君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 学園に手紙を出した翌日、僕の状態観察と今後の予定について相談するために、家に医務室のエドガー先生とシャーマール先生がやってきた。よりによってこの2人なのか…。
 

「調子はどうだ、弟君。医務室で見た時よりも顔色はよさそうだな。」
「本当だ。熱もなさそうだし、呼吸も落ち着いてる。」
「シャーマール先生に、エドガー先生。迷惑をおかけしてすみませんでした。今はもう体調も大丈夫です!」
「そうか、それはよかった。それと、学園復帰の件なのだが…。」
 そこで僕は背筋をただした。昨日の両親の話では、一か月休むことになっている。でも僕は一か月も休みたくない!今まで知らなかったたくさんのことが学べれて、勉強が楽しくなってきたところだし、何より新入生歓迎会で仲良くなった子たちと一か月も会わなかったら、次に会うとき距離感が分からなくて気まずくなってしまう!久しぶりに会った人に挨拶して微妙な反応を返される経験はもうしたくない!




「ご両親と相談して次の休み明けからいけるようにした。」と自慢げな顔をしてシャーマール先生は言った。
「本当ですか!?」次の休み明けというと、三日後か…。
「あぁ、なかなか骨が折れたがなんとか説得に成功したぞ。とはいっても条件付きなんだけどな…。」
「ありがとうございます!!」あの二人を説得するなんてシャーマール先生はなかなかのやり手だ…。でも、条件って何なんだろう。
「君はなかなか珍しい反応をするんだね。普通の子なら休みが縮んで残念がるところだけど、君は喜んでいるように見える。」と相変わらずエドガー先生は鋭い指摘をしてくる。
「まぁな。弟君は事情が事情だからな。」
「ちなみに条件について聞いてもいいですか?」
「なんてことはない。少しきつめの健康観察を毎日するだけだ。」
「少しきつめの…。」どういうことだろう。
「うん。あのね、朝起きた時と夜寝る前、あと学園にいる間は数時間おきに体温と体調を調べて、それを毎日必ず君のご両親に報告しなきゃいけないんだ。」
「は、はぁ。」
「あとは、少しでも異変を感じれば必ず僕のいる医務室に来ることと、週末は必ずこの家に帰ることかな。他にもいっぱいあったけど、後でご両親がリストにして持ってくるんじゃないかな。」リスト…。
「まぁ、弟君は毎日の体温と体調を俺かこいつにでも報告をしてくれれば後は普通の生活が送れる。安心しろ。」
「本当にありがとうございます!!」条件はともかくどうやら一か月の療養からは免れたみたいだ!







「いやぁ~先生方にはご迷惑をおかけしました。」
「本当です!なんとお礼を言っていいのやら…。」
「ベルトルト様、リアーヌ様、僕たちは当たり前のことをしたまでです。それにいつもお世話になっているので、これくらいなんてことはありませんよ。」

 条件をまとめたリストを持ってきた両親が僕の部屋に戻って、エドガー先生とシャーマール先生とお話をしている。僕のお父さん、ベルトルト=シューベルトは独自で魔術について研究をしているため、シャーマール先生と非常に仲がいい。仲がいいのはいいことなんだけど…お父さん基本的に人との距離が近い人だから、無意識なスキンシップが人より少し激しめなんだよね…。もちろん仲がいいシャーマール先生にもそうなんだけど…。その…何が言いたいかっていうと…、さっきからエドガー先生が怖い。エドガー先生、笑顔なんだけど、ずっと目が笑っていない。お父さんがシャーマール先生の肩や頭を触るたびに笑顔が引きつっている気がする。今なんか、シャーマール先生の手に触れただけで、エドガー先生の顔から一瞬表情が消えたもん。これは、シャーマール先生きっと後でひどい目に遭うな…。









「アル、温かい飲み物を作ったのだけれども飲むかしら?」と言ってホットミルクを持ってきてくれたのは僕のお母さん、リアーヌ=シューベルト。僕が言うのもなんだけど、とてもきれいで優しい自慢のお母さん。お父さんと結婚する前は、求婚をしてくる男性が昼夜問わず後を絶たなかったらしい。隣国の王子からも求婚されたことがあるらしいけれど、本当か噓かわからない。でもお母さんの顔を見たら納得してしまう。
「ありがとうございます、お母さま。」
「ゆっくり飲むのよ。」



 そういえば、僕の家族は基本的に家の中では敬語を使わないという風潮がある。公の場とか、人前では敬語を使うけれど、家族の中では敬語を使わない。これは、大おばあ様の時から続いているもので、僕はちょっと気に入っていたりする。だって、なんだかそっちのほうがとても仲がいい感じがするもん。だから、シンとかリーンとかソーンくんとか友達には身分とか気にせずに敬語なしで話してる。みんな最初は少し戸惑っていたけれど、今は普通に話してくれる。それがちょっと嬉しかったりする。
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