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幕開け
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しおりを挟む「ねぇ、アル。そういえばさ、あの子は?ほら、ピンク髪のふわふわした感じの子。」袖をくいくいと引っ張って聞いてくるソーン君。それ、あざといな…。
「ピンク…あぁ、テオ君のことかな?それが、授業終わった後どこかに行っちゃったんだよね…。」
「ん?テオ君って誰のことだ?」シンがいぶかしげに聞いてくる。そっか、シンとリーンは会ったことないのか。
「テオ=リーレン君だよ。さっき知り合ったんだ。ほんわかしてて小動物みたいな子なんだけど、
とっても頭がいい子なんだ。たしか、歴史学と古語学が満点だったんだけど、知らない?」
「俺は知らないな。その授業取ってないし。リーンは?」
「テオ=リーレン君ねぇ…。名前は聞いたことあるかな。親が商人だとかなんとか…。う~んよく分からないわ…。」そうか、顔が広いリーンでさえもあまり知らないのか…。
「僕も今までそんな子会ったことないな…。どこ出身の子なの?」
「僕もよく分からないんだけど、この国じゃないって言ってたかな。」
「言葉は?なまってなかったの?」
「うん。とっても流暢だったよ。だから始めはこの国の出身だと思ってた。」
「クラス一緒だったんだよね?今まで話したこととか見たことなかったの?」
「もともと人数が多い授業だったし、気づかなかったのかも。」
ソーン君が立て続けに質問をしてくる。すごい興味もってるな…。もしかして友達になりたんじゃ…!
ソーン君の止めどない質問に答えていたらいつの間にか学園の寮についていた。中に入ろうとした瞬間、ぐいっと襟をつかまれた。
「やっと来た。いつまで待たせるつもりだ。」
…なんとなく、そろそろ来るんだろうな、とは思ってたんだよ…。
「メルロス殿下、あの、苦しいです…。は、はなしてくださぃ…。」
「まったく。あちこち探したのにいないから、ここで待っていたというのに来るのが遅いぞ!」…え、なんで僕怒られてるの…?
「それより、メルロス殿下何か御用ですか?」
「あぁ、そうだ。お前明後日暇だろ?特訓してやるから、体育館に来い。試験が近くなるとなかなか時間が取れなくなるだろうから、配慮してやったんだぜ。絶対に来いよ。来なかったら今日みたいにあちこち探すし、待ち伏せるからな。いいな。」
去り際も見えなくなるまで「絶対に来いよー!」と叫びながらメルロス殿下は学園のほうに行ってしまった。いつにも増して念押しされたな…。またゲストとか来るのかな…。
寮の自室に戻り少し筋トレをする。筋トレはメルロス殿下に言われて毎日やっているが、筋肉はいっこうについてくれない。けれど心なしか姿勢はよくなったし、武術の授業でよろけたりすることが減った気がする。そのおかげか、前回の試験では二番目にいい成績の優をもらえた。もしかして、目に見えないだけで筋肉は少しずつついているのかもしれない。
とはいえ、依然、ほかの生徒との距離は物理的にも心理的にも遠く感じる。むしろ少し遠のいた気すらしてくる。メルロス殿下が横にずっといてアドバイスをすることが多いからか、見えないバリアみたいなのができているし、話しかけに行こうとしも同じ距離だけ離れて行ってしまう。最近は、あんなに話しかけていた先生すらも近づいてこなくなって、完全なるマンツーマンになってしまっている…。せめて、挨拶ができるようになりたいけど、何かいい方法はないものか…。
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