74 / 104
幕開け
70
しおりを挟む
あの時、目が合って、それで…それで………。
闘技会も無事終わって、しばらく経つけれど、僕の心は依然闘技会から抜け出せていなかった。
え、あの時、笑ってた…?リュークさんって笑うの?なんかこう…、勝手なイメージだけど、ずっと無表情だったから表情筋固まってるのかなって思ってた…。えぇ、どうしよう…。なんだかあのリュークさんが笑った顔が頭から離れない…。
……ダメダメダメ!宿題に集中しないと!!たくさん出されてるのに一つも手を付けれてないじゃないか!
ちらと、机の横に積み重ねられている大量の宿題を見てため息をつく。
………気分転換に違う部屋で始めるか…。
違う部屋に行っている道中もリュークさんのことを考えてしまっている。
あの時、笑ったのって、僕の見間違いとかじゃないよね…。『負けちゃう…。』って思って、大声出したら、こう…目が合って…。『リュークさん、笑ったなー。』と思ったら、なんかビリ!!って電流みたいなのが全身に流れて…。というか、リュークさんってあんなに魔術すごかったんだ…。お兄ちゃんから聞いてた話と全然違うな…。
「やぁ、アルス君。」
「あ、どうも。」
なんか、だれよりもすごかったよな…。そもそもあんな魔術見たことなかったし…。やっぱりリュークさんほどになると、自分で魔術とか生み出しちゃうのかな…。そこからの巻き返しもすごかったし、かっこよかったな…。
……ん…。待てよ…。今のって…。
僕は振り返ってさっきすれ違った人物を確認する。
やっぱり!!カルロ殿下だった!!え、どうしよう。なんとなくで挨拶しちゃったけど、引き返して挨拶しなおしたほうがいいのかな…?え、歩くスピード速!!ちょ、追いつけないって!!
…あれ、殿下が歩いていく方向…。お兄ちゃんに用事かな…?
カルロside
「そういえば、さっきアルス君にすれ違ったけど、何か難しい顔してたよ。」
「あぁ、闘技会終わってからずっとあんな感じなんですよ。」
「もしかして、リューク=シャンブルクのせいかな?」
「…。」無言で目の前の紅茶をすするアラン。
「だって、あの顔すごく分かりやすかったもんね。みんなが試合に夢中で助かったね。」
「…。」だんだんと顔が険しくなっていくアラン。ほんと、アルス君のこと大好きだよね…。
「…さてと、さっさと本題に入るか…。」僕は城を出る前に受け取った手紙を机に置く。その手紙を見たアランの顔がさらに険しくなる。
「…結局、招待がかかってしまった。もちろんアルス君も。すまない…。」
「いえ、今回ばかりは例外は適応されませんから…。しかし……。」
「もちろん、こちらとしてもかなりの準備をするつもりでいる。アルス君が王宮にいる間は城の誰よりも警備をつけるつもりだし、君たち一家がいる間はリリーシュにも見張りをつける予定だ…。」
「そうですか…。」それでも、どこか心配をしている様子のアラン。
すまない、あんなのが兄で…。
どうしてアランがこんなにもリリーシュのことを警戒しているのか。もちろん大きな理由はリリーシュがアルス君を部屋に閉じ込めようとしたことなんだろうけど、僕の影響も少しはあるんだろうなって感じる。会話の節々から。
なんで僕が、いや僕たちがリリーシュのことを苦手としているのか…。
それは小さなころ彼から悪質ないじめを受けていたからだ。暴力・暴言はもちろんのこと、いわれのない噂を広められ人間関係をめちゃくちゃにされた。
おかげで、人間不信に陥った僕と姉のソフィアは海外への留学を行かざるを得ず、未だにリリーシュに強い嫌悪感を抱いている姉は帰ってこれずにいる。
ただ、不思議なことに兄がアルス君と初めて会った日からピタリといじめが止んだ。不気味なくらい、急に。そればかりか、王位継承者にふさわしい行動をするようになった。それまで、荒れに荒れていた素行を正し、国民のお手本になるべく精進し、分け隔てなく人々にやさしく接するようになった。
あまりにもの献身ぶりに、最初は懐疑的だった周りの人も、彼のことを聖人君主だと崇めるようにまでなった。
いくらあいつが改心して、王にふさわしい人間になったとしても、僕らの幼少期をめちゃくちゃにした事実は変わらない。なのに、そんな過去などなかったかのように人格者ぶっているのがすごく気持ち悪い。あの笑顔の下には黒くドロドロとしたものが隠れていることを僕らは忘れてない。
僕は少しでも安心させるようにと、依然として眉間にしわを寄せているアランの手を握る。
君をそんな顔にさせるあいつの弟だという事実が憎いよ…。
闘技会も無事終わって、しばらく経つけれど、僕の心は依然闘技会から抜け出せていなかった。
え、あの時、笑ってた…?リュークさんって笑うの?なんかこう…、勝手なイメージだけど、ずっと無表情だったから表情筋固まってるのかなって思ってた…。えぇ、どうしよう…。なんだかあのリュークさんが笑った顔が頭から離れない…。
……ダメダメダメ!宿題に集中しないと!!たくさん出されてるのに一つも手を付けれてないじゃないか!
