58 / 99
幕開け
55
しおりを挟む
「早めに来たつもりなのに、もう人がいるんだな…。」
「そう、みたいだね…。」
今日は、闘技会に出るための測定テストを受けに王都から少し離れた会場に来ている。開場をしてからそんなに経っていないはずなのに、もうすでに入り口には人があふれかえっている。周りを見渡してみると、ちらほらと見知った顔もいる。
「受付がまだ済んでいない方は、こちらにお並び下さーい!!」入り口から少し離れたところでプラカードを持った人が大きく手を振って案内をしている。僕たちはそれに従って列に並ぶ。それにしても人が多いな…。
受付で僕の名前とあらかじめ知らされていた受験番号を言ってテストの内容や今日の流れが書かれた紙と番号札をもらう。番号札は首からかける形式になっているみたいだった。…うわ~いよいよ始まるんだな…。
「あ、あとこちらの紙にサインをお願いします。」そう言われ、渡された紙に目を落とす。すっごい色んな事が書かれているけど、要約すると『大会中ケガとかしても自己責任でお願いね。』みたいなことだった。………まぁ、闘技って名前についてるくらいだから、ある程度のけがは仕方ないだろうし…そんな致命的なケガをこの歴史ある大会で負うことは、きっとないよね………。きっと……。
一抹の不安を覚えながらも、サインをする。ちょっと字が震えちゃったような気がするけど、気づかなかったことにする。
「アルは、何番だった?」
「僕はね、130番だったよ。お兄ちゃんは?」
「俺は、131番だった。一緒に受付をしたからかな。」どうやら受け取る番号は来た順で配られるらしい。それなりに早く来たはずなのに、受け取った番号から人の多さがうかがえる。
僕はテストの内容が書かれた紙を見る。どうやら測定テストは本番形式で行われるみたいだった。一つ違うとしたら戦う相手は人ではなく、ダミーの人形ということぐらいだった。ダミーと言っても実際に攻撃をしてくるから、それを処理しつつ反撃をしなければいけない。その俊敏性とかそもそもの攻撃力とか、技術点だとかを総合的に鑑みて闘技会の部門分けが行われるみたいだ。
「今は…34番か…。結構先だな…。」あと、100人くらいいるのか…。
「時間あるし、一度会場の中を見ておくか?どういう地形でそういう人形が使われているか知っておいたほうが安心だろう。」
「そうだね、行こっか!」
円形上に作られた観客席の真ん中の方から会場を見下ろす。…なるほど、結構広いな…。会場にはオブジェクトとか何も置かれていないから余計にその広さが目立つ。あとは、時折立ち込める砂ぼこりが目に入るから、すごく嫌だな…。ダミー人形の方は他の試合でも使われるものと一緒だった。等身大の人型に作られた人形に魔術をかけ、目標に魔術や攻撃をすることができるようにしたものだ。見た感じ、魔術に関しても武術に関しても基礎的な動きが多いようだ。まぁ、実力を測るためだしな…。
35番の子のテストが終わり、36番の人に会場に入るようアナウンスが入る。そこで入ってきたのが…
「え、」
「うそ…。」
「あれって…。」
「「「ロスト様!!!???」」」
まさかのロストさんだった。闘技会の優勝候補の登場に、観客席はざわつき始める。ところどころ黄色い声援が飛び交うものの、会場全体に緊張が走っているのを感じる。
「まさか、こんなに早くここでのあいつの戦闘姿を見れるとはな…。」隣で見ていたお兄ちゃんがつぶやく。
「…ロストさん、どうやって戦うのかな…?」今までの特訓でのロストさんを思い浮かべるが、これからどう動くのか全然想像ができなかった。
そうこうしているうちに、ロストさんが会場の中央に立ち、人形に向かって一礼をする。さすが、所作の一つ一つがキレイだ。
離れた所にいる審査員が赤い旗を揚げ、開始の合図を告げる。刹那、ドゴーンという轟音が会場中に響き渡り、大きく砂ぼこりが舞う。それは観客席にまで届き、思わず手で顔を覆う。
徐々に砂ぼこりが落ち着き、周りの状況が分かるようになってくる。会場を見ると体についた砂を手で払うロストと、地面に深く跡を残しつつ端っこまで吹っ飛んでいる人形がいた。
「あの脳筋…!!!」砂ぼこりから守るために僕に覆いかぶさっていたお兄ちゃんが言う。
何が起こったのかが全然わからないが、観客席にいる他の人達も同じようで、全員目の前の光景に唖然としている。
ぱらぱらと誰かが手をたたく。すると、それに呼応するよう拍手がどんどん広がり大きな歓声につながる。いまだに何が起こったのか全然分からないが、僕もとりあえず手を叩く。
「そう、みたいだね…。」
今日は、闘技会に出るための測定テストを受けに王都から少し離れた会場に来ている。開場をしてからそんなに経っていないはずなのに、もうすでに入り口には人があふれかえっている。周りを見渡してみると、ちらほらと見知った顔もいる。
