君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「しょ、初戦はな、よかったけど…。その後がな…。でもほら初戦は本当にすごかったんだぞ。」
「お兄ちゃん、無理に慰めてくれなくていいよ…。」




 昨日の僕の初戦は相手の降参で、僕の勝利になった。けれど、そのあとは散々なものだった。

 あんなに長い間動いたのは初めてだったからか、2戦目以降は体力が持たず、その後の3位決定戦でも惨敗をしてしまった。でも、おかしいな…。本来ならもうちょっと動けると思ったし、あの時矢を使って以降変に力が抜けちゃってしばらく思うように動けなかったし…。そんなになるまで動いた覚えはないんだよな…。なんでだろ…。

 でも、やっぱり噂通り賞品は豪華で、1位の子には国内旅行券が与えられていた。そんな僕も一応4位ということで、有名武具店の商品券とお菓子の詰め合わせをもらった。あ、あと、試合の結果は会場のロビーに大きく貼られているらしい。すんごく恥ずかしいからやめてほしいんだけど…。


 とにかく、今日は闘技会2日目で、僕はメルロス殿下の応援をしに来ている。僕とお兄ちゃんはは殿下に挨拶をしようと控室に向かった。

「おぉ、来てくれたんだな。」
「メルロス殿下、カルロ殿下、おはようございます。今日は頑張ってくださいね。」
「ありがとうな。それにしても、アルス君~?昨日のアレは何だったんだい?」
「いや、殿下、あのですね…あれは…。」
「初戦で魔術を使えていたところまではよかったんだけど、そのあとがあれじゃあな…。」

 あれ、僕昨日も魔術使えてたんだ…。そりゃそっか、魔術なしで矢があんな威力出すはずないもんな…。

「殿下こそ部門、上級なんですね。てっきり超上級かと思ってました。」
「…まぁな…。本気を出さなかっただけだ…。ていうか、俺のメッセージ読んだか?」
「まさか矢筒の中にあるとは思ってなかったですよ。でも、とってもリラックスできました。ありがとうございます。」

 その時、ふと僕たちから少し離れたところでカルロ殿下と僕のお兄ちゃんとが何かをこそこそと話しているのに気づく。メルロス殿下も気づいたみたいで、二人して聞き耳を立ててみる。
「…リリーシュも来ているから、気を付けたほうがいいぞ。」
「ご忠告ありがとうございます。…そういえば、測定テストのときに鉢合わせましたよ。」
「あぁ、あれは本当に偶然らしい。へこんでいたけど、めちゃくちゃこ…。」

 後半のほうはよく聞こえなかったけど、なんとなくリリーシュ殿下の話をしていることは分かった。
「俺とお前の兄ちゃん、リリーシュのこと嫌いだよな。」
「そうみたいですね。でも、なんでなんでしょう?」
「さぁ、”オトナノジジョー”ってやつだろ。多分…。」
 オトナノジジョーか…。


 ちょうど話が終わったのか二人が戻ってくる。けど、お兄ちゃんもカルロ殿下も苦虫を噛み潰してるような顔をしているのが気になるな…。
「それでは、俺たちは観客席のほうに行きます。メルロス殿下、頑張ってくださいね。」
「え?あ、頑張ってください!」あ、もう行くの…?
「あぁ、来てくれてありがとうな。」
 ひらひらと手を振る殿下に会釈をして、僕たちは控室を後にした。
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