君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 今日この後はもう授業もなく、テストが近いということで図書館で自習をしている。のは、いいけれど、どうしてもこの間のソーン君のことが思い浮かんでしまってなかなか集中ができないでいる。

「あれ、アルス様?」
「ん!?お、あ!て、テオ君!?」まずい、考え事をしてて変な声出ちゃった…。
「お勉強ですか?」
「う、うん。まぁね。テオ君も?」
「ええ、テストが近いですから…。あ、ご一緒しても?」
「もちろん!ここにおいで!」
 よかった、テオ君が来てくれた。これで、少しは集中できるといいんだけれど…。




「それでね、ここの文章はここに接続詞があるから…。」あんなに行き詰っていた古語学の課題がどんどん進んでいく…。さすが満点なだけあるな…。
「なるほど!だからこういう訳になるのか…。すごい、終わっちゃった…。テオ君教えるのすごく上手なんだね!」
「いえいえ、アルス様の呑み込みが早いだけですよ。」
「あ、そういえばこの間急にいなくなっちゃったでしょ?あれ、どうしたの?」
「あ~、ただその…アルス様と一緒にいるところを見られるとまた何か言われちゃうんじゃないかって、思って、逃げちゃいました…。お気を悪くしたならすみません…。」
「そんなことないよ!大丈夫!少なくともこの間のメルロス殿下はそういうのあまり気にしない方だし、そんな奴いたら僕が懲らしめるから!だから気にしないで。そうだ、思い出した。メルロス殿下に会う前に何か言おうとしなかった?」
「あぁ!いえその…えっと…。噂で聞いたんですけど、アルス様に呪いがかけられているっていうのは…?」
「ああ!ほんとだよ!まぁ、月の光に当たったら死んじゃうっていうものなんだけどね。」
「ほんとなんですか!?ていうか、あの月の光って…!」
「不思議だよね。大おばあ様の象徴でもある月の呪いって。何かの因果を感じない?」
「そうですね…。何か関係あるのかもしれないですね。もしかしたらその光が魔力を発していたり…いや、理論上それは…。」テオ君が何かをずっと言っているけど内容が難しすぎてちょっとよく分かんないな…。もしかしたらソーン君なら分かるかもしれないな…。頭いいし。

「あ、そうだ。あのね、テオ君に会わせたい人がいてね。僕の友達で、今授業を受けているからいないんだけど…。」
「アルス様のお友達ですか!?もちろん会いたいです!」
「それはよかった!」さっそく次の休み時間にでも紹介しようかな…?早く授業終わらないかな?





「おや、アルスさんですか?お久しぶりです!」
「あ、シェフラーさん!お久しぶりです!」
「お勉強ですか?」
「はい!シェフラーさんは?」
「僕は少し調べ物をと。ここで会えるとは、うれしいです。」
「そんな、僕もですよ。あ、この間は友人たちが失礼しました。」
「いえいえ、昔のこととはいえ、仕方のないことです。いや、友好のために来たとはいえ、中々難しいものですね。おや、そちらは?」
「あ、テオ=リーレンと申します…。」
「テオ、いい名前ですね。僕はシェフラー=リュックザイテと申します。以後お見知りおきを。」さわやかな笑顔を浮かべているシェフラーさん。…まぶしいな…。

「時にアルスさん、試験が終われば夏休みじゃないですか?夏休みって何かご予定がありますか?」
「夏休みですか?えと、夏祭りとか闘技会とかですかね…?」
「わぁ!いいですね。僕もここに来る前に色々調べたんですよ。特に今年の夏祭りは第一王子の成人と相まって盛大に行われるとか。僕も行こうと思ってまして。」
「そうなんですね!どうせなら一緒に行きませんか?」
「ぜひ!…と、言いたいところなのですが、ご友人たちが何というか…。」
「あ…すみません…。」
「いえいえ!気にしないでください!それに、僕は知り合いと行くつもりなので!あ、僕もう行きますね?」



「今のは…?」
「シェフラーさんのことかな?すごい人なんだよ!シェフラー=リュックザイテさんって言ってね、コシュート国からお勉強をしに来てるんだ。」
「え!?コシュート国!?それって、大丈夫なんですか?何されるか分かったもんじゃ…。」

 …この感じ、テオ君もコシュート国に対してあまりよく思ってないのかな…。
「大丈夫だよ!シェフラーさんいい人だし。」
「でも、コシュートの人間ですよ!?あんなことをしてきた奴らだ...なにを考えているのやら...。は!!もしかしてさっき夏休みの予定を聞いたのも…!!…と、とにかく!あの人には注意をしていたほうがいいと思います…。」
「う、うん…気を付けるね…。」
 テオ君のあまりの気迫に思わずうなずいてしまう…。シェフラーさんいい人なんだけどな…。
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