君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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「なんか、元気そうでよかったわ。」

 いよいよ明日から学園に復帰するという今日、シンとリーンそしてソーンくんが我が家にやってきた。ソーンくんの手にはおなじみのクランベリー入りのスコーンが入った籠があった。

「僕アルが倒れて本当にびっくりしちゃった。今はもう大丈夫なの?」と心配をしてくれるソーンくん。下からのぞき込んで眉根を寄せている顔がいつにもまして可愛い。
「そうね、ソーン君初めてだったからとても驚いたかもね。一緒の班だった子たちも顔を青ざめさせていたしね。」
 そうだったんだ。なんだかあの子たちに悪いな…。
「アルが倒れた後のシンとリーンの対応すごかったよ。てきぱきしてたし、指示も的確だったしね。」
「まぁ、経験値かな。俺たちは、ほら、ずっと何年もアルの面倒を見てきたから、こういう時はこう、みたいな感じでマニュアルがもう出来上がってんだよな。」
「そうね、まぁ私たちはあくまでも補佐的なことしかできないから、あとは全部アランさんに任せてるわ。でも、今回は私もちょっとびっくりしたな。さっきまでソーン君と話していると思ったら、急に膝から崩れてるんだもん。」
「それもびっくりしたけどさ、俺アルが倒れたのをリ…。」

その瞬間、リーンとソーンくんの顔が一瞬険しくなり、シンも一瞬目を泳がせたような気がした。

「…スト様が…!」
「リスト様?」そんな人、僕たちの知り合いでいたかな。
「ロスト様、ロスト様だよ!やだな~シン、人の名前を嚙んじゃうなんて…。」さっきとは打って変わってニコニコしているソーンくん。
「あぁ、ご、ごめんごめん。ロスト様だよ。噛んじった。」えへへ…と頭を掻きながら言うシン。

 ロストさんなのか。あの声ロストさんなのか…。みんなが言うんならそうなんだろうな…。


「そういえば、アルは明日から復帰なんだっけ?」
「そうだよ。」
「今回は意外と早かったのね。私てっきり一か月は休むんじゃないかなって思ってた。」
「本当はそうだったんだけど、シャーマール先生が昨日家に来て、話をつけてくれたんだ。」
「あの先生やるわね。」
「なんか、お兄ちゃんを味方につけるといいみたいなこと言ってたよ。」
「先生、アランさんに何言ったんだろうな。」
「さぁ。」

「あ、先生で思い出したけど、はいこれ。」そう言ってソーンくんが手渡してきたのは一冊のノートだった。
「なにこれ。」ノートを開くときれいな字でびっしりと文字が書いてあった。
「アルが休んでた時の授業の内容。そろそろ試験も近いし、勉強の役に立てばなと思って。一応、アルと僕でかぶってる授業のは全部写したよ。科目ごとに区切ってあるから見てみて。」
「うわ、すごい。」これ、教科書よりわかりやすいかもしれない...。所々にソーンくんらしい絵も入っていて見ていてなんだか飽きない。
「本当に助かる!ありがとうソーンくん。」
「いいなぁ、俺もそれほしい~」
「シンは一緒に授業受けてたでしょ、まさか授業しっかり聞いてませんでした~なんてことないよね?」
「えぇ、ソーンまでリーンみたいなこと言うようになったの?勘弁してよ~」
 あはは~と笑いながらふと、ソーンくんがまだスコーンの入った籠を持っていることに気付く。

「ねぇソーンくん、そのスコーン食べてもいい?前に食べたときすごくおいしかったからもう一回食べたいなと思ってたんだよ!」
「いいよ!でも大丈夫?僕、アルの部屋にこんなにスコーンあるって知らなかったからさ…。」
「大丈夫だよ!僕スコーンならいくらでも食べれちゃうから!」そう言って僕はソーンくんからスコーンを受け取る。やっぱりこのスコーン美味しすぎる。


「そういえば、この間ソーンの家に遊びに行こうっていう話してたんだっけ?」
「まぁ、当分は無理そうね…。」
「確かに。」
 僕は笑うしかなかった。
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