「受付がまだ済んでいない方は、こちらにお並び下さーい!!」入り口から少し離れたところでプラカードを持った人が大きく手を振って案内をしている。僕たちはそれに従って列に並ぶ。それにしても人が多いな…。
受付で僕の名前とあらかじめ知らされていた受験番号を言ってテストの内容や今日の流れが書かれた紙と番号札をもらう。番号札は首からかける形式になっているみたいだった。…うわ~いよいよ始まるんだな…。
「あ、あとこちらの紙にサインをお願いします。」そう言われ、渡された紙に目を落とす。すっごい色んな事が書かれているけど、要約すると『大会中ケガとかしても自己責任でお願いね。』みたいなことだった。………まぁ、闘技って名前についてるくらいだから、ある程度のけがは仕方ないだろうし…そんな致命的なケガをこの歴史ある大会で負うことは、きっとないよね………。きっと……。
一抹の不安を覚えながらも、サインをする。ちょっと字が震えちゃったような気がするけど、気づかなかったことにする。
「アルは、何番だった?」
「僕はね、130番だったよ。お兄ちゃんは?」
「俺は、131番だった。一緒に受付をしたからかな。」どうやら受け取る番号は来た順で配られるらしい。それなりに早く来たはずなのに、受け取った番号から人の多さがうかがえる。
僕はテストの内容が書かれた紙を見る。どうやら測定テストは本番形式で行われるみたいだった。一つ違うとしたら戦う相手は人ではなく、ダミーの人形ということぐらいだった。ダミーと言っても実際に攻撃をしてくるから、それを処理しつつ反撃をしなければいけない。その俊敏性とかそもそもの攻撃力とか、技術点だとかを総合的に鑑みて闘技会の部門分けが行われるみたいだ。
「今は…34番か…。結構先だな…。」あと、100人くらいいるのか…。
「時間あるし、一度会場の中を見ておくか?どういう地形でそういう人形が使われているか知っておいたほうが安心だろう。」
「そうだね、行こっか!」
円形上に作られた観客席の真ん中の方から会場を見下ろす。…なるほど、結構広いな…。会場にはオブジェクトとか何も置かれていないから余計にその広さが目立つ。あとは、時折立ち込める砂ぼこりが目に入るから、すごく嫌だな…。ダミー人形の方は他の試合でも使われるものと一緒だった。等身大の人型に作られた人形に魔術をかけ、目標に魔術や攻撃をすることができるようにしたものだ。見た感じ、魔術に関しても武術に関しても基礎的な動きが多いようだ。まぁ、実力を測るためだしな…。
35番の子のテストが終わり、36番の人に会場に入るようアナウンスが入る。そこで入ってきたのが…
「え、」
「うそ…。」
「あれって…。」
「「「ロスト様!!!???」」」
まさかのロストさんだった。闘技会の優勝候補の登場に、観客席はざわつき始める。ところどころ黄色い声援が飛び交うものの、会場全体に緊張が走っているのを感じる。
「まさか、こんなに早くここでのあいつの戦闘姿を見れるとはな…。」隣で見ていたお兄ちゃんがつぶやく。
「…ロストさん、どうやって戦うのかな…?」今までの特訓でのロストさんを思い浮かべるが、これからどう動くのか全然想像ができなかった。
そうこうしているうちに、ロストさんが会場の中央に立ち、人形に向かって一礼をする。さすが、所作の一つ一つがキレイだ。
離れた所にいる審査員が赤い旗を揚げ、開始の合図を告げる。刹那、ドゴーンという轟音が会場中に響き渡り、大きく砂ぼこりが舞う。それは観客席にまで届き、思わず手で顔を覆う。
徐々に砂ぼこりが落ち着き、周りの状況が分かるようになってくる。会場を見ると体についた砂を手で払うロストと、地面に深く跡を残しつつ端っこまで吹っ飛んでいる人形がいた。
「あの脳筋…!!!」砂ぼこりから守るために僕に覆いかぶさっていたお兄ちゃんが言う。
何が起こったのかが全然わからないが、観客席にいる他の人達も同じようで、全員目の前の光景に唖然としている。
ぱらぱらと誰かが手をたたく。すると、それに呼応するよう拍手がどんどん広がり大きな歓声につながる。いまだに何が起こったのか全然分からないが、僕もとりあえず手を叩く。
0
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
僕が幸せを見つけるまで
Moon🌙.*·̩͙
BL
僕には5歳までの記憶が無い
僕は何で産まれてきたんだろう
誰も幸せになんてならないのに、
これは愛を知らずに生きてきた少年の話
これからこの少年は誰と出会い何を思うのか
この少年に幸せが訪れますように
(BのLのお話なので嫌いな方はUターンしてください)
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる