君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 課題の手を止め、それぞれ好物の焼き菓子を手に取る。
「アルのお母さんの手作りお菓子って美味しいんだよな~。」
「ほんとにおいしい!しかも僕の大好きなマドレーヌもある!」
「まだたくさんあるって言ってたわよね。持って帰ってお姉ちゃんたちにもあげようかしら。」
「お母さんマドレーヌも作れたんだ。」
「え、アルのお母さんマドレーヌ初めて作ったの?」
「うん。たぶん、ソーンくんが好きだから作ったんじゃないかな。」
「え、僕マドレーヌ好きなこと言ったことあったっけ?」
「なかったわよ。アルのお母さん人の好物を当てるのが得意なの。特にお菓子では外したことないんじゃなかったかしら。」
「ほんとに!?」
「本当だよ。俺の時も当ててたし。ほら、チョコクッキー。」
「あんたのは簡単すぎんのよ。」
「でも、ただのクッキーじゃないんだぜ。チョコの味がするクッキーなんだぜ。」
「大差ないわよ。」




「そういえばさ、次の試験が終わればもう夏休みじゃん。どっか遊びに行かね?」
「あのねぇ、『遊びに行かね?』って、アルが行けるわけないでしょ。」
「だから夏休みに行くんじゃん。夏休みならアルのお母さんとお父さんも休暇がもらえるだろ?その時に一緒に行けばいいじゃねえか。」
「確かにそれ一理ある!だったらさ、夏祭りとか行かない?僕の家の近くであるものなんだけどさ、屋台とかいろんなイベントとかあってすっごく楽しいんだよ!」
「夏祭りか~僕行ってみたいな!それに一緒に行くんだったらお母さんたちも許してくれそうだしちょっと聞いてみるよ!うわぁ、みんなでお出かけとか久しぶりだな。」
「アルのお父さんお母さんはまだいいとして、アランさんは行けないんじゃないのかしら。」
「どうして?」
 お兄ちゃんだって夏休みのはずなのに…。
「だってアランさん闘技会出るんじゃないの?その練習とか合宿とかで忙しいんじゃないかしら。」
「あぁ、確かに去年もすごく忙しそうだったもんな~。」
「去年も、ってお兄ちゃん去年闘技会に出てたの?」
「なんでアルがそれ知らないんだよ。去年出るつもりだったけど、お前が風邪で熱だして出れなかったんだよ。」
「あぁ、もしかしてあの時のことかな…。確かに去年お兄ちゃん運動頑張ってたかも。お兄ちゃんそんなに強いの?」
「強いに決まってんじゃん。そもそも魔術がカンストしてるレベルなんだぜ?それに剣術だったら負け知らずって言われてるし。剣術だけで言ったらロストさんの次くらいに強いんじゃないかな。」
「そっか。あ、そうだ。この前メルロス殿下がロストさんが強いって言ってたんだけど、どれくらい強いの?」
「まず騎士団長の息子ということもあって、小さいころから騎士団に混ざって武術を学んでいて、それ以外も騎士団長のスパルタ教育を受けていたりしているから、まぁエリートよね。並行して戦闘向きの魔術の精度も上げてきてたらしいから今では騎士団の中で右に出る者はいないといわれてるわ。」
「そんなにすごいんだ…。」
「あまりにも強いからロストさんは特別ルールで闘技会で魔術と武術の併用は禁止されてるんだって。」それがメルロス殿下の言ってたハンデなのか…?
「ロストさんもアランさんも出場するんだったら今年の優勝予想は大変なことになりそうだな。」
「そうね…。去年はもはや一人しかいないみたいなところあったけど、今年は大混戦しそうね。」

 闘技会か…。ちょっと楽しみだな…。
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