君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 『……一つの運命が出会った瞬間だった。一人は助けようと、もう一人は助かろうと、それぞれの思惑、意思を持って手を伸ばす。その二つの手が一つに重なった瞬間……』





 本当に似てた…。物語の性質上なのか、それとも忠実過ぎるのも気が引けたのか、性別が逆だったりと所々本当の大おばあ様と違うところはあったけれど、それ以外はほとんど一緒だった。それにこの作者かなり詳しいことも知ってる。容姿とか大まかな性格ならまだしも、主人公が夜絶対にカーテンを閉めない描写があったのにはとても驚いた。確かに大おばあ様は暗いところが苦手で、昼でも夜でもカーテンはずっと開けっ放しだったらしい。これは大おばあ様の唯一の弱点だから誰にも知られないようにしていたはずなのに...。まぁ、ほんの少ししか書かれてなかったし、他の人が読んでもなんとも思わないような文章だったけど、これだけは言える。この本の作者、大おばあ様の家族か親密な関係にあった人だ…。


 本の内容は、最強と呼ばれる騎士が敵国にさらわれたお姫様を救うっていう話だった。救い方も、共鳴の反応を使ってお姫様の居場所を探し出して、これまた共鳴で増大した魔力を使って相手を倒していた。ありきたりっぽいけど、描写が細かく臨場感もあって、きっとそこが沢山の人に読まれるようになった理由なんだろうなって思った。特に2人が出会って共鳴が大きく反応した時の描写なんて、目の前で起こってるみたいに鮮明なイメージがわいた。



 1つ気になる点があるとすればお姫様に当たる人物がいないことだ。リュークさんが言っていた通り、主人公だけじゃなくほかの登場人物も多少の差異はあれど、実在してた人物を基をしているのに、お姫様の容姿とか性格とか癖とかの基になったであろう人物がどこを探しても見当たらないのだ。最初は大おじい様かなって思いながら読んでいたけれど、人物像が大きくかけ離れている。主要な人物だから基になった人は必ずいるはずなんだけどな…。もしかして僕が知らないような遠い親戚でもいるのかな?今度家に帰った時もう一度確認してみよう。


 それにしてもリュークさんはなんでこの本を読んだのかな?作者に興味があるって言ってたけど、他の本出してないから調べようがないし、随分大昔に出版されたものだから調べても何も分からないと思うんだけどな…。でも確かに気になる...。それに今考えてみれば、物語にしては描写が細すぎる気がする。もしかしてここに書かれてあることって本当にあった出来事なのかな...。それでその出来事をそのまま詳しく書いたとか...?それだったら細すぎる描写にも説明つくけど…じゃあ、なおさらこのお姫様は誰だ?

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