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幕開け
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お兄ちゃんと本を読んだり、部屋に来たお父さんとお母さんとごはんやお菓子を食べたり、話をしていたりしたらいつの間にか夜がせまっていた。
寝る準備も終え、いつものようにお兄ちゃんとベッドの中にいる。
「お兄ちゃん、ずっとリカードさんの本読んでたね。そんなに面白かった?」
「ああ。面白かったし、考え方とかためになった。アルこそ、先生が持ってきた本ずっと読んでいたじゃないか。魔術の本は読まないんじゃなかったか?」
「そうだったんだけど、せっかく先生が貸してくれたんだから読んでみようかなって。」
今日一日本をたくさん読んで、魔術について少しわかった気がする。魔術属性の相性の良し悪しから『元素の融合』の仕組みまで隣にお兄ちゃんもいたから詳しいことまで知ることができた。
「そうだったのか。」
「魔術の理論とかって知れば知るほど面白いんだね。僕ももう少し魔力があれば、今日知ったこととか実際に使ったりできるのに…。僕にも覚醒起きたりしないかな?」
「覚醒は誰にでも起こりうる。それにアルが覚醒を起こしたら俺よりももっと精度の高い光属性の魔術使えちゃうかもな。」
ふ、とほほ笑んで僕の頭をなでる。
これすごく気持ちいからすぐ眠っちゃうんだよな…。
…そういえば、前にも誰かに頭をなでられた気がするけど、あれは誰だったっけ…?
—————————————————・・・
…久しぶりにここに来たな。
ただひたすらに白が広がる空間。相変わらず何もないが、今日はあの部屋に続く扉が目の前にぽつんと置かれていた。この扉の先で何が起こったか思い出せないけれど、なんだかすごく嫌なものだったような気がする。
扉に刻まれた傷をなぞり、あの子を探そうと後ろを振り向く。
「わっ!!び、びっくりした…。」
扉に気を取られて気が付かなかったけれど、いつの間にか周りをいろんな人で囲まれていた。
「あれ、お兄ちゃん…?」
よくよく見てみると、僕を囲んでいたのは、兄をはじめとした全員よく知った人たちだった。でも、固く冷たい表情のせいだろうか、みんなどこか違う人のように感じる。
「…皆さん、ここで何をされていたんですか…?」
「お前こそここで何をしている?」そう言ったのはリリーシュ殿下だった。なんで第一王子がこんなところに...?
「...え、っと、僕は…その…えっと…。」無表情に加え声は低く、王家特有の圧を直に受け思わずたじたじになってしまう。
どうしよう…。とてつもなく怖い…。
「お、お兄ちゃん…!!」兄に助けを求めようと思い、振り向くが今まで見たことのないような顔で睨まれ言葉に詰まってしまう。兄の隣にいたソーン君でさえも侮蔑の表情を浮かべていた。
「ソ、ソーン君…?」
そうだ!ソーン君がいるならシンやリーンもいるはず!
二人はどこにいるんだろう。必死にあたりを見渡してもどこにも見当たらない。
「シン!リーン!助けて!!どこに行っちゃったの!」
......。
……ちがう、そもそも二人は”ここ”にはいないんだ…。
だって、”ここ”は僕の世界と違うから。
そう自覚した瞬間、頭に激痛が走る。
傲慢、焦燥、渇望、羨望、憎悪、恨み、寂しさ…いろんな感情が流れ込み息が詰まる。
うまく呼吸ができず、脈がどんどん乱れていく。
意識が次第に朦朧としてくる。
ここから逃げなきゃ。ここから…。逃げなきゃ…。でも、どうやって…
「アル!!」
誰かに呼ばれてる。誰だろう、と考える間もなく意識を現実に引き戻される。
寝る準備も終え、いつものようにお兄ちゃんとベッドの中にいる。
「お兄ちゃん、ずっとリカードさんの本読んでたね。そんなに面白かった?」
「ああ。面白かったし、考え方とかためになった。アルこそ、先生が持ってきた本ずっと読んでいたじゃないか。魔術の本は読まないんじゃなかったか?」
「そうだったんだけど、せっかく先生が貸してくれたんだから読んでみようかなって。」
今日一日本をたくさん読んで、魔術について少しわかった気がする。魔術属性の相性の良し悪しから『元素の融合』の仕組みまで隣にお兄ちゃんもいたから詳しいことまで知ることができた。
「そうだったのか。」
「魔術の理論とかって知れば知るほど面白いんだね。僕ももう少し魔力があれば、今日知ったこととか実際に使ったりできるのに…。僕にも覚醒起きたりしないかな?」
「覚醒は誰にでも起こりうる。それにアルが覚醒を起こしたら俺よりももっと精度の高い光属性の魔術使えちゃうかもな。」
ふ、とほほ笑んで僕の頭をなでる。
これすごく気持ちいからすぐ眠っちゃうんだよな…。
…そういえば、前にも誰かに頭をなでられた気がするけど、あれは誰だったっけ…?
—————————————————・・・
…久しぶりにここに来たな。
ただひたすらに白が広がる空間。相変わらず何もないが、今日はあの部屋に続く扉が目の前にぽつんと置かれていた。この扉の先で何が起こったか思い出せないけれど、なんだかすごく嫌なものだったような気がする。
扉に刻まれた傷をなぞり、あの子を探そうと後ろを振り向く。
「わっ!!び、びっくりした…。」
扉に気を取られて気が付かなかったけれど、いつの間にか周りをいろんな人で囲まれていた。
「あれ、お兄ちゃん…?」
よくよく見てみると、僕を囲んでいたのは、兄をはじめとした全員よく知った人たちだった。でも、固く冷たい表情のせいだろうか、みんなどこか違う人のように感じる。
「…皆さん、ここで何をされていたんですか…?」
「お前こそここで何をしている?」そう言ったのはリリーシュ殿下だった。なんで第一王子がこんなところに...?
「...え、っと、僕は…その…えっと…。」無表情に加え声は低く、王家特有の圧を直に受け思わずたじたじになってしまう。
どうしよう…。とてつもなく怖い…。
「お、お兄ちゃん…!!」兄に助けを求めようと思い、振り向くが今まで見たことのないような顔で睨まれ言葉に詰まってしまう。兄の隣にいたソーン君でさえも侮蔑の表情を浮かべていた。
「ソ、ソーン君…?」
そうだ!ソーン君がいるならシンやリーンもいるはず!
二人はどこにいるんだろう。必死にあたりを見渡してもどこにも見当たらない。
「シン!リーン!助けて!!どこに行っちゃったの!」
......。
……ちがう、そもそも二人は”ここ”にはいないんだ…。
だって、”ここ”は僕の世界と違うから。
そう自覚した瞬間、頭に激痛が走る。
傲慢、焦燥、渇望、羨望、憎悪、恨み、寂しさ…いろんな感情が流れ込み息が詰まる。
うまく呼吸ができず、脈がどんどん乱れていく。
意識が次第に朦朧としてくる。
ここから逃げなきゃ。ここから…。逃げなきゃ…。でも、どうやって…
「アル!!」
誰かに呼ばれてる。誰だろう、と考える間もなく意識を現実に引き戻される。
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