君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「え、いま、僕声に出て…?」
「いや、口は動いていなかった。…ということは、だ…。も、もう一回何か考えてみてくれ。」
「あ、はい…。」僕は心の中で『さっきのは冗談で~す…』と考えた。頼む、伝わってくれ…。

「…だめだ。何も聞こえない…。………ふむ…さっきのは偶々なのか…?とはいえ、これで俺の考えが大方正しいことが分かったな…。ただ、聞こえてきたというのは耳元でというより、頭の中に直接響くといった感じだな。俺の考えた理論で行くと何かしらのきっかけで心を開いたのだろうが、思っていたよりもすんなり行った気がするな…。この魔術式で聞こえてきたということは式はこのままで良いとして…。」
 すごいスピードで何かを言い出したかと思ったら、机を漁りだしたシャーマール先生。研究に関するメモであろう紙に色々書きこんでは何かを考えぶつぶつと呟き、また何かを書き込み始める。次第にそのメモに埋もれ始める。僕はそれを見ることしかできない。手持無沙汰だな…。

「ん!すまない、少し分析と考察に時間が必要だ。悪いが、今日のところは…。」
「大丈夫です!!研究、頑張ってください!!」

 助かった…。





「あれ、アル?もう終わったの?今日は早かったね…。」
「あ、ソーン君!!うん、なんかね研究が上手くいった、かも…?みたいな…?一瞬心を読まれたかも?…みたいな…。だから、ちょっと整理する時間くれって、早く終わっちゃった…。」
「もうそんな段階まできてるのか…。」
「ね!もしかしたら心が読めるようになるのはそう遠くないのかもしれないね!」
「うん、そうだね。あ、そういえば聞きたかったことがあるんだけど、いい?」
「もちろん!なにかな?」
「この間、僕に『気を付けて』って言ってくれたでしょ?それってどういうことかな~?と思って。」

 …ど、どうしよう…。「実はデジャブでね…。」というべきか…。いや変に怖がらせてしまうだけだ。やめよう。
「ほ、ほらソーン君って可愛いじゃん?だから夏祭りとか誘拐されないか心配で…。」

 ………言ってしまったー!!いろいろ考えていたせいで言い訳が変な感じになってしまったし、結局『誘拐』というワードを言ってしまった…。

「ふーん。誘拐、ね…。」おそるおそるソーン君の顔を見てみると、少し険しい顔をしていた。これ、余計に怖がらせちゃったかもな…。何か別の話でもして誘拐から話題を遠ざけなきゃ…。

「ソーン君ってさ、闘技会でないの?魔術の成績あんなに良くて光属性使えるってなったら優勝も夢じゃないのに。」
「うーん。光属性でも僕はどっちかっていうと回復系だからね…。戦闘向きではないんだよ。出たとしても自分に回復をかけ続けて徐々に相手の体力奪うみたいな持久戦になるし…。」
「そうなんだ。お兄ちゃんがよく戦闘で光属性使ってるからてっきりソーン君も攻撃系なのかと思った。」
「シューベルト家の光は攻撃力高いからね…。光属性にもいろいろ種類があるんだよ。」
「へ~。そうだったんだ…。」
「そういえばアルの周りって攻撃系の人たち多いよね。」
「そうかな…?いや、いわれてみれば、そうかも…。」
「アランさんやシンは言わずもがなだけど、リーンは最初絶対防御系だと思ったもん。そしたら授業でバンバン攻撃してくるじゃん?だからすっごいびっくりしたな~。」
「あ~一応貴族だから何かあってもいいように教えられてるのかも…。僕も魔術を使えないなりに教えてもらったことあるから…。」
「そういうこと、なのかな?」
「たぶんね。」

 よかった…どうやら話を逸らすことに成功したようだ!
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