君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「おーい!こっちこっち!!」
 観客席につき、僕たち3人が座れるような席がないか探していると、誰かからか声をかけられた。
「え、あれって…。」
「出たよ。噂の…。」
 4人分の席を陣取っていたメルロス殿下からだった。

 …なんで、こう、兄弟そろって王族専用の席に座らず、一般の観客席に座ってるんだろうか…。あたりを見渡すと、昨日も見たボディーガードさんたちがいた。…お疲れ様です…。


「なんか、この間よりも人が多くないか…。」あたりを見渡したシンがつぶやく。
「当たり前だろう。この最上級部門が一番盛り上がるからな。実力者ぞろいで、将来魔術師や騎士団で活躍するような有望なやつばかりが出場する。かなり見ごたえあるし、おそらくこの三日間で今日が一番観客が多いんじゃないか。」
「あれ、今日って誰が出るんでしたっけ。」…僕のお兄ちゃんが出るのは知ってるんだけど、あとは…?
「たしか、アルのお兄ちゃん、ロストさん、カルロ殿下じゃなかったかしら?やだ、こうしてみるとかなり眼福じゃない!?…あとは、前々回優勝した人と、これとは違う大会で優勝した人。このあたりが今回の優勝候補兼ハンデが課せられている人たちね。あら、結構強い人が出てるのね。」リーンが今日のトーナメント表を開きながら言う。相変わらず書いてあるのは出場番号だけで、名前は書かれていなかった。
「最上級部門の人たちは全部で17人…。ということは、ここもシード枠が一人いるのか…。」
 トーナメント表の端を見ると、一人だけ直線がいきなり決勝戦のほうに伸びていた。
「これがロストさんなのかな?」僕は測定テストでのロストさんを思い出しながら言う。
 あの時のインパクトと言ったら…。

「や、それは違うぞ。」一緒にトーナメント表をのぞき込んでいたメルロス殿下が言う。
「へ?」
「たしか、ロストは6番だと言っていた。」
「あれ、ということは、ロストさんよりもさらに強い人がいるってこと?」
「そうなるわね…。そんな人いるの?」
「……あ!ロストさんなんじゃねえの・ほら、エキシビジョンマッチ的な感じで。」
「そういえば、今までにもそういったことがあったな…。ゲストで来た人が実は最後の相手でした、みたいな。その時はエキシビジョンって書かれてあったけど。」
「じゃあ、やっぱりリカードさんなのかもしれない。」
「ロストさんよりも強いとなるとそうだよね…。でも、すごいよね。リカードさんと戦えるなんて。」

 リカードさんとロストさん…。どっちが勝つんだろう…。









 今大会の注目株とされている僕のお兄ちゃん、ロストさん、カルロ殿下の中で一番初めに戦ったのはカルロ殿下だった。

 対戦相手は前々回の優勝者で、かなりの実力の持ち主であった。カルロ殿下はそんな相手にさわやかに勝利をかっさらっていった。

 僕たちの隣で解説?をしてくれていたメルロス殿下曰く、カルロ殿下はパワーでは他より劣る面はあるが、メルロス殿下よりもセンスがあり技術や動きの引き出しが多いらしい。
 確かに、試合でもパワーでは対戦相手に圧倒されるところは多々あったけれど、カルロ殿下は相手の動きを見極めて攻撃ををよけ、タイミングを見計らいつつ攻撃をしていて確実に相手の体力を奪っていった。殿下の特別ルールとして魔術の使用回数が決められていたけれど、殿下の魔術を使うタイミングがかなり的確で、決められた使用回数よりも大幅に下回って試合を終わらせていた。それにカルロ殿下の火属性魔術は、教科書に出てこないような高等なものばかりで、魔術にあまり詳しくない僕でもカルロ殿下の魔術はかなり精度が高いことがわかる。


 ただ、こうして見ると同じ兄弟でも積極的に攻めていくメルロス殿下とここぞという時に重い一撃を喰らわすカルロ殿下とでかなり戦いのタイプが違うんだな…。



 続く試合はロストさんの初戦だった。測定テストでかなりのインパクトを残しただけあって、魔術を使ってはダメというハンデをものともせず勝利を決めていた。ロストさんはカルロ殿下と違って圧倒的なパワーを持っている。だから一つ一つの攻撃の重みが誰よりもあって、その衝撃がこちらにまで伝わってくるようだった。なんなら相手の魔術をパワーでねじ伏せてたもんね…。あの攻撃を僕が受けたらきっと全身の骨が折れちゃうな…。
 というか、魔術を使っている相手にシンプルな武術の強さで勝つのすごいな…。
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