君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「やっと試験終わった~。」

 ようやくすべての試験が終わり、勉強からしばらくの間解放された僕たちはいつものように談話室にいる。外は雨が降る日が続いていて、せっかく試験が終わってもどこか憂鬱な気分になってしまう。談話室にいるほかの人たちも心なしか表情が暗い。



「魔術論、思ったよりも難しくなかったね。リーンが貸してくれた試験問題も役に立ったし。」
「まじかよ、アル。俺、すげ~ぎりぎりだったよ。特に最後の問題。魔力量の限界とか訳分かんなかったわ。」
「確かに難しかったね。まぁ、僕もリーンのおかげで完璧だったけど。」
「ソーンあの問題できたの!?まじかよ。」


 そう、結局あの時に見た問題が今回も出ていて、問題文読んだときびっくりして思わず声が出そうになっちゃった。ほかの問題もどこか見たことあるようなものばっかりだったから、魔術論の試験に関しては何とかなりそうだな…。

「それにしても、ソーンの実技すごかったな~。すんごい動き回ってんのに、あんな精度の高い魔術出すって!」
「しかも、ソーン君の属性魔術って温かみあるのよねぇ~。不思議。」
「へぇ~僕も見たかったな。」みんなと違って僕は武術専攻だから、見れなかったんだよな…。
「本当にすごかったのよ!あれは間違いなく最高得点ね…。」
「そこまで言ってくれるとなんだか照れちゃうな…。でも、僕はリュークさんのも見てみたかったな~。」
”リューク“ 名前を聞いただけなのに胸のあたりがどうしてだかぞわぞわする。
「確かにな!!瞬間移動とか、なんかかっこよかったもんな~。」
「え、シンはリュークさんの魔術見たことあるの?」
「あ~…えぇっと…。」急にどもるシン。
「授業でね!一回見せてもらったのよ!」
「そうなんだ。でも、リュークさん授業受けているイメージないよね?」少なくとも僕は授業を受けているリュークさんを見たことがない。
「いや、結構いるよ。ほとんど魔術関係の授業だけど。ほら、アルはさあんまりそういう授業とってないじゃん?」
「でも、僕魔術論の授業とってるよ?」
「あ~リュークさん魔術論とってないんじゃないかな?」
「確かに…。魔術論では見たこと…あ、でもアルが休んでいるときに一回授業来たかな?まぁ、でも補佐みたいな感じだったけれど。」
「僕ももうちょっと魔術系の授業取っておけばよかったな。リュークさん、武術の授業にも来てくれないかな?魔術使える人の体の動かし方とか参考にしてみたいな~。」

「そんなの俺で十分だろ。」



 あれ、この声は…まさか…。




「メルロス殿下!?」
「どうして殿下が談話室に!?」
「何をなさるおつもりなのかしら?」
 第3王子メルロス殿下の突然の訪問に談話室中が騒ぎ出す。



「メ、メルロス殿下!どうなさいましたか?」
「試験は終わったし、試験の採点で今日は授業がない。談話室でみんなとわいわいしてるところを見ると、アルス君、今暇だね?」ニヤニヤしながら問いかけるメルロス殿下。なかなか鋭い...。
「え、ま、まぁ暇と言われれば暇ですね。」
「じゃあ、今から行こうか!」
「え?」
「今日はお前のためにゲストを呼んでおいた!待たせたら悪いだろ!早くいくぞ!」
 そう言ってメルロス殿下は僕の手首を掴んでそのまま走り始めてしまった。これ、前にもあったな…。
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