魔術を他人に付与することができる、とかですかね…?」
「ほうほう、素晴らしいじゃないか…!!ということは攻撃系というよりも回復とか防御とかそっちのほうに特化した形なんだな…。」
「魔術の中和と付与…。魔術が一度暴走して制御が利かなくなると、何を施しても無駄で体が暴走した魔術に耐え切れなくなって最悪死ぬこともあるし、魔術付与もたくさんの人の希望になるだろうし…重要な魔術だね…。治癒といい、中和といい、なんだか聞いてた感じ物語に出てくる聖女様みたいだね。」
「まぁ、聖女様のモデルは覚醒を果たした人だったかもしれないていう説が出ているくらいだからな…。」

 そんな話歴史の授業で聞いたような気がするな…。
 ちら、と隣にいるソーン君を見る。
 …確かに、覚醒をしたからなのか、美しさに磨きがかかったような気がしないでもないかも…。


「ところで、先生方お二人って夏休みどう過ごされてたんですか?」さっきまでお菓子を頬張っていたソーン君が聞く。
「夏休み…あぁ、今の期間のことか…。…俺はずっと研究に没頭してたな…。」
「僕は、この人がずっとこんな感じだったから身の回りのお世話してたよ。目を離すとすぐに部屋は地獄絵図になるし、何も飲み食いせずに研究に専念するから、片付けと食事作りばかりしてたかも…。」
「そ、そんなことわざわざこんなところで言わなくてもいいじゃないか…!!」
「だって、本当のことなんだもん~!あ、でも一回夏祭りに行ったかな?気分転換とかもかねて。」
「あぁ、行ったな。あれは確かにいい気分転換になった。」
「へぇ~なにしたんですか?」
「えぇ~なにしたっけな~?」
「色々しただろ。屋台に出てるご飯食べたり、お化け屋敷みたいなのに入ったり、踊っている人たち眺めてたり…。あとは…、あぁ指輪みたいなの買ってなかったっけ…?」
「うん、買った。お揃いで買ったじゃん。」
「くらいだな…。あとは、ずーっと研究ばかりしてたな。」

 へぇ~先生達結構夏祭り満喫してたんだ…。しかも、指輪ってあの指輪のことだよね…。…買ったんだ…。しかもおそろいで…。



「あ、そうだ。ちなみに、心を読む研究ってどこまで進んでるんですか…?」ソーン君がいかにも興味津々といった表情で先生に聞く。
 …あれ、ソーン君ってシャーマール先生がどんな研究してるのか知ってるだっけ…?
「あぁ、現段階だと読心術の方法とか理論はある程度確立していってるが、あくまでも仲の良い人に対してのもののみでな…。まったく初対面の人だとか、微妙な関係性の人とはどうなのかとかまだまだデータが少なくて困っている状態なんだ。」
「シャーマール、人見知りすぎて初対面の人と思うように話せないからね~。」
「う、うるさいな…!」

 にやにやした顔のエドガー先生を真っ赤な顔をしたシャーマール先生が小突く。

「とにかく、今はいろんな人とのデータが欲しい段階なんだ。君たちにも、落ち着いたらになるが実験を依頼するかもしれない。大丈夫そうか?」
「もちろんです!」
「大丈夫に決まってますよ!」


 それにしてもあの実験、もうそんなところまで進んでいるのか…。

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