君の瞳は月夜に輝く

文字の大きさ
上 下
36 / 104
幕開け

33

しおりを挟む
 授業が終わる10分前、それぞれの授業を受けているであろう3人に図書館で大人しくしているといいながらこっそりガゼボに行っていた事実を隠すため、僕は急いで図書館へと向かっていた。
 数十分いるつもりが持ってきた本が思いのほか面白く、つい読みふけってしまいこんなことになってしまったのだ。3人に黙ってガゼボに行っていたのがばれてしまったらどれだけ怒られるか想像しただけで鳥肌が立つ。


 近道をするために中庭を横切ろうとしたとき、お兄ちゃんの声が聞こえてきて僕は慌てて低木の茂みに隠れた。そっと様子をうかがうとお兄ちゃんはだれかとベンチに座って話しているようだった。え、あれって…。



 お兄ちゃんの隣に座っていたのはなんと、第2王子のカルロ殿下だった。学年は確かお兄ちゃんのほうが一個上なんだけど、それは殿下が一年留学に行ってたからで、年齢自体は同じなんだっけ…?昔から何かと面識はあったっぽいけど、それにしても珍しい組み合わせだよな…。

「あいつ、リリーシュがアルの顔を見たがっている。」
 僕!?リリーシュって第1王子じゃないか!!りリーシュ殿下と会ったことなんてあったっけ…?
「それは、無理ですね。」
「でも、どこかのタイミングで行ってやって方がいいかもしれん。じゃないとあいつ強行突破するぞ。」
「考えて、おきます…。」

 そう言ってしばらく沈黙が流れた。そぉーっと2人の様子を見てみるとどちらも苦虫を噛み潰したような顔をしていた。あ、カルロ殿下とリリーシュ殿下って仲があまりよくないんだっけ…?あんまり話したくないのかな?

「そういえば、ソフィア王女から何か連絡はありましたか。」
 ソフィア王女というのはカルロ殿下の双子のお姉さんで、とっても優しくて美人なんだ。昔はよく遊んでもらっていたんだけど、今は留学に行っていてなかなか会えていない。

「手紙で連絡を取っている。あっちの生活が楽しいみたいだ。」そう言ってカルロ殿下は胸ポケットから手紙を取り出した。それは前にここで見たものと同じものだった。そうか、あの手紙見覚えがあると思ったら、ソフィア王女からのものだったんだ…。

「まぁここでの生活よりは楽しいでしょうね…。」
「お前がそれを言うか。」
「すみません…。」
「まぁ、よい。ところで、そこに隠れてるやつ、盗み聞きとはいい度胸だな。今なら許してやるから顔を見せろ。」
 ば、ばれてる…。どうしようもしかして聞いちゃいけない内容だったのかな…。殿下、許してやるからとか言ってるけど、この声色絶対許す気ないよね…!でも、もうばれてるんならここでうじうじしてるより出ていったほうがいい気が…。

「あの、その…本当にごめんなさい。盗み聞きなんてするつもりじゃなくて、たまたま通りがかっただけで…。」
「アル!?どうしてここに?」
「なんだ、アルス君か。久しぶり。元気にしてたかな?驚かせちゃってごめんね。怒ってないから安心して。」
「殿下、お久しぶりです…。あの、本当にすみません。聞く気なんてなかったんです。」
「あはは、大丈夫だよ。聞かれて困るような話はしてないし、僕とアルス君の仲じゃないか!まぁ、アランのほうは話があるっぽいけど。」

 あぁ、怒られるかも...。






「アル、図書館にいるんじゃなかったのか?」
「ちょっと用事思い出しちゃって…。」
「用事?」
「うん、庭園のほうに…。」
「今回は無事だったからよかったものの、満月が近いんだ。気を付けろ。ただでさえ前は症状がひどかったんだ。今回も何が起こるかわからない。授業が終わるまで一緒にいる。」
「ありがとう…。」あれ、意外とすぐ終わった…。



 図書館までの道のり、僕は気になることをお兄ちゃんに聞いてみた。
「あ、お兄ちゃんって去年闘技会に出るつもりだったの?」
「あぁ、周りが出ろってうるさいから仕方なくな…。」
「今年はどうするの?」
「出るつもりはない。」
「そっかぁ…。」闘技会でのお兄ちゃんの姿ちょっと見てみたかったかも…。
「…出てほしかったか?」
「ううん!全然!でも、去年優勝候補だったんでしょ?」
「まぁ、ロストには負けるだろうけど、カルロ殿下にはどうだろう。戦ったことも、戦っているとこも見たことないから何とも言えないな…。」
「でも優勝候補になるくらいだから強いんでしょ?いいなぁ!優勝したら何かもらえたりするの?」
「賞金がもらえたりするけど、優勝しなくても強かったら騎士団から声がかかったりするな。まぁ表面上はただのイベントだけど、実際は将来魔術とか武術を使った職業に就きたい人にとってはアピールする場所になるな。」
「なるほど。」

 まぁ聞いたところで、なんだけど...。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

王道学園と、平凡と見せかけた非凡

壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。 そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。 風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。 基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?! ◆pixivでも投稿してます。 ◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

処理中です...