ちらと、机の横に積み重ねられている大量の宿題を見てため息をつく。
………気分転換に違う部屋で始めるか…。
違う部屋に行っている道中もリュークさんのことを考えてしまっている。
あの時、笑ったのって、僕の見間違いとかじゃないよね…。『負けちゃう…。』って思って、大声出したら、こう…目が合って…。『リュークさん、笑ったなー。』と思ったら、なんかビリ!!って電流みたいなのが全身に流れて…。というか、リュークさんってあんなに魔術すごかったんだ…。お兄ちゃんから聞いてた話と全然違うな…。
「やぁ、アルス君。」
「あ、どうも。」
なんか、だれよりもすごかったよな…。そもそもあんな魔術見たことなかったし…。やっぱりリュークさんほどになると、自分で魔術とか生み出しちゃうのかな…。そこからの巻き返しもすごかったし、かっこよかったな…。
……ん…。待てよ…。今のって…。
僕は振り返ってさっきすれ違った人物を確認する。
やっぱり!!カルロ殿下だった!!え、どうしよう。なんとなくで挨拶しちゃったけど、引き返して挨拶しなおしたほうがいいのかな…?え、歩くスピード速!!ちょ、追いつけないって!!
…あれ、殿下が歩いていく方向…。お兄ちゃんに用事かな…?
カルロside
「そういえば、さっきアルス君にすれ違ったけど、何か難しい顔してたよ。」
「あぁ、闘技会終わってからずっとあんな感じなんですよ。」
「もしかして、リューク=シャンブルクのせいかな?」
「…。」無言で目の前の紅茶をすするアラン。
「だって、あの顔すごく分かりやすかったもんね。みんなが試合に夢中で助かったね。」
「…。」だんだんと顔が険しくなっていくアラン。ほんと、アルス君のこと大好きだよね…。
「…さてと、さっさと本題に入るか…。」僕は城を出る前に受け取った手紙を机に置く。その手紙を見たアランの顔がさらに険しくなる。
「…結局、招待がかかってしまった。もちろんアルス君も。すまない…。」
「いえ、今回ばかりは例外は適応されませんから…。しかし……。」
「もちろん、こちらとしてもかなりの準備をするつもりでいる。アルス君が王宮にいる間は城の誰よりも警備をつけるつもりだし、君たち一家がいる間はリリーシュにも見張りをつける予定だ…。」
「そうですか…。」それでも、どこか心配をしている様子のアラン。
すまない、あんなのが兄で…。
どうしてアランがこんなにもリリーシュのことを警戒しているのか。もちろん大きな理由はリリーシュがアルス君を部屋に閉じ込めようとしたことなんだろうけど、僕の影響も少しはあるんだろうなって感じる。会話の節々から。
なんで僕が、いや僕たちがリリーシュのことを苦手としているのか…。
それは小さなころ彼から悪質ないじめを受けていたからだ。暴力・暴言はもちろんのこと、いわれのない噂を広められ人間関係をめちゃくちゃにされた。
おかげで、人間不信に陥った僕と姉のソフィアは海外への留学を行かざるを得ず、未だにリリーシュに強い嫌悪感を抱いている姉は帰ってこれずにいる。
ただ、不思議なことに兄がアルス君と初めて会った日からピタリといじめが止んだ。不気味なくらい、急に。そればかりか、王位継承者にふさわしい行動をするようになった。それまで、荒れに荒れていた素行を正し、国民のお手本になるべく精進し、分け隔てなく人々にやさしく接するようになった。
あまりにもの献身ぶりに、最初は懐疑的だった周りの人も、彼のことを聖人君主だと崇めるようにまでなった。
いくらあいつが改心して、王にふさわしい人間になったとしても、僕らの幼少期をめちゃくちゃにした事実は変わらない。なのに、そんな過去などなかったかのように人格者ぶっているのがすごく気持ち悪い。あの笑顔の下には黒くドロドロとしたものが隠れていることを僕らは忘れてない。
僕は少しでも安心させるようにと、依然として眉間にしわを寄せているアランの手を握る。
君をそんな顔にさせるあいつの弟だという事実が憎いよ…。
0
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
王道学園と、平凡と見せかけた非凡
壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。
そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。
風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。
基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?!
◆pixivでも投稿してます。
◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる