君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「ふぅ、疲れた…。」体を動かしすぎて火照った体を涼ませるべく人の輪から少し離れたベンチに座る。風が気持ちい…。



「よ、めちゃくちゃ踊ってたじゃん。初めてって聞いてたけど、そんな感じしなかったぜ。」よっこいしょ、と言いながら僕に隣に座るクラウス君。
「初めてなはずなんだけど…ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな…。」
「いいや、そんなことないよ。むしろソーンの連れてきた友達が君達みたいな人で安心したよ。」そう言ってクラウス君はどこか遠くを見つめる。視線の先をたどると、シンやリーンと楽しそうに踊るソーン君がいた。

「ソーン君って、どういう子だったの?」僕はここでのソーン君を知るべく聞いてみた。
「そうだな…。一言で言うなら天使の生まれ変わり、かな…。」
「天使の、生まれ変わり…。」
「そう。まぁ、町のみんながそう言ってたってだけなんだけどな。ほら、あのエンジェルフェイスに加えて魔術も使えるんだろ?よくいろんな人のケガとか治してたからそう言われてたんだよ。」
「あ~、分かる気がする。天使の生まれ変わりか…。言いえて妙だね。」
「外面だけな…。……ここだけの話あいつ実は結構腹黒いから。」
「え、そうなの!?」腹黒いっていうのが実際どういうのか分からないけどとりあえず反応してみる。
「うん、ここだけの話な。」人差し指を口に当てながら言うクラウス君。…帰ったら『腹黒い』って意味調べてみよ…。


「まぁ、でもほんとによかったよ。アルス君みたいな人が友達で。ソーンが遠くの学校に行くって聞いたときはやっぱりそれなりに心配してたんだ。あいつここで結構苦労してたから。」
「苦労...?」
「うん。ソーン、小さい頃にお父さんを事故で亡くしてて、『お父さんの分まで僕が頑張らなきゃ。』って。まぁ親子揃って美形で、しかもあの性格だろ?周りの人達も色々手助けしてたけど、逆にそれを妬む人達もいて...。嫌がらせとかも絶えなかったんだ。」
「そうだったんだ...。」僕は大きく口を開けて笑うソーン君の横顔を見る。

「ソーンがあんなに無邪気に笑ってられるってことは、アルス君達はいい人たちってことだろ?」
「そう、なのかな...。そうだといいな。」
「そうに決まってるよ!......なんかしんみりしちゃったな。もう1回踊りにいく?」
「...うん、もちろん!!」

 その後僕達はソーン君の元に戻り、しばらく時間を忘れて踊っていた。






~ソーンside~

 月が出るよりも前にアル達は帰っていった。僕は久しぶりの実家を堪能するべくもうしばらくいるつもりだし、せっかくなら泊っていけばと言ったんだけど、それは悪いからって断られちゃった。色々試してみたかったんだけど、まぁ呪いのこともあるし、仕方ないか。

 
 
 正直、大人たちでだけで話すことがあるからって言われたときはちょっと不安になった。何か言われたりされたりするんじゃないかって。でも今のお母さんの表情を見てると、どうやら杞憂だったようだ。まぁ、そもそもアルの両親だからそこまで心配はしてなかったけど、僕のことをよく思わない人たちは学園でもいっぱいいるからね。ちょっと身構えちゃった。  


 そういえば、三人を見送った後クラウスから「アルス君って…なんだか、きれいだと思わない?」とまるで恋する乙女のような表情しながら言われたから、僕はとりあえず「ソウダネ。」とだけ返しておいた。多分、あの感じだと、そもそもアルが貴族なこと知らないな…。
 僕はアルの周りにいる人たちの顔を思い浮かべ、深くため息をつく。

 戦うべき相手は多いぞ、クラウスよ。




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