君の瞳は月夜に輝く

文字の大きさ
上 下
77 / 104
幕開け

73

しおりを挟む
 待ちに待った王都の夏祭り! 

 鮮やかに彩られた食べ物、おいしそうな匂いを漂わせる露店、派手なパフォーマンスで行きかう人々の目を引く大道芸人…。
 かつてない大盛況ぶりを目のあたりにして興奮が抑えきれない…!!
 






「リリーシュ殿下生誕の効果もあって、いつもよりかなり人が多いんだな。」忌々しげな表情を浮かべながら言うお兄ちゃん。
「特に最終日だから、店側も張り切ってるわね。さっきから呼び込む声がうるさいくらいだし…。」耳を塞ぎながらいうリーン。
「あ、あそこの焼き貝食べたい!!」露店を指さしながら言うソーン君。
「リンゴ飴おいしそう~!!」それにつられる僕。
「匂いがやばいな…。食欲そそられる…。」お腹をさすりながら言うシン。

 みんなと夏祭りに来れて僕、嬉しいな...!!!!!







 王都に着いたのが昼過ぎだったこともあり、みんな食べ物のことしか頭にない。

「おなか空いたわね。とりあえずあそこでご飯を食べよっか。」お母さんはそう言って少し大きめな食堂を指さした。


 鷲が彫られている木製の大きな扉を開けて中に入る。食堂の中も人があふれかえっていたが、何とかみんなが座れるようなスペースを見つけてメニュー表を開く。





「俺決めた!」
「僕も決まったよ。アルは何食べるの?」
「う~ん、僕こういうところ来たことなかったからな…。何がおすすめ?」初めて見るメニュー名の羅列にあたふたしてしまうな…。
「アルの好きそうなのだと…、このパスタとかかな…?チーズ入ってるけど、クセがないし食べやすいと思う!あと個人的なおすすめだと、このステーキかな…?ついてくるソースが美味しいんだよね…。」
「じゃあ、こっちのパスタにしよっかな…。いやでも、ステーキも美味しそうなんだよね…。……これ、決められないよ~!」










「…と、それから黄金鳥のから揚げ、マル牛のステーキ、あとはこの上に書かれている二つのピザをお願いします。あ、以上で。」
 ようやくみんな分の食事が決まり、店員さんにオーダーを伝える。お兄ちゃんがまとめて言ってくれたんだけど、なんであの量のオーダーをメニュー表なしで言えるんだろう…。あまりの多さに店員さんの顔若干ひきつってたよ…。





 オーダーを無事済ませ、水を一口飲んだとこで、ふと店内を見てみる。
 すると、恋人同士と思しき人たちが同じような指輪をしていることに気づく。

「あの指輪なんだろう?みんな同じようなのしてるけど、流行りなのかな…?」
「あぁ。あれは夏祭り限定のカップルリングね。夏祭りに来たカップルはこぞって買うくらい定番商品なのよ。」
「ふ~ん。じゃあ恋人同士だけが記念品に買ってくものなんだね。」
「それもあるんだけど…。実はこの夏まつりには気になっている人と一緒に最後の花火を見るとその恋が成就するっていうジンクスがあるの!!そこにプラスしてこの指輪をつけてると、その恋が永遠の愛に変わるっていう噂もあるの!!ロマンチックじゃない!?だからカップルだけじゃなくて、これから告白するぞ!っていう人たちも自分を励ますために買うのよ!!素敵じゃない!?」
 え~何そのジンクス!!めっちゃいいじゃん!!え、どうしよう…。僕も一応指輪とか買ってたほうがいいのかな…?


「…ジンクスだとか指輪だとか、祭りの運営が集客のために流した噂だろ?馬鹿みてぇ…。」
「え、シン…?」
「みんながみんな、永遠の愛になるわけないのにな。そのうち破局する人たちだってたくさんいるだろうに…。」
「え、え、お、お兄ちゃん…?」びっくりした、すっごい否定するじゃん…。



「何なのよこの男どもは!?全然ロマンチックじゃない!!!!!!!!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

王道学園と、平凡と見せかけた非凡

壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。 そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。 風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。 基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?! ◆pixivでも投稿してます。 ◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

処理中です...