君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 そしてついにその日が来てしまった。そう、特訓の日である。僕は指定された時間に間に合うようにと体育館へ急いだ。

 体育館には一番最初の武術の授業と同じように離れたところに的が置かれていた。


「来たのか。まぁ、少し早いが始めるとするか。ほらこれ。」
そう言い、殿下が何かを投げてきた。それを慌てて受け取る。

「弓矢…?」
「そう、ほら授業でしたみたいにあの的に向けて弓をひいてみろ。」
あの的に当ててみろってことか…?
なんだか殿下の顔がいつになく真剣だ。それにいつもなら始めは筋トレでしごかれるはずなのに…。


…まぁ、でもこれは殿下に成長した姿を見せることができるチャンスだ。僕だってだてに筋トレを毎日していたわけではないし、弓道の練習だってしている。…その成果を見せてやろうじゃないか…。

 そう、意気込んで的の前に立つ。
 あれやこれやと今まで注意されたことを思い出し、一連の流れをイメージしてから目を閉じて深く息を吸う。

 ふぅと息を吐くと同時に目を開ける。的をじっと見据え弓を構える。


 たん、と音を立てて弓は的に突き刺さる。


 うん。少しずれたけど、ほぼ真ん中だ。だいぶ、安定してきたんじゃないかな?それに言われたこともできたし。そこそこ良い出来なんじゃないかな?
 そう思い、殿下の方を見ると、ノートに何かを書き込んでいるようだった。書いてはうーんと唸り、消してまた書いてを何回か繰り返した後、今まで書いた所を見返して、満足いったのか、満面の笑みを浮かべノートを閉じた。

 「よし。」と一言残し、どこかに消えたかと思ったら、黒板をガラガラと引き摺って持ってきた。黒板の上のほうには『闘技会とは?』と題名が書かれていた。

 と、とうぎかい…!?闘技会って夏にありますよっていうやつだよね?しかも『とは?』って何!?『とは!?』ってことは何かレクチャーされようとしてる…?

「今から、お前に『闘技会とは何か?』について説明をする。ご存じの通り闘技会は歴史が長く伝統のある大会だ。これは、俺の見立てだが、これからみっちりとトレーニングを重ねればお前でも闘技会に出ることができると踏んでいる。」
 そういってさっきのノートを見せてくる。そこには僕のスケジュールとおそらくトレーニングの内容であろうものがみっちりと書かれていた。なるほど…さっきはこれを書いていたのか…じゃなくて!なんでメルロス殿下は僕のスケジュールをこんなに事細かに知っているんだ!?それにこの調子だと、やっぱり闘技会に出ることになっちゃうのかな…?

「ちょ、ちょっと待ってください!僕闘技会に出るなんて一言も…!」
「心配するな。素質は十分にあるし、トレーニングは俺が見てやる。なにより魔術を使えないやつが勝つところを俺が見てみたい。」
「え?」
「大丈夫だ。魔術が使えないやつでも今までに二人ほど優勝したやつがいるし、俺にかかれば3人目になることは不可能ではないぞ?」
 ふた、2人!?今2人って言った…?さっき歴史が長い大会だって言ってたよね?その中で2人しかいないの?殿下のこの自信はどこから出てくるんだ?それに殿下によるみっちりトレーニングは何としてでも避けたい…。
「なぁ、お前ならいけるとさっきから言っているのになんで顔色がどんどん悪くなっているんだ?…まぁ、いい。今からもっと詳しい説明するから、それを聞いて決めろ。」

 あ、一応僕の考えは尊重してくれる感じだ…。




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