79 / 104
幕開け
75
しおりを挟む
「おい!!てめぇどこに目ぇつけてやがんだ!!」
「あぁ??お前こそ!よそ見して歩いてんじゃねぇよ!!!」
にぎわっている大通りに突如、怒号が飛び交う。
「ケンカ…?」
「どうしたんだろう?」
何が起きたのかを見ようと、たくさんの人だかりができ始める。
僕もみんなと同じく様子をうかがおうと背伸びをしたところで、急に強く腕を掴まれる。
一瞬、お兄ちゃんがまた自分の背中に僕をまわそうとしたのかと思ったが、口に布のようなものをあてがわれたところで違うことに気づく。
遠ざかるみんなに助けを求める間もなく目の前が真っ暗になっていく……。
「…ただのチンピラ同士の喧嘩みたいだね…。」
「ちょっとびっくりした…。」
「乱闘始めるのかと思った…。」
「ねぇ。途中でほかの人たちが止めてくれたからよかったものの…。アルも大丈夫だっ、た…?」
「え、アル…?」
「どこに行った…?」
ソーンside
人目も憚らず泣き崩れているアルの両親。しきりに大声でアルの名前を呼ぶアランさん。ふらふらと覚束ない足取りでアルを探すシンとリーン。
…どうして、こうなった!?
だって、だって誘拐されるのは僕のはずでしょ!!アルスに指示されたやつらに誘拐されるのは、僕だったでしょ!!だからこそ!!そもそも、アルと仲良くなった今回はそんなの起きないはずなのに!?”夏祭り誘拐事件”自体起こりうるはずがないのに…!!なんで、よりにもよってアルが…。本来辿るべき道を行っていない弊害か…?全く別の方向に進んじゃったからか!?
……あぁっ!くそっ!!!僕が歴史を変えたばっかりに、アルが…!!ど、どうすれば、どうすればいいっ…!?今までと違って決まりきった未来が来る確証はないし…、僕の時みたいに犯人が手掛かりを落としたわけでもない…。誘拐した犯人も分からなければ目的すらも分からない…。絶望的なほどに詰んでる…。考えろ、考えろ…。
親指につけられた指輪をつ、となでる。
…僕がまいた種だ僕がどうにかしないと…!!
……弊害…。弊害か…。もし、本来のシナリオ通りに戻そうとしている強制力みたいなのが働いているならば…?
リュークさんだ…。リュークさんならどこにいるか分かるはず…!
「アランさん!!リュークさんを呼んでください!!」
その瞬間突然目の前に黒い物体が、ぬっ、と現れた。
「ここにいる!!どうした、アルスに何かあったんだろう!?あいつはいまどこに…!!」
「お前、共鳴してるんだろ!!わかるんじゃないのか!?」すごい剣幕でリュークさんの胸倉を掴むアランさん。
「魔術が遮断されているし、そもそもアルスが意識を失ってるからか全然分からない…。」
「くそっ…。」
場所が、分からない...?なんで、僕の時は使えてたじゃないか...。
...どうしよう…どうしよう!!考えろ…。
……もし、もし仮に、変な強制力が働いていて、アルが僕と同じルートを辿っているとしたら…?僕が誘拐されていた場所にアルも誘拐されていたとしたら…?確証なんてない、けど賭けてみる価値はある。
きっと、アルがいる場所は…!
「「港横の倉庫…?」」
「はい、あそこなら王都から比較的近いくせに、夏祭りが開催されている今、警備はかなり手薄です。それに海に面しているから、逃走ルートも確保しやすい。」
「港横の倉庫…!?」となりから悲痛な叫び声が上がる。
「そこって…。」振り返ると、僕の話を聞いていたアルの両親が絶望の色を顔に浮かべていた。
「昔アルが誘拐されたとこ…?」アランさんも驚きの表情を浮かべ言う。
「可能性としてはなくは、ない。前回も見つけるのに時間がかかったから…。だとしたら、犯人は前の同じ奴らってことか…?」
「それは分かりません…。けどアルがいる確率は高いと思います。早くいきましょう!」
「分かった!が、仮にそうだとして今この何も手掛かりがない中で決めつけるのは悪手だ。そこには俺が行くからあとの奴らは他に人が少ない建物をあたれ。」
「まて、リュークお前ひとりじゃ危険だ。俺も着いていく一回アルを助けに行った場所だから、大体の構造も分かる。」
「ぼ、僕も行きます!!」
「だめだ!お前には危険すぎる。ここで待機しろ!」
「なんで!?僕だってアルを助けに行きたい!それに僕は回復が得意だから二人がけがをしたらすぐに治せる!!」アルが誘拐されたのは紛れもなく僕のせいだ。だからここは引き下がれない…!
