君の瞳は月夜に輝く

文字の大きさ
上 下
52 / 104
幕開け

49

しおりを挟む
「え、いま、僕声に出て…?」
「いや、口は動いていなかった。…ということは、だ…。も、もう一回何か考えてみてくれ。」
「あ、はい…。」僕は心の中で『さっきのは冗談で~す…』と考えた。頼む、伝わってくれ…。

「…だめだ。何も聞こえない…。………ふむ…さっきのは偶々なのか…?とはいえ、これで俺の考えが大方正しいことが分かったな…。ただ、聞こえてきたというのは耳元でというより、頭の中に直接響くといった感じだな。俺の考えた理論で行くと何かしらのきっかけで心を開いたのだろうが、思っていたよりもすんなり行った気がするな…。この魔術式で聞こえてきたということは式はこのままで良いとして…。」
 すごいスピードで何かを言い出したかと思ったら、机を漁りだしたシャーマール先生。研究に関するメモであろう紙に色々書きこんでは何かを考えぶつぶつと呟き、また何かを書き込み始める。次第にそのメモに埋もれ始める。僕はそれを見ることしかできない。手持無沙汰だな…。

「ん!すまない、少し分析と考察に時間が必要だ。悪いが、今日のところは…。」
「大丈夫です!!研究、頑張ってください!!」

 助かった…。





「あれ、アル?もう終わったの?今日は早かったね…。」
「あ、ソーン君!!うん、なんかね研究が上手くいった、かも…?みたいな…?一瞬心を読まれたかも?…みたいな…。だから、ちょっと整理する時間くれって、早く終わっちゃった…。」
「もうそんな段階まできてるのか…。」
「ね!もしかしたら心が読めるようになるのはそう遠くないのかもしれないね!」
「うん、そうだね。あ、そういえば聞きたかったことがあるんだけど、いい?」
「もちろん!なにかな?」
「この間、僕に『気を付けて』って言ってくれたでしょ?それってどういうことかな~?と思って。」

 …ど、どうしよう…。「実はデジャブでね…。」というべきか…。いや変に怖がらせてしまうだけだ。やめよう。
「ほ、ほらソーン君って可愛いじゃん?だから夏祭りとか誘拐されないか心配で…。」

 ………言ってしまったー!!いろいろ考えていたせいで言い訳が変な感じになってしまったし、結局『誘拐』というワードを言ってしまった…。

「ふーん。誘拐、ね…。」おそるおそるソーン君の顔を見てみると、少し険しい顔をしていた。これ、余計に怖がらせちゃったかもな…。何か別の話でもして誘拐から話題を遠ざけなきゃ…。

「ソーン君ってさ、闘技会でないの?魔術の成績あんなに良くて光属性使えるってなったら優勝も夢じゃないのに。」
「うーん。光属性でも僕はどっちかっていうと回復系だからね…。戦闘向きではないんだよ。出たとしても自分に回復をかけ続けて徐々に相手の体力奪うみたいな持久戦になるし…。」
「そうなんだ。お兄ちゃんがよく戦闘で光属性使ってるからてっきりソーン君も攻撃系なのかと思った。」
「シューベルト家の光は攻撃力高いからね…。光属性にもいろいろ種類があるんだよ。」
「へ~。そうだったんだ…。」
「そういえばアルの周りって攻撃系の人たち多いよね。」
「そうかな…?いや、いわれてみれば、そうかも…。」
「アランさんやシンは言わずもがなだけど、リーンは最初絶対防御系だと思ったもん。そしたら授業でバンバン攻撃してくるじゃん?だからすっごいびっくりしたな~。」
「あ~一応貴族だから何かあってもいいように教えられてるのかも…。僕も魔術を使えないなりに教えてもらったことあるから…。」
「そういうこと、なのかな?」
「たぶんね。」

 よかった…どうやら話を逸らすことに成功したようだ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

王道学園と、平凡と見せかけた非凡

壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。 そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。 風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。 基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?! ◆pixivでも投稿してます。 ◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

処理中です...