君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「そうえばさ、お兄ちゃんカルロ殿下から夏祭りのこととか聞いてないの?」
「あぁ、特には聞いてないな…。あくまでも主役はリリーシュ殿下だし。カルロ殿下はあまり関与してないんじゃないかな…。」
「そっか…。でも、王都の夏祭り行ってみたいな。きっとすごいんだろうな…。」そう言いながら僕はこの間行った、ソーン君の地元のお祭りを思い出す。
 王都だもん。きっともっと豪華なんだろうな…。
「僕、最終日に行ってみたいな。」
「あぁ、花火があるからか?でも、花火は夜にあるんだぞ?」
「ふふん。それがね最終日の夜は新月なんだよ?だから、もしかしたら僕も花火を見れるかもしれないんだよ!」
「そうなのか?」
「うん。だって僕確認したもん、だから…」あれ?あの子…。
「ん?どうした、アル?」
「あ、ううん!何でもない。知り合い見つけたと思ったんだけど、見間違いだったみたい。」
「そうか。」
 気のせいかな…。さっきテオ君がいた気がしたんだけど。見失っちゃったみたい…。



 観客席に行き、上級部門の人たちの試合を見る。やっぱり上級と言われているだけあって、動きが洗練されている。というか、昨日の初級、中級部門の人たちに比べて、かなり見ごたえがあり、かなり勉強になるところがある。

「毎年思うんだが、やっぱりレベルが年々上がってるよな…。これで上級か…。」
「そうですよね…。今だって、剣持っている子の動きができる人戦場でもなかなかいないですよ。」
「まだ幼いから技術が伴ってないけど、センスがあるな…。」
「しかるべき場所で鍛錬を積めばもっと化けますね…。」


 えっと…。

 ………いつのまにカルロ殿下来たんだろう…。てっきりメルロス殿下の近くにずっといるもんだと思ってたんだけど…。なんで、ちゃっかりお兄ちゃんの隣に座ってるんだろう…。

 あれ、そういえばこのスタジアムって一応王族専用の席あるよね…。なんならここから真反対のところに見えるよね。なんでお兄ちゃんの隣に座ってるんだろう…。ボディーガードさんは…一応いるのか…。あぁ、よく見たらいっぱいいるわ…。え、なんだか落ち着かないの僕だけ…?
 いや、ボディーガードさんも結構そわそわしてるな…。

「そういえば、アルス君。」
「は、はい。なんでしょう…。」
「あ、いや。うちのメルロスがね今日はアルス君にかっこいい所見せるんだー!って朝からずっと言ってたんだよ。」
「そうなんですね…。」僕の先生だからかな?
「うん。だから応援してあげてね。」
「もちろんです!」



「次がメルロスの出番か…。」
 結構激しい攻防戦が行われた試合が終わり、次の番号の人が入場する。メルロス殿下だ。フィールドの中央まで出て、お互いに一礼をする。
 そういえば、こういう風にメルロス殿下の戦うところを見るのは初めてだな…。なんだか僕も緊張してきた…。

 旗の合図とともに試合が始まる。その瞬間メルロス殿下は対戦相手に向かって走っていった。
「…なるほど、メルロス殿下も距離を詰めて戦うタイプなんですね。」メルロス殿下の試合を見ているお兄ちゃんがつぶやく。
「まぁな。メルロスは体も比較的小柄だし、瞬発力が優れているから、どちらかというとああいう戦い方を好むな。」
「そういえば、メルロス殿下言ってましたよ。遠くの距離から魔術を使うと動きがばれてよけられてしまうから、あんまりしたくないって。」
「そうだよね…。そこはかつて僕も課題としてたところだよ。」
 その時、メルロス殿下が魔術を使い、ひときわ大きな音がフィールド上に響いた。
「メルロス殿下の戦い方は、相変わらず迫力がありますよね。」
 お兄ちゃんの言う通り、メルロス殿下の戦い方は結構派手で、見ているこっちのほうまでが興奮するような戦い方をしている。それに、楽しそうな表情を浮かべているからか、なんだか応援したくなっちゃう。

 再度、メルロス殿下がさっきのものよりも幾分か大きな音を立てながら火属性の魔術を使い、相手の降参を受けて試合終了となった。あまりにも音が大きすぎて、しばらくの間耳がキーンとなったけれども…。

「…迫力が、ありすぎますね…。殿下、今度は音を立てずに魔術を使う方法を教えたらいかがです。」
「……善処しよう…。」






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