「……分かった。ただし危険な行動はとるなよ。俺たちの言うことは絶対に聞け。」
「分かりました!あ、あと、リュークさんこれ。」そう言って僕は親指にはまっていた指輪をリュークさんに渡す。
「アルとお揃いの指輪です。すこしでも共鳴の足しになれば…。」
「ありがとう…。でもいいのか、お前のだろ?」
「大丈夫です。実はもう1セットあるんです。」そう言って僕はポケットの中に入れていた指輪の入っている箱を出す。
「わ、分かった…。」そう言いながらリュークさんは指輪をはめる。
「…それに、それは初めからあなたものものですから。」
「あぁ??お前こそ!よそ見して歩いてんじゃねぇよ!!!」
にぎわっている大通りに突如、怒号が飛び交う。
「ケンカ…?」
「どうしたんだろう?」
何が起きたのかを見ようと、たくさんの人だかりができ始める。
僕もみんなと同じく様子をうかがおうと背伸びをしたところで、急に強く腕を掴まれる。
一瞬、お兄ちゃんがまた自分の背中に僕をまわそうとしたのかと思ったが、口に布のようなものをあてがわれたところで違うことに気づく。
遠ざかるみんなに助けを求める間もなく目の前が真っ暗になっていく……。
「…ただのチンピラ同士の喧嘩みたいだね…。」
「ちょっとびっくりした…。」
「乱闘始めるのかと思った…。」
「ねぇ。途中でほかの人たちが止めてくれたからよかったものの…。アルも大丈夫だっ、た…?」
「え、アル…?」
「どこに行った…?」
ソーンside
人目も憚らず泣き崩れているアルの両親。しきりに大声でアルの名前を呼ぶアランさん。ふらふらと覚束ない足取りでアルを探すシンとリーン。
…どうして、こうなった!?
だって、だって誘拐されるのは僕のはずでしょ!!アルスに指示されたやつらに誘拐されるのは、僕だったでしょ!!だからこそ!!そもそも、アルと仲良くなった今回はそんなの起きないはずなのに!?”夏祭り誘拐事件”自体起こりうるはずがないのに…!!なんで、よりにもよってアルが…。本来辿るべき道を行っていない弊害か…?全く別の方向に進んじゃったからか!?
……あぁっ!くそっ!!!僕が歴史を変えたばっかりに、アルが…!!ど、どうすれば、どうすればいいっ…!?今までと違って決まりきった未来が来る確証はないし…、僕の時みたいに犯人が手掛かりを落としたわけでもない…。誘拐した犯人も分からなければ目的すらも分からない…。絶望的なほどに詰んでる…。考えろ、考えろ…。
親指につけられた指輪をつ、となでる。
…僕がまいた種だ僕がどうにかしないと…!!
……弊害…。弊害か…。もし、本来のシナリオ通りに戻そうとしている強制力みたいなのが働いているならば…?
リュークさんだ…。リュークさんならどこにいるか分かるはず…!
「アランさん!!リュークさんを呼んでください!!」
その瞬間突然目の前に黒い物体が、ぬっ、と現れた。
「ここにいる!!どうした、アルスに何かあったんだろう!?あいつはいまどこに…!!」
「お前、共鳴してるんだろ!!わかるんじゃないのか!?」すごい剣幕でリュークさんの胸倉を掴むアランさん。
「魔術が遮断されているし、そもそもアルスが意識を失ってるからか全然分からない…。」
「くそっ…。」
場所が、分からない...?なんで、僕の時は使えてたじゃないか...。
...どうしよう…どうしよう!!考えろ…。
……もし、もし仮に、変な強制力が働いていて、アルが僕と同じルートを辿っているとしたら…?僕が誘拐されていた場所にアルも誘拐されていたとしたら…?確証なんてない、けど賭けてみる価値はある。
きっと、アルがいる場所は…!
「「港横の倉庫…?」」
「はい、あそこなら王都から比較的近いくせに、夏祭りが開催されている今、警備はかなり手薄です。それに海に面しているから、逃走ルートも確保しやすい。」
「港横の倉庫…!?」となりから悲痛な叫び声が上がる。
「そこって…。」振り返ると、僕の話を聞いていたアルの両親が絶望の色を顔に浮かべていた。
「昔アルが誘拐されたとこ…?」アランさんも驚きの表情を浮かべ言う。
「可能性としてはなくは、ない。前回も見つけるのに時間がかかったから…。だとしたら、犯人は前の同じ奴らってことか…?」
「それは分かりません…。けどアルがいる確率は高いと思います。早くいきましょう!」
「分かった!が、仮にそうだとして今この何も手掛かりがない中で決めつけるのは悪手だ。そこには俺が行くからあとの奴らは他に人が少ない建物をあたれ。」
「まて、リュークお前ひとりじゃ危険だ。俺も着いていく一回アルを助けに行った場所だから、大体の構造も分かる。」
「ぼ、僕も行きます!!」
「だめだ!お前には危険すぎる。ここで待機しろ!」
「なんで!?僕だってアルを助けに行きたい!それに僕は回復が得意だから二人がけがをしたらすぐに治せる!!」アルが誘拐されたのは紛れもなく僕のせいだ。だからここは引き下がれない…!
「……分かった。ただし危険な行動はとるなよ。俺たちの言うことは絶対に聞け。」
「分かりました!あ、あと、リュークさんこれ。」そう言って僕は親指にはまっていた指輪をリュークさんに渡す。
「アルとお揃いの指輪です。すこしでも共鳴の足しになれば…。」
「ありがとう…。でもいいのか、お前のだろ?」
「大丈夫です。実はもう1セットあるんです。」そう言って僕はポケットの中に入れていた指輪の入っている箱を出す。
「わ、分かった…。」そう言いながらリュークさんは指輪をはめる。
「…それに、それは初めからあなたものものですから。」
0
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。

嫌われ者の僕
みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。
※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる