君の瞳は月夜に輝く

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リュークの独り言



 すべてのカーテンが閉め切られた真っ暗な部屋の中。時折もれる苦しそうな声。寝返りを打つたびにするシーツのすれる音。”呪い”がもたらす異様な雰囲気に居心地の悪さを覚える。


 ベッドの隣に置かれた椅子に座り、額に手を当てる。……熱が下がらないな。





 …それにしても、アルスを誘拐した犯人とは一体……?


 捕まえた犯人を拷問にかけても、素性どころか誘拐の目的すらもわからない始末。あの感じからして、かなり訓練された奴らに違いないが、一体誰の刺客なんだ…。それに、アルスがいつも身に着けていた防犯用ペンダントの魔術が発動しなかったのも引っかかる…。この国で一番のシューベルト家の魔術力を抑え込めるほどの人物、この国の人じゃないとすると…。


 なにか、頭の奥底で答えが出かかったような気がしたとき、アルスがうなり声をあげて寝返りをうつ。







 今は何時だ。遠くのほうで花火の破裂音が聞こえるから、夏祭りも終盤なのだろう。

 一応、今日が新月なのを確認して、カーテンをあける。遠くの王都がある辺りで鮮やかな花火が打ちあがっているのが見える。これを見るのを楽しみにしてただろうに、こんなことになってしまって…。
 振り返ってアルスの方を見る。ふと、左手に自分のつけているものと同じ指輪がはめられているのに気づく。
 …そうか、お前があの時共鳴の手助けをしてくれたのかもな…。






 共鳴、




 俺とアルスは恐らく共鳴関係にある。


 気付いたきっかけは”気絶”だ。今まで魔術を発動した際にそれに当てられる人はいたが、近づいただけで気絶をする人は初めてだった。それだけでなく、なにもせずともアルスがどこにいるのか不思議と分かったし、会った後は不思議といつも以上の魔力を扱うことができていた。この症状にあてはまるものは何か、家にある書物を読み漁り調べ、共鳴という仮説にたどり着いた。


 おそらく、アルスは何かしらの属性魔術を扱えて、それが俺のと無意識のうちに強く反応している。アルスの属性魔術について、闘技会でのアレを見るにあながち間違っていないだろう。ただ、俺の魔力が強すぎるあまりアルスが耐え切れず気絶をしている。そう考えて、俺は新月や満月の日が来るたびにアルスに魔力を流していた。

 俺の思惑通り近づいても気絶することはなくなり、なぜか呪いの症状も軽くなったらしい…。そればかりでなく、回数を重ねるごとに流す魔力量を増やしており、今ではかなりの量を流している。そこで、一つの新しい疑問が浮かぶ。あれだけの量を流しても体調を崩すことなくアルスは順応している。ということは、キャパシティ的にアルスには平均以上の魔力を扱える能力を持っているはずだ。それなのに、なぜ今まで属性はおろか、魔術もそんなに使えないとされていたのか。そもそも、なんで扱える魔力量に比べて、保有分が極端に少ないのか。
 共鳴について、一応アランにも新入生歓迎会の時に話したが、そこがうまく説明できずあいまいな言い方になってしまった。




 ベッドに近づきもう一度アルスの額に手を当てる。先ほどに比べて呼吸は落ち着いているが、依然熱が高い。



 ……そういえば、ルーナ=シューベルトも共鳴関係を持っていたという話を聞いたことがあったな…。君は一体どれだけ彼女と似ていれば気が済むんだ…。

「アルス、シューベルト……。」
 何の気なしにその名を呼んでみる。当然のごとく返ってこない返事に気まずさを感じ、ごまかすように頭をかく。


 今日は新月。指輪のはめられた左手を握り、いつものように魔力を流す。
 はやく元気になるように祈りを込めて。











 …それにしても、ソーンのやつ「なんで、あなたじゃないんですか?なんでシナリオ通りじゃないんだ!?」って言ってたけど、どういう意味なんだ…?
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